毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年12月12日号からの抜粋です)
本橋:恒例のリアルトレンド特集ですが、今回は“原点回帰”。展示会から打ち出しのルックを紹介しつつ、キーワードを浮かび上がらせる、以前の形に戻しました。コロナ禍を経て、どこもブランドの“らしさ”に立ち返っています。
木村:外出ムードの高まりの中で「色」の提案が重要になると考えていたので、「ロンハーマン(RON HERMAN)」のキウイグリーンやテラコッタといった鮮やかで元気な打ち出しがピッタリだと思いました。バイイングについても日本ブランドを見直すバイヤーが多く、ブランドの立ち上げも多いし、活気を感じました。今回、どうして「クラネ(CLANE)」をフォーカスしたんですか。
本橋:コロナ禍以前は年商13億円だったのが、2023年1月期は40億円に届く勢いで売れています。ディレクターの松本恵奈さんがSNSやユーチューブに出て発信するようになったのが大きいのですが、展示会に行くと、アシンメトリーなデザインのシャツや、ジップディテールを取り入れたジャケットなど、ベーシックな中にも遊び心を忍ばせていて、「これは買うだろうな」と思うアイテムがたくさんあるんです。企画をしっかり練っているから商品に説得力が生まれていると感じます。
木村:作り手の発信は大事ですよね。足元で売れているものを次のシーズン用にアップデートしたデザインを作る動きがありますが、「クラネ」は新作を作る際にどれだけ今の売れ筋のデザインを意識しているのでしょうか。気になります。
本橋:松本さんは「自分たちが着たいものを作る」ので、ほとんど意識していないと言います。売れ筋に迎合せず、熱量で売る。スタッフもみんな「クラネ」が好きで、自分らしく着こなしている。ブランドを愛しているからこそお客さんにも袖を通してほしいという思いも強い。企画チームは自信作をECで売り出す際は「1秒で完売」することにこだわっているらしいです。
木村:すごいですね。
本橋:秋冬物の消化率もすでに8割を超えセール期に売るものがないという悩み(?)も。年明け早々に、店頭は春夏物に切り替わるそうです。次回の特集では“熱狂”を生む売り方の秘けつも取材したいです。