イタリア・フィレンツェでメンズの見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(以下、ピッティ)」が6月13~16日に開催された。パンデミックを経て徐々に活気は戻りつつあるものの、かつてイタリアのファクトリーブランドを中心とした “イタリアン クラシコ”の祭典は、大きな転換期を迎えている。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月10日号からの抜粋です)
104回目を迎える「ピッティ」には、1月開催の第103回よりも約1000人少ない延べ1万7000人が来場した。1年前に比べてイタリア国外から来場するバイヤーは24%増加し、特にアジアからの復帰が目立った。日本や中国、韓国に加え、香港や台湾、シンガポール、タイなどさまざまな国や地域から来場があり、全海外バイヤーの4割をアジアが占めたという。出展社数は前回とほぼ同じ825で、うち41%は海外ブランドだった。特に初日と2日目は多くの来場者でにぎわい、メイン会場のフォルテッツァ・ダ・バッソは活気で溢れた。一方で、ゲストブランド「フェンディ」と「ERL」がショーを開催した3日目以降はメイン会場内の来場者の引きも目立ち、4日間という開催期間の再考を求める出展者の声はいまだにある。
かつて中核をなしていた有力ブランドが姿を消した分、“イタリアン クラシコ”の潮流を感じ取る合同展示会としては手薄になったかもしれない。しかし「ピッティ」は“イタリアン クラシコ”以外のジャンル開拓のため、さまざまな施策を行っている。現在でもメンズ見本市としては最大規模であることは変わらないため、知名度を上げたい海外ブランドや新ブランドにとっては好機ともいえるだろう。
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CHULAAP
HERNO
MON CARBONE
SNOW PEAK
PITTI PETS
CONSINEE GROUP
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中でも、イタリア国外のブランドに焦点を当てる企画が目立った。タイ出身で現在は南アフリカを拠点にするチュー・スワンナパが手掛ける「チュラープ」は、モデルを起用したプレゼンテーションを開催。「着想源は南アフリカのストリートウエア。普段接することが少ない国の人に、ブランドを知ってもらえる機会だから」と参加の理由を語った。
日本のスノーピークは、アウトドア系のブランドを集積する“アイ・ゴー・アウト”に特別参加し、メイン会場内の屋外スペースにテントやチェアなどを展示。中国のカシミヤ・紡績糸の繊維大手コンサイニーのブースでは、同社提供による環境に配慮した糸を使った、イタリア・中国人デザイナーのコレクションを披露した。ほかにも日本のスパイバーが人工タンパク質素材「ブリュード プロテイン」を伊「キャビア」のニットウエアに提供したり、台湾の「モン・カーボン」がメイン会場にブースを構えたりと、アジア勢のトピックが目立った。
「ピッティ」=“イタリアン・クラシコ”というイメージは依然として強いため、このような間口を広げようとする新しい動きを、集客や商機にどうつなげるかが今後の課題だろう。しかし出展社をはじめ、来場者や開催日程など量より質にこだわっていけば、「ピッティ」が魅力的な合同展として復活するチャンスはまだまだある。
ERL
32歳のイーライ・ラッセル・リネッツが手掛けるLA発メンズウエアブランドが初のショーを開催。音楽や写真など、あらゆるクリエイティブに携わってきた奇才らしく、ストリートウエアが軸のアイテムに創造性を注ぎ込む。“水没した2176年のフィレンツェ”という自らの映画製作のアイデアを着想源に、未来のサーファーたちがまとうのはスパークルなウエア。素材感や縫製などでまだまだ荒っぽさはあるものの、服のデザインだけにとどまらない、クリエイションのスケールの大きさをアピールした。