スウェーデン発「イケア(IKEA)」といえば、“ミートボール”や“シナモンロール”などのフードを思い浮かべる人も多いことだろう。なぜなら、「イケア」にはカフェテリアやスウェーデンの食材を集めたコーナーがあり、本場スウェーデンの味を手ごろな価格で味わえ、購入できるから。決してメジャーとはいえないスウェーデンのフードを身近な存在にしているのが「イケア」だ。
近所でない限り、郊外店に行く場合は滞在時間も長くなりがちだ。買い物、ランチ、そして、帰り際にソフトクリームという消費者も多いと想像できる。ところが、都心に店舗ができて、フードがより身近になり、その楽しみ方の幅も広がった。原宿店にはコンビニやカフェ、渋谷店にはカフェやレストラン、新宿店にはカフェ&テイクアウトコーナーがある。お腹が空いたら「イケア」のレストランで食事、時間がなければカフェで軽食、会社帰りにテイクアウトという選択肢があるのは大きな魅力だ。もちろん各店舗で食品も販売。私の場合、自宅の冷凍庫に必ず入っているのが、「イケア」の“スモークサーモン”と“プラント(植物由来)ボール”だ。“スモークサーモン”は品質が高く、しかも、安い。“プラントボール”は、最初は興味本意で購入したが“ミートボール”と遜色ない味わいで、気軽におつまみとしても楽しめる。
創業者の肝入りフードビジネス
「イケア」がなぜフードに力を入れているのか、その理由は創業者にあった。
「お腹が空いている客とは商売はできない」というのが故イングバル・カンプラード(Ingvar Kamprad)創業者のモットーだった。さすが、ビジネスマンという印象を持つかもしれないが、私の印象は、どちらかというと、“誰もお腹を空かして買い物したくないはず”という創業者の消費者への気配りだ。彼は、そこから、消費者のニーズをビジネスに置き換えたのだと感じる。
先日、東京・ウィズ原宿で開催されたイベントで、佐川季由イケア・ジャパン カントリー フード マネジャーは、フードの売上高の割合について、「世界では6%程度、日本は約10%と高い。特にプラントベースの商品に関してはフード全体の34%の売り上げを占めており、共感を得ている。都心の店舗では50%、仙台店は54%と世界一の売り上げ比率だ」と語った。2025年までにレストランのメニューの半分をプラントベースにする予定だという。
ミートvs プラントベース
「イケア」では、肉を使用した商品もある。「放牧牛の牛肉、平飼い鶏の鶏肉を使用するなど、アニマルウェルフェアに気を使い、無添加である点にも徹底している」と同マネジャー。価格に関しては、プラントベースのものが肉を使用したものより手ごろであるべきというポリシーだ。二酸化炭素排出量については、「“プラントボール”は“ミートボール”と比べると96%削減できる」。私自身ベジタリアンやビーガンになる気はないが、畜産業がそれほど環境に負荷を与えていると知って驚いた。佐川マネジャーは、「欧米に比べ、日本のビーガン消費は低く、まだ2.2%。プラントベースの食品を購入すれば、その消費量が高くなる」と話す。ビーガンというと、“完全菜食主義者”のこと。その背後には、健康上の理由、畜産業の環境への悪影響を減らす理由、動物愛護という倫理的な理由がある。プラントベースの食品を消費することにより、環境負荷が減らせるビーガン消費につながるということを実感した。今後も私は、“プラントボール”を選び続けようと思う。