化粧品業界で使用済容器の回収が進んでいる。しかしその量は決して多くない。複数の素材で構成されているし、油を使用しているバルク(中身)が多いためリサイクルも容易ではない。課題は多いものの技術革新により、各社が課題解決に向けて取り組んでいる。(この特集は「WWDBEAUTY」2023年5月29日号からの抜粋です)
花王(KAO)
商品ライフサイクル全体で環境負荷を低減
花王のESGビジョン「キレイ ライフスタイル」の一つに「2030年までに全ての花王商品が全ライフサイクルにおいて、科学的に地球が許容できる範囲内の環境フットプリントを目指す」がある。その具体的な活動として“ごみゼロ”があり、容器回収がそこに含まれている。洗剤などの日用品や化粧品の空き容器などの生産は脱炭素にも影響があり、海洋ごみにもつながっている。しかしそれは「原材料の調達から廃棄まで商品のライフサイクル全体で環境負荷を低減する必要がある」と大谷純子・花王ESG部門ESG戦略部長は語る。商品ライフサイクルの中で、環境に一番負荷がかかっているのは消費者に商品が渡ってから。例えばシャンプーの場合、髪を洗うためにシャワーを使用すると水を多く消費し、お湯にするにはガスを使用してCO2を排出する。「メーカーが環境負荷を軽減する取り組みを強めても、消費者の協力がないと難しい」。
消費者が無理なく取り組めるために、花王では詰め替え商品や濃縮化によるプラスチック削減に努めてきた。洗剤を例にすると、従来のボトル容器を詰め替え商品にすることで1回のプラスチック使用量は5%未満になる。現在では詰め替え商品の購入率が8割に上る。「当社とお客さまが二人三脚で詰め替え商品市場を培ってきた。詰め替え商品はボトル容器と比較して価格を抑えていることが浸透したが、それが環境負荷軽減につながっていることを伝えていく」。詰め替え商品の改良も随時実施し、粘度の高いシャンプーやボディーソープなどが最後まで絞り出せるよう、詰め替え容器に容易に入れ替えできる“ラクラクecoパック”を開発。さらに詰め替え商品をそのまま使用できる“スマートホルダー”も販売する。
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