REPORT
デザイナー夫妻が象徴する、ハッピーな日本とアメリカのリミックス
ピッティ・イマージネ・ウオモのゲストとして、中村ヒロキが手掛ける「ビズビム(VISVIM)」とウィメンズライン「WMV」が2017年春夏コレクションを発表した。ショー会場の入り口では、波模様の半纏(はんてん)がギフトとして配られ、それをまとって会場に入ると、コーヒーやハンバーガーが振る舞われたり、クラシックカーやバイクとの記念撮影が楽しめたり。「ビズビム」らしい、歴史ある往年の名品と、その経年変化が楽しめるピースフルな空間が来場者の気分を盛り上げた。
ショーも冒頭は、齢を重ねた老人たちのダンスからスタート。モデルたちは踊り続ける彼らの脇を通り抜けるように、来場者の眼前に現れた。
冒頭は、「ビズビム」らしい、日本古来の民俗衣装を、職人技を使って深みある色に染め上げ、シルエットとスタイリングでモダンにまとめたスタイルだ。柔道着のような刺し子入りの生地をピーチピンクに染めた半纏、そして、古くから伝わる抜染(ばっせん)という技法でコイを描いたシャツ。それらをMA-1やワークブルゾン、スリムなデニムなどと合わせ、ストリートスタイルにまとめていく。
中盤以降、日本古来のスタイルは、アメリカのウエスタンと出合い、マリアージュを遂げていく。半纏の素材はシルクサテンに変わり、肩口から袖にかけてはまるで、スカジャンのような2本線。ムラのあるギンガムチェックで作ったコンパクトな3ボタンのジャケット、藍染めのデニムで作った褞袍(どてら)のようなステンカラーコートなど、古来の衣装がさらにモダンに進化し、テンガロンハットやパナマ帽などと組み合わさる。もちろん、グラフィックTシャツや、ドロップショルダー気味のスエットなど、ストリートの定番を取り込むことも忘れない。ウィメンズは、コンパクトなトップスをAラインのスカートにインしたバカンススタイル。メンズ同様の素材、モチーフを使い、レトロにまとめた。
フィナーレまでには、おばあちゃんダンサーもランウエイに登場し、紳士とステップ。ハッピーなショーのフィナーレは、中村デザイナーと、ともにニューヨークで暮らす妻の登場と、ランウエイ上でのキスだった。今回のスタイルは、日本人の中村と外国人の妻のように、和と洋を縦横無尽にミックスしたもの。デザイナー夫妻が体現する世界に、来場者は笑みを浮かべ、拍手を惜しまなかった。