ウィゴーが2023年2月から大阪箕面の自社倉庫で始めた古着の直売会が好調だ。一般向けに月2回ペースで実施し、4月末からは業者向けにも開放。インスタグラムでしか告知していないにもかかわらず、延べ1万人超が来場し、累計約2万点を販売したという。売上高は当初の想定に比べて約5倍のペースで伸長中。6月25日に開催された直売会を取材した。
「これまでは大阪貝塚の自社倉庫の一角で行っていたが、古着の売れ行きが好調で手狭になったため、箕面に古着の機能を移して卸事業も始めた」と、同社サスティナブル部の舟井和也部長は語る。
日本トップクラスの古着輸入量を誇る同社は、コロナ禍で一時、輸入量を半数以下に減らしたものの、今年は年間輸入量500トンまで回復。アメリカを中心にタイ、パキスタンなどから輸入したものを箕面の卸倉庫で管理する。在庫数は1階に常時2万点前後、2階の業者専門フロアに1万5000点以上。店頭価格3900〜4900円のブランド古着を中心に揃え、店頭より3割ほど安い特別価格で販売する。修理や洗濯待ちの状態のものを500円で販売するワゴンコーナーでは、とりわけ古着業者の利用が目立つという。
6月25日に開催された直売会では、いま一番需要のある90年代Tシャツと人気の高い「ポロ ラルフ ローレン」や「チャプス」などのポロシャツに加え、幅広い年代に人気のある「ラルフ ローレン」のシャツ、バンドTシャツの3つを軸に展開。なかでも、バンドTシャツは、綿100%の黒地にハードロックバンドのロゴが入ったデザインがダントツ人気で、「アメリカでは取り合いになるくらい品薄になっている」(舟井部長)。
掘り出し物を求めて60代夫婦や母娘も
友達からの情報で初めて参加したという20歳の男性3人組は、バンドTシャツや90年代の「ステューシー」のシャツ、「ポロ ラルフ ローレン」のパンツなどを購入。「古着が好きでいつも南船場の古着店で買っている。そこの古着に似たような雰囲気の商品を探しに来た。意味不明のクセの強いTシャツとか、ブランドは分からないけど可愛いチェックパンツとか。すごく安く買えるので、時間があればまた来たい」と、満足気な様子。
舟井部長は、古着に対する消費者の認識やトレンドがここ数年で大きく変化しているという。5年ほど前から古着の需要が高まり、購入する客層も古着好きだけでなく、古着を着なかった層にも広がっている。「メルカリの普及やコロナ禍の影響もあり、古着が洋服を買うときの選択肢のひとつになってきた。以前のようなトレンドを追いかけて新しい服を買うマインドはなくなりつつあると思う。そもそも服に対して投資しなくなり、割安でそれなりに楽しめる古着に注目が集まったのでは。中高年でもまったく抵抗感がなくなってきている」(舟井部長)。
「ブルックス ブラザーズ」のシャツを探していた60代の夫婦は今回で3回目。隣の茨木市在住で、近くの問屋に来たときに同直売会を見つけた。「これまで『ラルフ ローレン』のシャツやイタリア製のウィメンズのニットなど、毎回4〜5枚は買っている。ブランド物が安いのが魅力。古着でも状態がよければ、まったく抵抗感はない。新品と古着を上手く合わせて楽しんでいる。ワンシーズン着られたらいいと思って安く買っているが、意外と何年も着られるものが多い」と話す。
近くに来たついでに初めてのぞいたみたという京都の母娘は、「ラコステ」のポロシャツやジーンズなどカゴ一杯の商品を購入。「デザインが可愛いバンドTシャツを見つけたが、合うサイズがなかったのが残念。古着が好きなのでまた来たい」と、すっかり気に入った様子だった。
25日の直売会には、リピーターも含めた約500人が来場し、約1000点を販売した。回を重ねるごとに増え、開催日を告知するだけのインスタグラムのフォロワーも増えている。
倉庫での直売会や全国を巡回する催事販売だけでなく、店頭での古着の売れ行きも好調だ。同社の23年2月期業績では、古着事業の売り上げが前年に比べて1.5倍以上に拡大したという。
「仕入れ値は昨年から3割ほど高騰している」
古着の需要増に伴い、限られたパイを奪い合う世界規模での争奪戦も激化している。これまではエリアによって流行の時期がズレていたが、昨今は世界同時期にほぼ同価格で取引が始まるため、人気アイテムの仕入れが厳しくなりつつある。「日本での販売価格が知られているため、仕入れ値は年々上昇している。そこに円安が加わり、仕入れ値は昨年から3割ほど高騰している」(舟井部長)。
今秋冬ものでは、昨年大ヒットした「カーハート」のダックジャケットを大量に積んでシーズン到来に備える。昨年は年間約1万点を販売した実績があり、今シーズンも他社を圧倒する販売数をめざす。
今後の課題は、業者向け卸販売の強化。平日にアポイント制で対応しているが、さらに拡大したい考えだ。需給がますますタイトになるなか、一般の古着店向けに1万5000点以上の在庫を確保。海外から入荷したベールを割ってハンギングしたままのものを一般客より割安で提供するなど、圧倒的な在庫量を背景に国内古着市場が抱える問題解決にも取り組む。