ステラ・マッカートニー プロフィール
1971年英国ロンドン生まれ。95年ロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズ校卒業。97年「クロエ」のクリエイティブ・ディレクター就任。ケリングとのパートナーシップにより出資比率50対50としたジョイントベンチャーでステラ マッカートニーを設立し2001年10月にデビュー。04年アディダスと長期パートナーシップ締結。18年4月からケリングの保有していた50 %の株式を取得し独立企業に。19年7月、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンとの提携を発表
ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)は今回約4年ぶりに来日した。ブランド初となるカフェ併設のコンセプトストア「ステラズワールド バイ ステラ マッカートニー」のグランドオープンに合わせたもので、阪急うめだ本店の新店舗を訪れ顧客との交流を楽しんだ。その他、東京藝術大学で学生に向けてトークイベントを開催するなどポジティブなメッセージを発信した。来日中のステラに新コンセプトストアや今注目している技術、目指す世界やファッション産業の矛盾について話を聞いた。(この特集は「WWDBEAUTY」2023年5月29日号からの抜粋です)
WWD:「長く着られる」はサステナビリティを考える上で重要だ。一方でウィメンズファッションはトレンドに左右される。長く着られる定番品の提案は、飽きられる可能性があり、怖いアクションでもある。年4回、新作を発表し続けることについてどう考えるか。
ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):ものすごく矛盾していると思いますし、私は毎日葛藤しています。健全なバランスを取ろうとしていますが、難しいですよね。常に心がけているのは、流行に左右されないこと。よりよい広いオプションを提案すること。(自身が着ている服を指さし)この服は新作ですが、極端なデザインではありませんよね。一生着ることができます。
そして、これはファッション産業に始まったことではありません。他の産業を見渡しても(どんどん新しいものを作り続けることは)同じです。建築や自動車、メイクアップやスキンケア、この携帯電話や携帯ケースも全てです。人間の本質に「もっともっと」と求めるところがあるからでしょう。生活者が需要を喚起しているのか、それとも企業が需要を喚起しているのかは、本当のところは誰にも分からないと思います。ですが、これは大きな問題です。麻薬と同じで、止める必要があります。私は、本当に気に入ったものだけ、必要なものだけを買うことを勧めています。
WWD:ファッション産業はいろんな課題を抱えているが、改めてあなたにとってファッションとは?ファッションデザイナーの役割とは?
ステラ:夢を創ること。ストーリーを語ること。美と工芸を生かし、ファッションで夢を描き、浮遊感を味わうことができると人々に感じてもらうこと。その夢の中にあるファッションと欲望の間には、結婚のような感覚があります。それは素晴らしいギフトのようでもあり、アートのようにクリエイティブで、インスピレーションを与えてくれるものです。同時に自分自身が作るものがどう生産されているか、どう流通するかに対して責任を持たなくてはいけません。クリエイティビティの夢を持ち続けることは、調達先や製造方法、人々への接し方にも言えることだと思います。サステナビリティへの取り組みも、クリエイティビティが大切です。私は毎日、ファッションと私たちの生活がより良くなるような、良い変化を起こせるような新しい素材や新しい答えを見つけようと試みています。ファッション産業は旧態依然としていて、例えば使う素材は10種類ほどのままです。ラグジュアリーもファストファッションも、ゴミ(のような素材)を何度も何度も調達しています。
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