ごみの最終処分場が23.5年後(全国平均)になくなる。環境省が令和5年3月30日に調査結果「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」を発表した。これは、新規の最終処分場が整備されず、令和3年度の最終処分量が埋め立てられた場合の数字だ。関東圏(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県)は30.1年(令和2年度28.2年)、近畿圏(三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)は19.9年(令和2年度19.1年)年と地域差はある。残余容量は9845万立方メートルで、最終処分場の確保は引き続き難しい状況にあることも言及している。地震や自然災害で生じる災害廃棄物を考慮すると残された年数は少なく見積もったほうがよいだろう。
無限に捨てられる時代は終わったことに気付いている人は少ないのではないだろうか。ごみを自治体所定の場所に出すと回収して処理してもらえると錯覚しがちだが、その費用は税金で賄われており、ゴミの量に比例して費用=国民の負担も大きくなる。ごみ処理場や最終処分場を新しく作るにも莫大な費用がかかる。すでに粗大ごみや家電製品などは処理費用の一部を所有者が負担しなければならないが、今後負担対象が広がるかもしれない。
同調査によるとごみ焼却施設は1年間で1056施設から2.7%減の1028施設に減少した。今後減ることも予想され、事実、鎌倉市は2024年度末に市内唯一の焼却施設である名越クリーンセンターの稼働を停止する。新たなごみ焼却施設は建設せずに、ゼロ・ウェイストを目指してゴミの減量と資源化を進めると発表している。25~28年度は「鎌倉市・逗子市・葉山町ごみ処理広域化実施計画」に基づき、燃やすゴミの処理を逗子市の既存焼却施設や民間事業者を活用して行い、29年度以降は、燃やすごみの全量を逗子市で処理することになっているという。ゴミを出せば出すほど、隣接する自治体への依頼と費用は増えるが、減量やリサイクルが進めば費用は抑えられるというわけだ。ちなみに鎌倉市の令和3年度のリサイクル率は52.6%で人口10万人以上の都市の中では4年連続の1位である。同市のごみ分別は21種類ある。
ごみ問題とファッション
ごみ問題とアパレル産業の課題を結び付けて考えてみたい。アパレル産業の大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした従来型のビジネスモデルはすぐにでも改善したい課題の一つだ。環境省が2023年5月29日に発表した令和4年度の「『ファッションと環境』の調査結果」によると、22年の国内新規供給量は79.8万トンでその9割の73.1万トンが事業所及び家庭から使用後に手放されると推計している。このうち廃棄される量は手放される衣料の64.3%の47万トンで、その多くが焼却処分される。リサイクルされる量は同17.4%の12.7万トン、リユースされる量は同18.1%の13.3万トンで、毎年大量に廃棄されていることがわかる。
これが環境に与えるネガティブなインパクトが大きいことは周知だが、ごみ問題の観点からも、大量生産の上に成り立つビジネスモデルも、生活者が今と同じような消費行動を続けることも、持続不可能だと受け止めたほうがいいだろう。
今後、最終処分場の残余容量が少なくなればなるほど、事業に対する影響は大きくなるだろう。年々、産業廃棄物処理費用は上がっており、今後炭素税の税率上昇や仕組みの整備が進めば、企業や個人への廃棄コストの負担はさらに増える。企業の余剰在庫の廃棄はもちろん、消費者の廃棄に関しても企業の課題になる可能性がある。はたして、誰が廃棄の費用を払うのか。
今後、拡大生産者責任(製品の生産者の責任が、製品の設計・製造・使用段階のみならず、消費後の廃棄・リサイクルの段階にまでに及ぶという考え方)がアパレル産業にも適応される可能性は否定できない。もしも自社製品が消費者の手に渡り、使い古され廃棄物となったものを自社で回収・処理する負担を負うことになったら?現在のところ、日本の家電リサイクル法では、家電小売店に収集・運搬の義務を、家電メーカー等にリサイクルの義務を課して、家電製品を使った消費者がそのための費用を負担するという役割分担で行われている。しかし、欧州では現在、繊維産業に対する拡大生産者責任が改定版のEU廃棄物枠組指令(WFD)の作成にあたり議論されている。使用済み製品の収集とリサイクルなどへの拡大生産者責任を規定し、廃棄抑制や再利用準備などに向けたエコ調整料金を導入することや、繊維製品廃棄物の再利用準備とリサイクル目標の義務化などが検討されている。
拡大生産者責任の適用と最終処分場の容量不足によってアパレル製品が法的規制の対象になった場合、つくる側の責任がビジネスに重くのしかかってくるのではないだろうか。アパレル産業が直面するであろう、ごみ問題に即効性のある処方箋はない。リペアやリセールへの参入などを含む根本的なビジネスモデルの改革が必要になるだろう。