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特集 パタゴニアのビジネスに見る新しい資本主義 第6回 / 全9回

パタゴニアの「地球を救う」経営哲学 米パタゴニア・インク社長が語る

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 パタゴニア(PATAGONIA)は「環境危機と闘う」ための施策を次々と打ち出している。創業50年を迎えた2022年、環境保護に投じる資金を増やすため、創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)とその一族は全株式を新設した目的信託と環境保護団体に譲渡した。全ての利益を環境保護対策に充てるための体制を整えた。「資本主義を根底から覆す」という新たな体制でパタゴニアが目指すこととは?アパレル部門を担うパタゴニア・インクのジェナ・ジョンソン(Jenna Jonson)社長に聞いた。(この記事は、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

WWD:シュイナードファミリーが株式を全譲渡した経緯について教えてほしい。

ジェナ・ジョンソン=パタゴニア・インク社長(以下、ジェナ):ファミリーはここ数年、株式の新たな所有体系について正しい答えや解決策を模索していました。パタゴニアの目的や存在意義を維持し、できるだけ多くの資金を永続的に環境危機に立ち向かう人々に提供できる体制を作るーー私たちはその解決策を探していました。答えを見つけるのは不可能ではないかと感じるときもありましたが、イヴォン(・シュイナード創業者)は「解決策はある。答えが見つかっていないだけ。妥協せずにクリエイティブな発想をし続けてくれ、考えるのを諦めないでほしい」と励まし続け、私たちは素晴らしい解決策を見つけました。

WWD:解決策が生まれたときの気分は?

ジェナ:しっくりきたという感覚があり、完璧に設計された緊張感のある構造になっていると思います。難しく挑戦的な作業でしたが、私たちが学び成長できたことで、自分が愛する特別な存在だと感じているこの会社を守り、地球を守ることに貢献できること、そして資本主義を変えることができると思うと全身で喜びを感じました。

WWD:創業者一族の株式全譲渡によって示した“新しい資本主義”での会社経営とは?企業としての目標の立て方と社員の評価とは?

ジェナ:みなさんが知っているパタゴニアとそれほど変わることはありません。これからもスタッフや気候危機に立ち向かう人々、イノベーションに投資し続けます。目的信託のパタゴニア・パーパス・トラスト(Patagonia Purpose Trust)は過去50年大切にしてきたことを守りながら方向性を定める役割を担っています。非営利組織のホルドファスト・コレクティブ(Holdfast Collective)には再投資されなかった余剰利益が注ぎ込まれ、生態系や自然を守る解決策にすぐに資金が提供されます。

 この解決策の美しさの一つは、入ってきた資金がすぐに気候危機に立ち向かう人々の手に渡り、ただちに行動に移すことができる仕組みになっている点です。

 評価制度に関しては目的「地球を救う」ことに沿っているかが指針になります。例えば、ライアン(・ゲラート〈Ryan Gellert〉=パタゴニア ワークス〈Patagonia Works〉最高経営責任者)や私が会社を率いるときに目的に沿っていなければ、責務を果たしていないことになります。

WWD:社員のモチベーションに変化はあった?

ジェナ:今まで以上に仕事への熱意やエネルギーが自然と生まれていると感じます。常に自分が何をしなければいけないかという意識を持ち、ポジティブな結果をもたらすことに意欲ややりがいを感じられるからではないでしょうか。なぜパタゴニアで働くのかという共通の目的がこの仕組みによって確実に実現されます。すばらしいパフォーマンスを出せば出すほど、そこで生まれた利益が地球を救うために使われる。パタゴニアのスタッフ一人一人が地球上で変化をもたらしているのです。

WWD:創業者のシュイナード氏は、有力紙のインタビューで現在の売り上げは約15億ドル(約1995億円)で、今後数年で20億ドル(約2660億円)に達するが、そこが彼の想像できる最大値だと明かしていた。パタゴニアはビジネスの成長を目指さないということなのか。

ジェナ:この件、伝えたいことが盛り沢山です。第一に、パタゴニアは典型的な企業ではありませんし、目標は単に売り上げを拡大することではありません。パタゴニアは営利企業で売り上げはもちろん大切ですが、全てではありません。私たちの使命と目的は「故郷である地球を救う」こと。100年、そしてその先もビジネスを継続するために体制を整え、他社や生活者といった多くの人にいい影響を与えビジネスを成り立たせること。それが今、私たちが行っていることです。

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