ファッション

期待のさらに上を行く「ボッテガ・ヴェネタ」とポエティックな「ジル サンダー」に感動!! 完全復活の2023年春夏ミラノコレ現地リポートVol.4

 ボン・ジョールノ!あっという間にミラノコレも終わり、パリにやって来た藪野です。ただ、ミラノのリポートはまだ続きます。4日目は、ほぼ1日中ずーっと雨。服や靴も困るし、気分もちょっと落ちますね。9月は屋外のショー会場を選んでいるブランドも多いので、雨は大敵です。取材最終日の5日目も朝はどんよりしていましたが、徐々に晴れ間も見えて来ました。さすがに怒涛のスケジュールによる疲れは出ていますが、素晴らしいショーを見ると、疲れも吹っ飛びます。特に今季は、前回のリポートで掲載した「グッチ(GUCCI)」に加え、「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」と「ジルサンダー(JIL SANDER)」!その2ブランドを含むラスト2日間のハイライトをお届けします。

BOTTEGA VENETA

 今シーズンの会場は、建築家やインテリアデザイナーとして活躍するイタリアの巨匠ガエタノ・ペッシェ(Gaetano Pesce)が手がけたカラフルな空間。色とりどりのペンキを流したかのような樹脂製のフロアに、一つひとつ異なる400脚の椅子が並べられています。その中には、手描きで「BOTTEGA VENETA」やスマイルマークがあしらわれたものも。そんな空間について、ガエタノは「この空間は多様性へのトリビュートであり、人間という存在がその中心にある」と語ります。

 マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)にとって2回目となるショーは、デビューシーズンのアイデアをさらに発展させたヌバックレザーのシリーズからスタート。先シーズンのジーンズやストライプシャツに加え、カジュアルなチェックシャツ、チノパンツ、Tシャツ、さらにはアーガイルセーターまでもが、プリントを施したレザーで精巧に再現されています。前回もそうでしたが、そんなに遠くは離れていない客席から見ても分からないくらいのリアルさに驚きです。同じくデビューコレクションを象徴する、ウンベルト・ボッチョーニ(Umberto Boccioni)の彫刻から着想を得た躍動感のあるフォルムのテーラリングは、肘周りや裾の後ろに“ひれ”のような生地を足すことでアップデート。1シーズンでアイデアを使い捨てせずに発展させていく姿勢は、他のブランドにもみられるアプローチであり、個人的には大賛成です。

 未来派の絵画を想起させるジャカードに重ねた刺しゅうが次第にビーズフリンジへと変わるようなドレスや、細かいフリンジがついたテープ状のレザーを編み込んだコートは、モダンな創造性と卓越した職人技が融合してこそ成せる技。ラストに披露したガエタノへのオマージュだという3着の鮮やかなフリンジドレスも、圧倒的なインパクトを放ちます。

 そんな目が釘付けになるようなドラマチックなピースだけでなく、ワードローブに欠かせない定番をアレンジしたアイテムをバランスよくミックスしているのも、マチューによるコレクションの魅力。ブランドにとってのキー素材であるレザーは、テーラードジャケットやトレンチコートから、裾をロールアップしたパンツ、深いスリット入りのタイトスカート、メタルパーツがストラップの役割を果たす細身のドレスなどに落とし込んでいます。テーラリングは、なめらかなカーブを描く立ち襟やショールカラー、腰下が膨らむシルエットでも提案。透け感のある柔らかなリブタンクやヘンリーネックTシャツ、アンダースカートは、レイヤードアイテムとしてさまざまなルックに取り入れられています。

 バッグは、先シーズン提案した“カリメロ”や“サーディン”バッグのアレンジに加え、イントレチャートのトートやワンハンドルバッグ、竹かごや魚籠(びく)を想起させるアイテムなど新たなデザインが充実。2個持ちもポイントで、コットンバッグも、クラフトペーパーの紙袋も、ネット状のバッグも、実は全てレザーで作られています。シューズは、男女共にイントレチャートを取り入れたデザインのほか、ウィメンズでは細長いポインテッドトーのミュールやパンプス、メンズではロングノーズのブーツなどをラインアップします。

 半年前のデビューショーで豊かな才能の片鱗を見せたマチューでしたが、今シーズンも自分で上げたハードルのさらに上を行く素晴らしいコレクションでした!

JIL SANDER

 今季は、ミラノ郊外の自然の中に作られた白っぽい箱状の会場が舞台。中に入ると、壁は真っ黒で地面にも黒い砂が敷かれ、中央には野に咲くようにさまざまな花や植物が寄せ植えられています。あいにくの小雨が降り注ぐ中、ショーは開幕。モデルは皆、黒い傘をさして登場します。

 久しぶりのメンズ・ウィメンズ合同ショーとなった今シーズン、ルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)は、「ウィメンズとメンズを一緒に見せることは、自然な流れだった。これは、私たちが『ジルサンダー』のデザインを始めて以来行ってきたこと、そして私たちの仕事の基盤の一つだと考えていることを反映している」とコメント。「私たちが常に探求しているのは、形式的、文化的、感情的に、普通は相反するような要素のバランス。繊細さと機能性、昼と夜、イブニングドレスとワークウエアを合わせること、ウィメンズウエアとメンズウエアの原型を融合させることが重要だと考えている。そうすることで自由になれる空間を作り出す。私たちにとっては、それが本質的かつ現代的に感じる」と続けます。

