毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月10日号からの抜粋です)
大塚:今回のメンズコレ特集は、ショーの話題性、インパクトという意味で圧倒的だったファレル・ウィリアムス(PHARRELL WILLIAMS)による「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を表紙からフィーチャーしました。エリさんと「どこのブランドが良かったか」を話したら、挙がるブランドがLVMH傘下のブランドばかりでしたね。“帝国”一強という感じのシーズンでした。
井上:そうですね。特に「ディオール(DIOR)」と「ロエベ(LOEWE)」が良かったです。「ディオール」はキム・ジョーンズが過去のヘリテージを新しいスタイルにうまく取り入れていて、テーラリングとワークのミックスが本当に美しかったです。「ロエベ」もプロポーションを変えながら、継続するミニマリズムのアプローチに新しさが感じられて、共に洋服そのものに魅力が感じられました。
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大塚:「ディオール」はキム・ジョーンズのうまさが際立っていましたよね。メンズはここ数シーズンさまざまなブランドが新しいスーツを模索していて、そぎ落として服の本質を追究する流れが続いているのですが、その中で群を抜いていました。「ルイ・ヴィトン」はメジャー感でマスにアピールできるし、「ディオール」はモード好きに、「ロエベ」はクラフトのイメージを携えながらアクセサリーが強く、「フェンディ(FENDI)」もまた違うテイストでアクセサリーが強い。「ケンゾー(KENZO)」はカジュアル感もあって、LVMHは本当に全方位だと感心しました。
井上:確かにそうかも。
大塚:“そぎ落とす”傾向になっていくと、資本力のあるブランドが強いというか。もっと賑やかなデザインがトレンドだと、演出もストリート感を出すなどのやり方があるのですが、今のメンズの流れだと、そうした圧倒させる演出が服の魅力を引き立て、迫力を与える感覚があります。個人的には、ロンドンの若手や中堅のブランドがもっと成長してほしいです。
井上:そういう意味では「ダブレット」はバランススクーターで井野将之さんが最後に出てきたりして、ユーモアたっぷりに観客を楽しませながら、服自体はトレンドも押さえていて、すごいなと思いました。それから、「ルイ・ヴィトン」のニコラ・ジェスキエールの右腕として働いていたデザイナーたちが、中堅デザイナーとして徐々に頭角を現してきています。今後、同じように「ディオール」のキムの右腕だった人が表舞台に輩出されるのではないかと楽しみです。