「無印良品」を運営する良品計画は、2022年8月期の業績低迷を受け、来期に向けたテコ入れ策を発表した。サプライチェーンの無駄を精査することで過去3年間にわたって定期的に値下げを行い、それによる客数増を成長ドライバーとしてきたが、衣服・雑貨カテゴリーの不振、円安、調達コスト高騰といった要因から、「価格見直しによる売り上げ増大は止まり、収益性が悪化している」。堂前宣夫社長は8日に行われた21年9月〜22年5月期決算会見で、抜本的な事業構造改革について話した。
具体的には、①不振の衣服カテゴリーでの定番品を中心とした商品力の強化、②生産の内製化によるコスト削減、③商品軸でのマーケティング、④店舗の売り上げ構造の確立、⑤物流費やシステム費の効率化などの5つが改革の軸だ。
①については、21年秋冬に導入した男女兼用デザインの衣服が22年春夏も足を引っ張っていることをあげ、改めてニッチ層ではなく「多くの普通の人」に響く定番品を追求し、毎年のアップデートで磨き上げていくと発表。②では生産工場との業務提携や直接取引などの「大胆な打ち手」により、価格に対して競争力ある品質の商品を作り出す。③は、これまでブランドとしてのイメージ広告しか行ってこなかった「無印良品」にとっては大きな変化。「(プロモーション商品を)店内で販促するだけでは甘い」として、デジタルを中心に商品軸での「広告宣伝に売上対比2%程度の経費をかける」。
④は出店を強めている地方のスーパー隣接店舗で月坪効率の向上を目指すと共に、コロナ禍以降不振が続く都心でのチャネル戦略を見直す。既に始めている、ローソンでの販売もその一環。⑤では、他の小売企業との配送の乗り合いや、物流専業企業との協業によるコスト削減をめざす。
値上げ圧力が高まっているが、「今の経済状況では価格は上げられない。今値上げをしたら、既存店売り上げはぼろぼろになる」と堂前社長。秋以降も従来から販売している商品については価格は据え置き、商品力強化の中で新たに企画するアイテムについても、「(近しい既存商品に比べて)価格が上がるものも下がるものもある。お客さまにとって適切な価格を維持するという考えは変わらない」と述べるにとどめた。
同社の21年9月〜22年5月期連結業績は、売上高に相当する営業収益が前年同期比7.5%増の3707億円、営業利益が同29.4%減の248億円、純利益が同31.3%減の199億円だった。「第2創業」を掲げ、国内外で積極出店していることで増収とはなったが、値引き販売の増加や円安、物流コスト増、上海のロックダウンなどが響いて大幅な減益となった。低迷を受け、6月30日に22年8月期予想を下方修正している。修正は今期2度目。