毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月31日号からの抜粋です)
大塚:メンズコレ特集第2弾は、具体的なアイテムに落としこんだトレンドを紹介しました。ここ数シーズン、「スーツをどう新しくするか」という傾向が続いているので、今回は思い切ってスーツだけで見開きを作りました。スーツといえば、メンズアイテムの最たるものですが、2024年春夏シーズンは、曲線的なシルエットだったり、ツイードを用いたりと、女性的な要素が融合するものが出てきていましたね。
井上:そうですね。突出していたのが「ディオール(DIOR)」でしたよね。ブリティッシュなジャケットにクロップドパンツ、厚底のローファーというスタイルを、フレンチエレガンスにまとめ上げていました。メゾンの歴代のデザイナーの要素はもちろん、国や性別や年代も超えたスタイルをミックスして、「ディオール」メンズの新しい章の始まりと言える素晴らしいコレクションでした。垣根を越え、制約を取り払うことでメンズファッションの自由度が増していると感じました。
大塚:「ディオール」はパッと見はかわいいけれど、カッコよさもあり、今回の表紙に選びました。僕は40歳で、「カッコいい」は男性、「かわいい」は女性というイメージで育ってきたのが、最近は自分自身でも「カッコいい」と「かわいい」の境界線がなくなってきているように感じます。シアー素材でもカッコいいし、それが今っぽい。
井上:ファッションウイークの会場では、シアーのトップスも割と自然に着ている男性が少なくないですよね。個人的かもしれませんが、私は男性が女性的なものを着ていてもセクシーに感じるというか、男性的な色気が出てくるように思います。若い男性と話すと、レースのグローブやヘアアクセにも全然違和感がないようで、本当に自然に身に着けています。
大塚:女性的な要素が融合することで、かつてに比べるとメンズも素材やシルエット、ディテールのバリエーションが確実に増えています。こうした流れがもっと浸透すると、なかなか新しいトレンドが生まれないメンズも、根底から変わるのではないか、よりトレンドが出てくることになるのではないかと期待します。
井上:解き放たれている感がありますよね。
大塚:特にアクセサリーは、ダッドスニーカー以降メンズのアクセトレンドが見えていないので、新しいアイテムが出てくるといいなと思います。