2024年春夏メンズ・コレクション最大のハイライトは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のファレル・ウィリアムス=メンズ・クリエイティブ・ディレクターの初陣となるショーだった。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月10日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
会場に選んだのは、ルイ・ヴィトン本社前のセーヌ川にかかる橋ポンヌフ。全長238m、幅22mのパリ最古の橋を数日間貸し切り、まぶしいほどのゴールドで敷き詰めた空間に、豪華セレブリティーを含むゲスト1500人以上を招待した。「ルイ・ヴィトン」を象徴するモチーフの一つであるダミエを橋上にあしらい、ゲスト用シートのゴールドのブロックも、ダミエの等間隔の格子のように配置する。夜10時にショーが開幕すると、ゴールドの空間は“太陽”をテーマにしたコレクションと呼応し、終始ポジティブな雰囲気に溢れた。
ファーストルックは、巨大ラペルとボクシーなショーツのスーツで、足元のブーツにはダミエをカモフラージュ風に表現した新モチーフ“ダモフラージュ”をあしらう。テーラリングを中心にした序盤では、ジャカードやインターシャなど多彩な“ダモフラージュ”を披露。中盤以降も、多彩なダミエがコレクションを盛り上げる。1960年代の欧州式テーラリングを思わせるレトロなムードと、90年代のストリートウエアを現代的に解釈したシルエット、スクールやワークウエアなどの要素も盛り込みながら、まるでファレル自身のワードローブのようなリアルクローズへと落とし込む。豊富なバッグやシューズにも色とりどりのダミエを描き、キャッチーな存在感を放っていた。女性モデルの起用や、ウィメンズバッグ“スピーディ”のメンズ版など、ウィメンズの世界観をシンクロさせるのは、前任のヴァージル・アブロー体制ではなかった新しさである。“JOY”の大合唱に包まれたフィナーレで、ファレルは終始手を合わせてチームや家族、ゲストらに感謝を示した。
革新的なクリエイションはなくとも、ファレルがファン層を広げるミッションを担っているのであれば、デビューショーは完璧な仕事といえる内容だった。ヴァージル亡き後のコレクションを担い続けたデザイン・スタジオの高い技術を生かしながら、世界中の老若男女に愛されるポップソングのようにポジティブでハッピーな味付けができるのは、現時点で音楽とファッション両方の世界に身を置く彼だけだろう。
ショーのライブ配信や視聴数は10億回以上で、過去最高だった。
会場選びがすでに壮大
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