ファッション

「シュタイン」の静けさの中に見た情熱 東コレで初のショー

 浅川喜一朗デザイナーの「シュタイン(STEIN)」は17日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2023-24年秋冬コレクションをショー形式で発表した。22-23年秋冬は動画配信でコレクションを発表したが、リアルショーで披露するのは初めて。ブランドらしいミニマルで静謐(ひつ)なムードの中に、浅川デザイナーの新たなクリエイションへの情熱と進化が見えたショーだった。

初めてのリアルショー
奇はてらわず「ブランドのムードを表現したい」

 会場に選んだのは東京・青海にあるテレコムセンタービル。中央の吹き抜けを囲む円形の通路をランウエイに見立てた。無機質でしんと静まった空間は「ブランドの雰囲気にぴったりだった」と浅川デザイナー。直前のリハーサルでは、モデルが歩を進めるたび揺れ動く服のシルエットを確かめるように、じっとランウエイを見つめていた。初めてのリアルショーをするに当たり、「奇をてらったことはしたくない。みなさんにブランドらしさを感じてもらいたい」と話していた。

 その言葉通り、ショーはブランド本来のムードが前面に出た。全43体のルックでは、得意とするウールコートをバリエーション豊かに見せた。ウエストベルトで縛るローブコートに始まり、フルジップ、ステンカラー、ピークドラベルなど。黒、グレー、ネイビーはどれも吸い込まれるように暗く、深い。そこにオーバーサイズのダウンジャケットやボアベスト、スイングトップなどをレイヤードする。丈や素材が違うアウター同士を重ねた違和感が新鮮に映った。

ブランドらしい静謐さに
確かな「強さ」が付加

 ショーミュージックはピアニスト中野公揮とチェロ奏者ヴァンサン・セガール(Vincent Sega)による“Supposed to Be a Mistake”。会場のぴんと張り詰めた緊張感は、ピアノとチェロの重厚な低音が演出していた部分もあったが、そればかりではない。「シュタイン」の表現自体にも、これまでにない力強さが感じられた。

 今回発表した23-24年秋冬コレクションのテーマは“further(付加する)”。一点一点の制作において、まず「やりすぎ」なほどに過剰にデザインしてみる。それを少しずつリアルクローズに近づけながら、尖ったエッセンスは残す。例えば今回のコレクションを象徴するピークドラペルのロングコートは、一度は靴につくほど超長丈で作り、そこから2cmほど丈を詰めた。合わせたワイドパンツも、地面に引きずるほどのレングスから最終的には8cmも短くした。ボトムスで多用したジーンズは、1990年代のジーンズと60年代のジーンズをドッキングしたデザイン。それぞれパーツごとに織り方や部材を変えるなど、ディテールの再現に徹底的にこだわった。

 2016年のブランドスタート当初と変わらぬ、ミニマルな面構えの服。だがそこには浅川デザイナーの新たなクリエイションへの情熱が宿り、ブランドが着実に前に進んでいることを示した。

海外挑戦と映像
新しい刺激を進化の糧に

 卸先はすでに国内外50アカウント以上に広がり、23-24年秋冬はパリでバイヤー向け展示会を実施するなど、海外展開にも本腰を入れ始めている。近年のコレクションでは色彩豊かなグラデーションのニットなど、その意識を強く感じるピースも見られるようになった。また今回のショーでは、会場を取り囲む15台以上のカメラとドローンによる撮影を行った。浅川デザイナーは映像を通じて見る「シュタイン」の服に、新しい表現の可能性を見出している。

 初めてのショーを終えた浅川デザイナーはほっとした表情で、「半年後か、1年後かは分からないが、またショーという形で発表ができたら」と語った。映像の分野や海外で新しい挑戦が待つ。その先で、また一回り大きくなった「シュタイン」のクリエイションが見られることだろう。

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