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ロレアルグローバルCEOが語る、コロナ禍で過去最高の業績が可能だったワケ キーワードは“小さな船”

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 世界最大のビューティ企業である仏ロレアル(L’OREAL)が好調だ。コロナ禍の2021年度は、売上高が前年比15.3%増の322億8760万ユーロ(約4兆2296億円)と過去最高の業績を記録。22年度上半期もそれを上回るペースで成長を続けている。同社は110年の歴史があり、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」や「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」などの積極的な買収により現在は35のグローバルブランドを擁し、従業員数は全世界で8万5000人を超える。近年は、eコマースやビューティテック分野でも業界をけん引する存在だ。昨年5月に就任したニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)=ロレアル最高経営責任者(CEO)に、厳しい環境下で力強く成長できた理由を聞いた。

WWD:日本国内の化粧品大手は業績の下方修正が目立つ中、好調ぶりが際立つ。要因は?

ニコラ・イエロニムス=ロレアル最高経営責任者(CEO)(以下、イエロニムス):ビューティ業界は常に成長している。2020年のパンデミックを除き、市場は常に右肩上がりだ。とはいえ、当社はその2倍以上のスピードで成長している。さまざまな要因があるが、一番の理由は「ビューティしかやっていない。でも、ビューティは全部やっている」から。マスブランドからラグジュアリーまで、プロフェッショナルも含め、非常に幅広いブランドを持っているのが大きい。消費者の生活に寄り添い、あらゆるニーズを満足させられる。加えてヨーロッパでもアメリカでも、アジアでもビジネスを手掛けている。現在、いくつかの市場は(政情不安で)先行きが不透明だが、世界中に市場があれば補完できる。もう1つは、年間10億ユーロ(約1430億円)以上のR&I(Research & Innovation、研究開発)への投資だ。ビューティはイノベーションに支えられている。われわれは常に新しくてエキサイティング、より高品質なものを届けようとしている。それは消費者に訴求し続けるべきで、20年に多くの店舗が閉鎖した時も発信を諦めず、新製品を出し続けたことも大きいだろう。

WWD:大きな組織が機敏に動くのは非常に難しいが、ロレアルはM&Aから市場撤退まで、一時が万事とにかくアクションが早い。それを可能にしているものとは?

イエロニムス:われわれは新しい時代に合わせて変化し続けている。世界は常に変化しており、自らを変革する非常にアジャイルな考え方が必要だ。チームには新しいアイデアを受け入れる能力が求められる。グループのDNAとして常に変化する、常に適応するという気持ちがチームに備わっている。ロレアルがデジタル戦略を本格的に導入したのは、2010年だった。決して早いスタートではなかったし、当時は本当に「デジタルって、何?」というくらい、意味さえ分かっていなかった。ただ、とにかくやってみた。そして市場とのギャップを埋め、コロナの時は知見が大いに役立った。

小さなボートの集まりがアジャイルな経営を可能にする

WWD:「常に変化する」という企業DNA以外で、組織の機敏性のために実践していることは?

イエロニムス:ロレアルは、戦略的に中央集権。一方、オペレーションはローカライズしている。つまり、戦略は中央で立てるが、実践は国ごとに異なるべきで、自律性を各国に求めている。枠組みは渡すがその中なら自由に経営できる。巨大な戦艦が1隻あるのではなく、小さなボートが何艇もあるイメージ。大きな戦艦の方向転換は大変だが、小さな船なら簡単。だからアジャイルに動けるのだろう。

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