毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年11月28日号からの抜粋です)
村上:セミナーをウェブ・週刊紙に次ぐ第3の柱に育成中の「WWDJAPAN」含め、メディアのビジネスがますます多角化しています。最近は媒体名が全面に出てこない事業さえ増えていて、ならばメディアに依頼する意味はどこにあるのか?メディアのメリットは何か?そんなことを考えながら取材を進めました。
小田島:いいなと思う事例はありました?
村上:可能性を感じたのは宝島社とイトーヨーカドーの協業ブランド「アンドスタンダード」です。例えばヨーカドーの「アウトドアウエアが作りたい」のリクエストに対して、宝島社が“ポケットいっぱい”という消費者にとってのフックを提案。傘下の「モノマックス」は機能性素材のマルチポケットブルゾンを提案して、売り場での見せ方にも踏み込んでいます。編集者が「伝える」を念頭に置いて売り場の企画を作り、それをタイアップ企画として媒体にも掲載していました。
小田島:メーカーや小売りとは違う視点があるんでしょうね。
村上:元「メンズクラブ」の戸賀敬城さんは「アスタリフト メン」のアンバサダーをしていますが、ターゲットはどう決めるのか?彼らにはどんな風に打てば響くのか?小売り戦略やメディア施策まで、編集者ならではの的確なアドバイスもしているそうです。“編集”という技術への需要は大きいと感じました。
小田島:編集者が能力を発揮する場所が変わってきていますね。紙媒体についてはどうでしたか?
村上:正直、僕も紙媒体がこの先どうなっていくのか分からないし、そこへのリスクヘッジとしてさまざまな新事業が立ち上がっているのは間違いありません。でも、紙媒体から始まったメディアには歴史があり、読者との関係性や信憑性、信頼性がある。新事業にも、それらをしっかり生かすべきという心構えは、どの媒体も共通です。
小田島:確かに社会的にも信頼性は高いですし、拡散力もありますよね。
村上:知識や経験、人脈、熱量が必要で、それがメディアの最大の強み。それをいかに生かして、ブランドとしてのメディアに還元させるという発想が編集者には必要ですね。