「セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)」は1月、新アーティスティック・ディレクターにエヴァンジェリー・スミルニォタキ(Evengelie Smyrniotaki)を任命した。スミルニォタキはギリシャ・アテネ出身。ファッション・スタイリストやインフルエンサーとして活動し、現在も自身が立ち上げたファッションブログ「スタイル ヒロイン(Style Heroine)」のアートディレクターを務めている。「セルジオ ロッシ」ではクリエイティブとスタイリング、広告キャンペーン、コンテンツなどのディレクションを手掛ける。
同氏は、就任後初のカプセルコレクションとなる“エヴァンジェリー・スミルニォタキ × セルジオ ロッシ”を、2月のミラノ・ファッション・ウイーク会期中にプレゼンテーションで発表した。コレクションはブランドの根幹である“女性的なアティチュード”に重点を置き、丸みを帯びたチャンキーヒールや華奢なミュール、鋭いスティレットヒールのデザインで、輪郭のラインが際立つシェイプが特徴的。PVCやサテンクレープなど光沢のある素材を使い、鮮やかなカラーで彩ったシューズは、女性性を謳歌するハイパーフェミニンだ。今年で創業71年となる「セルジオ ロッシ」は、スミルニォタキと共にブランドの次なるステップアップを見据える。初めてシューズブランドを手掛けるスミルニォタキに、ファーストコレクションや今後の展望について聞いた。
デジタルでの表現を強化
「何も変えない」もの作り
——「セルジオ ロッシ」から現職に任命され、最初にどう思った?
エヴァンジェリー・スミルニォタキ(以下、スミルニォタキ):大きな喜びと共に、私と「セルジオ ロッシ」にとっての新たな挑戦に興奮したわ。コンテンツ制作を通じてブランドのチームとは以前から交流があったし、個人的にも憧れていたから、本当に光栄だったの。ファーストコレクションを発表できて夢心地よ。
——あなたが手掛ける新生「セルジオ ロッシ」をどのように定義する?
スミルニォタキ:ハイパーフェミニンね。女性的でセンシュアルなシューズというブランドのDNAを継ぎながら、より現代的でフェミニニティーな側面を強く押し出していきたいの。1951年に創業した「セルジオ ロッシ」には、豊富なノウハウとヘリテージが基盤にあるから、品質とクラフトマンシップは世界最高峰だと自信を持って言える。だから、それらを生かして脚の延長となる快適なシューズを届けていきたいわ。
——ファーストコレクションの制作にあたって、意識したことやこだわりのポイントは?
スミルニォタキ:まずはミニマル、シンプリシティ、洗練さという3つのキーワードを掲げたの。ラインストーンを散りばめた装飾的なピースでさえ、派手さではなくミニマリズムな美を表現したかった。装飾を削ぎ落とすことで、曲線的なラインやシャープで華奢なヒールのシェイプを強調し、シューズそのものと脚を美しく見せることにこだわったわ。そして、快適な履き心地にも強くこだわっているの。例えば、ウェッジヒールのシューズは「セルジオ ロッシ」のアーカイブの中で最もヒールが高いモデルの一つだけれど、足をしっかりと支えるデザインとアンクルストラップ、それにシューズの軽さによって、長時間履いていても疲れにくいシューズを作ることができたのよ。この快適さは、熟練した職人がハンドメイドで仕上げているからこそ。実際に履いてみて、ブランドのクラフトマンシップをより多くの人に届けたいわ。
——広告キャンペーンやコンテンツのディレクションについての方向性は?
スミルニォタキ:現代的な表現にこだわっていきたい。コンテンツ・クリエーターとしての私の経験を生かして、デジタルでの表現や顧客とのコミュニケーションを強化するつもりよ。インクルシビティを念頭に置いて、より幅広い女性層にブランドの魅力を知ってもらえるようにディレクションしていきたいわ。
——あなたが加わったことで、ブランド全体の方向性は今後どのように変わる?
スミルニォタキ:正直なところ、何も変えたいとは思わないの。71年という長い歴史を持つ「セルジオ ロッシ」のヘリテージを継承し、この世界観を継続させることが私の役割よ。デザインにおいても豊富なアーカイブがあるから、それらを踏襲しながらハイパーフェミニンなシェイプを追求し、現代的でタイムレスなピースを制作していきたいの。抜根的な変革をせずとも、「セルジオ ロッシ」は時代を超越する美しさを持ち合わせたブランドだから。