TSIの婦人服「アドーア(ADORE)」は、上顧客に向けた付加価値の高い商品を充実させる。コロナの5類移行で上顧客のセレモニー需要が高まっていることを受け、2023-24年秋冬物からフォーマルな装いの“ブラックラベル”を5年ぶりに復活させた。また旅行需要に向けて英高級ラゲージ「グローブ・トロッター(GLOBE TROTTER)」と共同開発したスーツケースを売り出す。年間購買が数百万円以上におよぶVIPには、事前受注会での特別なサービスも実施する。
2005年にスタートした「アドーア」は現在、全国の百貨店、六本木ヒルズ、ギンザシックスといった高級ショッピングセンターに16店舗を構える。上質な素材やパターン、ほどよいモード感などを支持するコアな上顧客に支えられる。平均客単価は春夏物で6万5000円、秋冬で7万5000円ほど。定価で売り切ることを徹底するため、昨年からはセールをやめてMDの精度を上げた。TSIで婦人服ブランドを集めたファッションキャピタル事業の23年2月期の売上高が前期比15%増だったの対し、「アドーア」は同45.5%増とコロナ禍から急回復した。担当デザイナーの田中宏幸氏は「お客さまはコロナを経て、人と会いたい、つながりたいと強く感じている。おしゃれをしたい気運がとても盛り上がっている」と分析する。
3月以降もコロナ前の19年を4%上回る売り上げで推移する。中心顧客は40代半ばから50代前半だが、コロナ以降は40代以下の顧客比率は15〜20ポイント増えた。上顧客の中でも年間400万円以上を購入する“超VIP”、200万円以上の“VIP”が存在する。“超VIP”および“VIP”は、コロナ前の30人から現在は70人まで増えた。超VIPらに対しては、05年以降のアーカイブや雑誌掲載の中からお気に入りの商品を選んでもらい、その顧客のためのアレンジを加えた上で一点ものを作り、プレゼントするサービスを実施する。特別感のあるサービスで顧客ロイヤルティーを高める。