 ファーストルックにも登場したリラックス感のあるテーラードスーツは、今季を象徴するスタイル。淡いニュアンスカラーの豊富なバリエーションと黒で、ジェンダーを問わず同じスタイルを提案しています。上襟部分のないラペルとフロントボタンのないデザインがポイントで、袖の付け根が切れっぱなしになったベストもあります。中には同色または同系色のクリーンなタンクトップやシャツを合わせました。ボトムスは共布のベルトを垂らしたり、裾の前や後ろにスリットを入れたりしたテーラードパンツやひざ丈のショートパンツ、キルト。足元はローテクスニーカーなどで、カジュアルに仕上げています。肌触りのいいシェニールのドレスには大胆にカットアウトを入れて粗さを演出する一方で、カーゴパンツやワークパンツにはシルクサテンやコットンビスコースを使い、エレガントに仕立てています。

 今季の出発点は、カリフォルニア。ドレスやバッグに取り入れたグラデーションは、西海岸の夕日からヒントを得たもので、唯一のプリントも街灯がきらめく夜の街並みをイメージしているそう。そして、そのインスピレーションは、ハリウッドの華やかさにもつながっています。メイヤー夫妻による「ジルサンダー」の特徴の一つはクラフトですが、今季の取り入れ方はグラマラスです。ニットのドレスやクラッチバッグはあらかじめスパンコールを縫い付けた糸を編んだもので、同様の編糸をフリンジにしたドレスやスカートは実にドラマチック。たっぷりのフェザーやクリスタル、ビーズフリンジ、ミラーパーツなどの装飾は、ミニマルなシルエットとのコントラストを強調します。結果、イブニングウエアが充実し、今季は日常から特別なシーンまでを網羅するラインアップがそろいました。

 天候は誰も操ることができませんし、ショーにとってあまり良い効果も期待できません。ただ、今回に限っては、雨を味方につけました。傘を使うという決断は、デリケートな服を守るためだったよう。でも、野生的な花や植物を背景に雨の中をモデルが傘をさして歩く姿はポエティックなだけでなく、ある意味、現実世界の中にある「ジルサンダー」という印象も受けました。そして、それが何よりもモダンで美しい服を際立たせていて、うっとりです。

FERRAGAMO

 マクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)新クリエイティブ・ディレクターのデビューを機に、ブランド名は「サルヴァトーレフェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」から「フェラガモ(FERRAGAMO)」に変わり、ロゴも新しくなりました。デビューコレクションは、もっとエッジィなものになるかと思ったら、しっかり「フェラガモ」らしいエレガンスに着地させていて好印象。テーラリングの美しさが際立っていました。詳しいリポートは後日お届けします!

DOLCE&GABBANA

 「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」は今季、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)をキュレーターに迎え、ブランドの歩みや世界観を再解釈。1990年代〜2000年代のアーカイブを再訪し、現代に向けたコレクションを制作したといいます。キーワードの一つは、「コンテンポラリー ディーヴァ」。キムにピッタリな言葉です。ランウエイには、ビスチエやボディスーツ、体のラインを強調するドレスなど、そんな彼女に似合いそうなルックが勢ぞろい。それぞれのルックには、元となったコレクションが制作された年(シーズン)のラベルがあしらわれています。例えば、機能素材やPVCで生まれ変わったトレンチコートは、1994-95年秋冬のもの。クリスタルメッシュのデザインは95年春夏、レースとチュールの官能的なロングドレスは99年春夏から着想を得ています。ラストには、光の中からキムが登場。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のクチュールショーでも思いましたが、意外と小柄です。

BALLY

 ルイージ・ビラセニョール(Rhuigi Villasenor)がクリエイティブ・ディレクターに就任し、「バリー(BALLY)」もロゴを変更。来場者の顔ぶれを見ても、まさに彼のコミュニティーで、ブランドの方向性の大きな変化を感じさせます。何よりも1番驚いたのは、フィナーレでルイージがダブルブレストスーツをかっちり着こなして登場したこと。その姿を見て、老舗ブランドのクリエイティブ・ディレクターになることは、11歳でフィリピンからアメリカに移住して育ち、ファッションの道に進んだ彼にとってのアメリカン・ドリームだったのかもしれないな〜と思いました。こちらもコレクションリポートは追って!

GIORGIO ARMANI

 本社地下にある小さな会場に設置されたランウエイには、光る竹のようなセット。その中を、きらめきと軽やかさをまとったモデルがゆっくりと、エレガントに歩いていきます。今季のジャケットはすっきりと細長いラインを描き、パンツはサルエルやくるぶし丈のテーパードデザインが中心。サロンやパレオを彷彿させるラップスカート風のスタイルや民族的な大ぶりのアクセサリーが、異国情緒を醸し出しています。曼荼羅(まんだら)のようなフラワープリントには、上にクリスタルやスパンコールをあしらったものも。終盤に、次々と登場した柔らかなシャンパンゴールドのルックが、「未来へとつながる金の糸」と題された今シーズンを象徴しています。

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