「トム フォード(TOM FORD)」は4月26日、創業デザイナーのトム・フォード自身が全てのクリエイションを手掛ける最後のコレクションである、2023-24年秋冬ウィメンズ・コレクションを動画形式で発表した。同ブランドがウィメンズに進出したのは2010年。その13年にわたるアーカイブの中から、トムが特に気に入っているルックを復刻した。
写真家のスティーブン・クライン(Steven Klien)が撮影した動画は、アンバー・バレッタ(Amber Valletta)、ジョーン・スモールズ(Joan Smalls)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)、カレン・エルソン(Karen Elson)らのモデルがマネキンのように立っているシーンから始まる。そこにトムが登場すると、まるで息を吹き込まれたようにモデルたちが動き出すという趣向だ。
アーカイブから復刻された作品の中には、グウィネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)が12年のアカデミー賞の授賞式でまとった白いケープドレスや、ビヨンセ(Beyonce)がツアーで着用したスパンコールがきらめくアスレチックジャージのミニドレス、ゼンデイヤ(Zendaya)が20年の放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)で着用したフューシャピンクのセパレートドレスなどが登場。スターデザイナーであるトムの華やかな交友関係がうかがえる。
今回発表されたラスト・コレクションは、セクシーで力強く、ラグジュアリーな”トム フォード ウーマン”へのオマージュとして、アイコニックなルックを限定復刻。今秋から直営店で販売する。
トムは1961年、アメリカ・テキサス州生まれ。パーソンズ美術大学(Parsons School of Design at The New School)などでインテリア建築を学んでいたが、ファッションへの関心が高まり、デザイナーのキャシー・ハードウィック(Cathy Hardwick)のアシスタントに。その後、「ペリー エリス(PERRY ELLIS)」を経て、90年に「グッチ(GUCCI)」のウィメンズのデザイナーとして採用された。当時、同ブランドのデザイン・ディレクターを務めていたリチャード・ランバートソン(Richard Lambertson)が92年に退任したことに伴い、その後任に。94年にクリエイティブ・ディレクターに昇格すると、破産に近い状態だった「グッチ」の売り上げを大幅に伸ばし、人気ブランドとして復活させた。また、グッチ・グループ(GUCCI GROUP、当時)の傘下となった「サンローラン(SAINT LAURENT)」のクリエイティブ・ディレクターを兼任し、ブランドをモダンに蘇らせた。しかし、2004年にPPRグループ(PPR GROUP、現ケリング)がグッチ・グループを買収した際、PPR側と意見が合わずグッチ・グループを離れた。
05年、メンズブランド「トム フォード」を設立。同年にエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)と提携し、ビューティを扱う「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」を立ち上げたほか、イタリアの大手眼鏡企業マルコリン(MARCOLIN)とライセンス契約を締結してアイウエアを発表。10年にウィメンズに進出し、17年にはアンダーウエアとウオッチもスタートした。
22年11月、ELCがトム フォード インターナショナル(TOM FORD INTERNATIONAL以下、TFI)から「トム フォード」とその知的財産権を買収。TFIの最高経営責任者(CEO)も務めるトムは、23年末までクリエイティブ・ビジョナリーとしてブランドに携わるという。トムは19年6月から22年5月までアメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA)の会長を務め、映画監督としても活躍しているが、今後の活動について現時点では明らかにされていない。