企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は二次流通市場を支えるプラットフォーマー、メルカリの財務諸表を読み解く。(この記事は「WWDJAPAN」2023年1月16日号からの抜粋です)
今回は、フリマアプリ企業メルカリの財務諸表から、そのビジネスモデルを解説します。そもそもなぜメルカリを取り上げるかというと、中古マーケットのアパレル業界に対するインパクトが年々大きくなっているからです。中古・リユースビジネスに関する総合ニュースサイト「リサイクル通信」によると、2021年の中古マーケットの流通総額(GMV)が2兆6988億円。そのうち衣料品が4587億円で最大シェア、2位のブランド品が2947億円で続きます。中古マーケットの中でもボリュームの大きいところがファッション系なので、われわれのマーケットに影響がないわけないですよね。循環型社会やサステナビリティの一環としても注目され、群雄割拠の中古マーケットをけん引しているのが、メルカリです。
日本のリユース小売市場規模をグラフにしました。販路別統計は15年からなのですが、CtoC、つまり消費者から消費者への流通額(グレー)の伸びが大きいことが分かります。「ブックオフ」や「セカンドストリート」のように店舗を持つBtoC(水色)も、「ゾゾユーズド」のようにオンラインのみで販売するBtoC(青)も伸びてはいますが、20年からはCtoCが最大シェアです。中古マーケットの成長はCtoC売り上げの拡大が起因していることがよく分かります。
そして、メルカリの日本での売り上げを赤色の折れ線で加えました。するとメルカリの圧勝具合が分かります。CtoCの中では7割、全体の中でも3割以上をメルカリが占めています。22年6月期の日本の流通総額は8931億円。圧倒的な規模感です。
メルカリはアメリカでも展開しており、流通総額は1344億円。日米を合わせると1兆円を超える規模になっています。
鍵を握る「メルペイ」と「メルカード」
加えて、メルカリにはスマホ決済サービス「メルペイ」があります。売買が行われた際に支払われた額は一旦メルカリの預かり金になります。売った人は現金化の際に200円の手数料を払う必要がありますが、「メルペイ」で電子マネーとして使えるようにもしています。このフィンテック事業をメルカリJP、メルカリUSに次ぐ、3本目の柱に、新たな経済圏が形成されようとしていて、非常に注目です。
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