博多阪急1階化粧品売り場の2021年12月〜22年2月は、前年同期比15%増で着地した。1月中旬以降は新型コロナウイルスの感染状況悪化で客数が減少したものの、12月のクリスマス商戦が同約20%増と健闘。業績を押し上げた。出張や旅行など広域からの来客の減少でJR博多駅直結のターミナル型百貨店としての強みが薄まる中、足元商圏の若年層の取り込みなどに注力。SNS発信によるタッチポイントも強化している。
12月単月では「シロ」が同店の化粧品売り場における過去最高の売り上げを記録した。“サボン オードパルファン”(税込4055円)をはじめとした比較的値ごろなフレグランスなどがギフトニーズをとらえた。「商品によっては前年の1.5倍程度の売り上げを記録したものもある」(南光祈=博多阪急 服飾品営業部 ビューティー・リラクシングマネージャー)。
1月中旬以降は新型コロナ感染拡大の影響で館全体の集客が大きく低下するも、「ディオール」「シャネル」といったラグジュアリーブランドの好調は継続した。「他の売り場が集客に苦戦する中でも(入場を待機する)列が途切れなかった」。一方、国産のスキンケアブランドは低調だった。「お客さまがしっかり下調べをして来店する『目的買い』、しっかり美容部員のカウンセリングを受けて購入したいという『納得買い』の傾向はますます強まっている」。付加価値のある商品提案・発信ができているかどうかで、優勝劣敗のコントラストがはっきりしている。
同月下旬には化粧品の催事「コスメフェスティバル」をリアルで開催。集客数は前年実績、計画ともに未達だったものの、「ファンからは開催を熱望する声もあり、館の存在感を発揮する上では大きな意味のあるイベントだった」と振り返る。今後は外出ムードの緩やかな復活を見込み、メイクアップにおいてはピンクやオレンジ・イエローなどのビタミンカラーの提案に注目。「お客さまの気分に刺さる発信ができればしっかりとリアクションしていただけるはずだ」。
駅直結のターミナル型百貨店である同店において、新型コロナ禍以降は東京、大阪をはじめとした出張、旅行などによる広域からの集客が困難となった。そこで博多で買い物を楽しむ20〜30代の若い男女に照準を絞り、囲い込みを進めている。
同店の化粧品売り場は21年春に公式インスタグラムアカウントを作成し、インスタライブによる動画コンテンツの配信をスタート。ブランドを横断して新製品を紹介する番組を売り場から定期的に発信している。1動画あたりの平均視聴者数は300〜400と「まだ認知に課題はあるものの、視聴者は徐々に増えている」という。そのうち、25〜35歳の視聴者が3〜4割を占めており、これは同店のリアルの化粧品売り場の顧客分布とも重なる。デジタルコンテンツからリアルの売り場への送客に一定の手応えを得ている。
従来の顧客とのつながりを維持することも当面の課題だ。「コロナ前まで飛行機や電車でいらっしゃっていたが足がしばらく遠のいてしまっているお客さまに向けて、オン・オフ問わず買い物を楽しんでいただけるような環境を構築していく」。その一環として、阪急阪神百貨店のオンライン通販システム「リモオーダー」による購買比率を高めるための発信などを強化する。