青木明子が手掛ける「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」は16日、約5年ぶりとなるファッションショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で発表した。東京都とJFWOが共催するファッションコンペ「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞に伴い、サポートを受けての開催だ。
一人の女性としてのマリア
今季「アキコアオキ」が着想源に掲げたのは、キリストの母として知られる“マリア”。ただし宗教的な文脈ではなく、マリアという女性を抽象的に捉えている。青木デザイナーは「マリアは突然、神の母になる運命を告げられ、何百年も人々の心の支えのような存在。しかし、もとは私たちと同じ人間であったというところに魅力を感じた」という。会場中央には大きな照明から柱のようにライトを照らし、教会のように神聖な空間を演出した。
マリアの側面を多彩なスタイルで表現
コレクションは、マリアの姿をフォーマルやミリタリー、ストリート、服飾の歴史など、過去から現代のスタイルを通して表現している。ファーストルックは、グレーストライプのスーツ地で仕立てたロングドレス。同素材のベールとクロコの型押しを施したハンドバッグを合わせて、ストイックでエレガントにまとめた。足元には、厚底のメリージェーンを合わせ、Iラインの細長いシルエットを強調。シューズは、「スリー トレジャーズ(THREE TREASURES)」との協業によるシリーズ“エアリアル ガーデン(Aerial garden)”の新作で、高いソールはぽっくり下駄のような、東洋の歴史的な履き物からヒントを得ており、石のプリントをソール部分に施した。
「アキコアオキ」らしいユニホームの要素や脱構築的なテクニックも色濃く反映。ドロップショルダーのジャケットには、シャツ襟の形をしたスカーフを巻き付けた。ワークウエア風のアウターには、ハーネスでボリュームのあるスリーブ合わせ、ダイナミックなシルエットを作り出す。
現代のスタイルを象徴する、ストリートのエッセンスも加えた。ハトや宗教画のようなグラフィックプリントのシースルートップス、古着をリメイクしたトップスなども、従来のマリアのイメージに新しい視点を与える。
現代の女性と重なる強い精神性
青木デザイナーはマリアの人物像に対して、「自分の使命を全うし、力強く生きていく姿は、現代の女性の精神性にも通ずる部分がある」という。スーツ地でスタートしたショーは、徐々にカジュアルな要素が加わり、厳粛な人間像が、少し砕けた印象へと変わっていった。フィナーレではモデルがランウエイを囲み、あらゆるスタイルをまとったマリアが一堂に集った。現代の女性と重なり、ドラマチックな強さを放っていた。