毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年5月9日号からの抜粋です)
本橋:ポーラの“ぶらぶら研究員”取材はインパクトがありましたね。“ぶらぶら”という名の下、研究室では得られない知見を吸収するのが仕事。化粧品開発とは無関係に思える世界を知ることで、「知らない」ことが浮き彫りになるから、知らない分野への尊敬が湧き上がって謙虚になれるという。そういう気付きを蓄えることが将来の製品や企業戦略に生きてくるんじゃないかということで、目からウロコでした。
村上:ポーラは究極の形だよね。“ぶらぶら研究員”の存在自体が驚きだけれど、会社の利益に直結しないにもかかわらず、それを認めて推進する企業風土もすごいと思った。そういう風土があると、面白いことも生まれやすいんじゃないかな。
本橋:僕は普段アパレル・ビューティ企業を取材していて、これからの時代は選ばれる商品や製品を開発するためのR&D(研究・開発)がより重要になると感じ、特集を企画しました。あえてすぐには身にならないけれど、新たな視点を得られそうなことをやってみることも、ブレイクスルーのきっかけになるんじゃないかと思いました。
村上:そうだね。もちろん研究施設を持つことは大事だけれど、異なる視点を持つ人と話すことが重要なんだよね。今回取材した「宇宙化粧品」開発者も、障がいのあるお子さんのために飲み込んでも大丈夫なオーラルケア商品を作ったら、海や山で活動する人たちから「僕らも使いたい」と気づかされて、商品が磨かれていったって。そんなふうに、いろんな人たちと話すと商機が見つかるし、「分からないことが、分かる」ようになると新しい視点や考え方を得ようと能動的になれる。それがリサーチの本質なんだと思った。
本橋:目の前のことに精一杯になってしまう状況だからこそ、新しい視点を取り入れられる機会を作るべきですね。
村上:一つのブランドや企業に属していると、なかなか“視点をズラす”とか、“仮面を付け替える”って難しいよね。でも、部門横断で違う視点の人が集まって意見交換したり、顧客の声から気付きを得たりもリサーチ。そこからデベロップできれば、ファッション業界もR&D先進業界だよね(笑)。