研修名:
①他部署体験研修 ②3社合同勉強会
対象者:
①3年目以降の希望者 ②販売スタッフ
研修前の課題:
組織の規模拡大による没コミュニケーション
キャリアの硬直化の懸念
研修の効果:
コミュニケーションの円滑化
キャリア自律の意識の芽生え
努力する方向性と必要なアクションの認識が
成長スピードを左右する
少子高齢化による労働力人口の減少やグローバル人材の確保など、人材育成の課題が長く指摘されてきた。コロナ禍を経て、働き方やコミュニケーションに変化が生まれ、人材育成の重要性はさらに高まっている。本特集では、独自の研修プログラムで成果を上げる12社の取り組みを紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年6月5日号からの抜粋に加筆しています)
ビームスは、入社後3年間の全社員を対象に定期的に研修を行う。基礎教育の前提には3つの採用基準「情熱」「感性」「個性」があり、“BEAMS人”としてこの3つを発揮できる土台を作ることを基礎教育の目的としている。教育テーマは「人を巻き込むリーダーシップ」と「キャリア自律」だ。この教育テーマを基に、3年間でそれぞれの役割の変化に合わせてスキルや考え方を積み上げていく。石切山哲也ビームス人事室 人材開発部 部長は「情熱、感性、個性をどの方向性で発揮するかを自分の頭で考えて見定めることが、活躍には欠かせない要素。基礎教育では主体性を育むことを重視する」という。
1年目の入社研修では、社内メンバーとのグループワークや先輩社員が講師役となるセミナーを通して、企業ミッションや風土文化への共感ポイントをそれぞれが見つけられるように促す。研修の軸となるのは毎年テーマを変えて行う「新規事業提案プロジェクト」だ。「ジブン×ビームスで世の中をハッピーにする新規事業を提案せよ」をテーマに、情熱、感性、個性と研修でのさまざまなインプットを掛け合わせながら、チームに分かれて立案から役員へのプレゼン、振り返りまで行い、その実現に向けて行動をブラッシュアップする。「3年間で基礎教育を終える現在の研修スタイルが大枠で固まったのが2014年。それまでは定義が曖昧だった新人への期待役割を明確化し、ありたい姿に向けて段階的に必要スキルを積み上げるプログラムができあがった。成果を定量的に計ることは難しいが、教育を継続的に行うようになったことで、昇格時期が年々早まっている感覚はある。早期に多様な人が活躍できる状況ができつつある。努力する方向性やどういうアクションが必要になるかを認識して働くと成長スピードが上がる」。
一方で、組織改編やビジネス領域の拡張など近年の会社成長にともなう課題に対応すべく、他部署体験研修を19年に制度化した。対象は基礎教育を受けた3年目以降の全部署に所属する正社員の希望者。立ち上げた当時を振り返り石切山部長は、「会社の規模が大きくなるにつれ社員間に距離ができ、他部署間のコミュニケーションが薄れていく懸念が出てきた。自分の動機きっかけで能動的に他部門と関わっていく機会が必要ではないかという考えからこの施策が生まれた。さらに、隣の部署が何をしているか分からない状況で、中長期的な自分のキャリアが想像しにくい実態があった。社内には魅力のある新しい役割がどんどん生まれ、キャリアの可能性は今の仕事だけではないことに気づいてほしい思いもあった」と振り返る。コロナ禍は中断していたが、それ以外は半期に一度2カ月間をインターン実施期間に設定。希望者と受け入れ先のスケジュールを調整し、1〜7日間で他部署を体験する。毎回、50〜70人が参加するという。最近はECやBtoB領域、グローバル事業へのインターン希望者が増えている。
また、同じく18年から「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」とベイクルーズの3社合同による勉強会も2カ月に1度の頻度で継続して開催している。今年は年間テーマとして「ファッション、販売、ブランドの好き、楽しむ、楽しんで働くを見つける」に設定。コロナ禍でファッションの楽しさを実感しにくい時期が続いたので、改めて「自分たちが携わる仕事はめちゃくちゃ楽しいよね」「本当に好きでこの仕事をしている」ということに立ち返る狙いがある。勉強会ではバイヤーやブランドディレクター、販売のエキスパートなどを招きこだわりや楽しみを対談で話してもらい、自分たちの仕事の楽しさを感じられる機会をつくっている。3社合同の理由は、「もともとは業界全体で販売員の仕事の魅力を再認識してもらい、価値を高めようという目的でスタートしている。その考えが共通認識としてかみ合ったことから合同勉強会になった。実施してみると、他社の情報を得られるからこそ感じる自社の独自性の発見があるなど、さまざまな効果が出ている」。
人材開発部としての展望は、「なりたい自分」を教育で支援するのが大きな目標としている。自分が目指したい方向性や求められていることを見定められる機会提供を拡充する必要がある。「ここを強化したい」「スキルアップしたい」となった時に学べる機会も提供する構想だ。その皮切りとして、全社的に汎用性の高いビジネススキルを多彩なバリエーションで学べるeラーニングプログラムをテスト導入し今後本格運用する予定だ。
PHOTO:SHUHEI SHINE
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