
五十嵐真由子/ オンラインスナック横丁代表 プロフィール
2020年にコロナ感染拡大によって営業が困難なスナックママを支援する「オンラインスナック横丁」を設立。現在は「外国人向けスナックツアー」「初心者向けスナックツアー」スナックママのコミュ力でオフィスコミュニケーションを支援する「オフィススナック」などスナックの可能性を追求した新たなイベントを手掛ける
板チョコ型の重い扉を開けると、そこに広がるのは大人たちが垣根を越えて談笑する温かい夜の世界。そんなスナックの魅力にハマる20代女子、通称“スナ女”が増えているらしい。600軒以上のスナックを巡り歩いたスナックマニアこと、五十嵐真由子さんが主催する「スナック初心者入門ツアー」の様子をのぞかせてもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2023年8月21日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
WWDJAPAN(以下、WWD):今日はよろしくお願いします。よくバーは行くのですが、スナックは完全に初心者です。
五十嵐真由子(以下、五十嵐):このツアーは、まさにそんな人たちのために4月から始めました。今は週に1〜2回のペースで開催しています。スナックってなかなかなじみがないですよね。私は過去に600軒以上訪れた愛好家として、実はとってもオープンなスナックの魅力を発信したく活動しています。
〈心得其の一〉
スナックは多様。看板からジャッジせよ
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WWD:スナックって年配の男性がきれいなママと話すための場のようなイメージがあります。
五十嵐:そのイメージは一面的。地方では、おじいちゃん、おばあちゃんの寄合所としての役割もあれば、夜勤明けの人が集う朝スナックなどさまざまなコミュニケーションが創出されています。今日はサラリーマンの街、新橋を例に多様なスナックの顔を知ってもらいたいです。早速ですが、問題です。SL広場を起点に半径450m以内に何軒スナックがあると思いますか?
WWD:50軒くらいでしょうか。
五十嵐:答えは、500軒。これだけありますから、個性溢れるスナックも多いです。例えば、店内に怪獣や戦隊ものの人形がずらっと並ぶ「特撮スナック」、床に人工芝が敷かれパター練習もできる「ゴルフスナック」など、ママの趣味や特技が反映されたお部屋に遊びに行く感覚で楽しめる店も増えています。ところで、スナックの店選びって難しいですよね。でも看板から特徴を推測することができるんですよ。例えば明朝体で、白・赤・黒などオーセンティックな色の看板は割と年配のママが経営しているところが多い。英字、ダジャレ風な店名の看板はバブル期を経験した40〜50代ママ。昭和感を漂わせ洒落たフォントを使っていればネオスナックと呼ばれる20〜30代の新米ママたちが多いですね。初心者へのおすすめは、コミュニケーション力が高いベテランママたち。女の子や初心者でも上手に盛り上げてくれますよ。
〈心得其の二〉
カラオケ独占禁止法
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WWD:通常ツアーは、どんな人たちが参加するんですか?
五十嵐:予約の9割は20代の女子たちです。コロナ禍で外出できなかったせいか“飲みニケーション”を学びたい、1人でも行ける、行きつけを作りたい人はすごく多い。今の若者は、石橋をたたいて渡るタイプが多いのでしょうか。その場所での振る舞いを事前に学べると安心するようです。もう1つの理由は、TikTokで昭和の歌謡曲がはやっていて、その曲にピッタリなスナックでカラオケを披露したい、という人も結構います。どんな選曲でもOKですが、独占はNG。周りが歌った後には、拍手も忘れずに。
〈心得其の三〉
すっぴんOK。ファッションはカジュアルに
WWD:スナックに行く時のファッションのポイントは?
五十嵐:狭いお店が多いので、身動きがとりやすいパンツスタイルに、今はやりのポシェット型のショルダーバッグで持ち物もコンパクトにするのがおすすめ。スナックは、ドレスアップしていく場所ではなく、日常使いできるぬるま湯コミュニケーションの場です。すっぴんでも大丈夫ですよ。
WWD:ちなみに、五十嵐さんがスナックにハマった理由は?
五十嵐:前職は楽天トラベルの広報でした。地方の旅館とのコミュニケーションを図る際、その地域のことを何も知らないで来てくれるな、と突っぱねられることが多かったんです。あるとき道中でタクシーの運転手さんに相談したら、「お嬢ちゃん、スナック行きなよ」と勧められました。実際に扉を開けてみたら、ママや常連さんたちみんながいろんな情報をくれて、とても親身に助けてくれました。そこから今ではすっかりとりこに。スナックは、いろんなSOSに寄り添ってくれる温かい場所。 恋愛や仕事など何かに行き詰まった時は、ぜひ相談しに行ってみてくださいね。
WWD:私も粋な“スナ女”目指します。
トピックス
【原宿】BELAMI
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ファッション関係&外国人も集うスナック
「マスターはニューヨークで暮らしていた経験もあり、流暢な英語でのコミュニケーションも可能なので外国人や、原宿という場所での数少ないスナックにはファッション関連の人々も集う。マスターの盛り上げ上手なコミュニケーション力で常連もご新規さんもすぐに仲良くなって皆でカラオケやお話を楽しめます。マスターの奥様の手料理(カレーやもつ煮など)も絶品です!」(五十嵐)(東京都渋谷区神宮前2-35-9)
オフィスにもスナック
再生可能エネルギーの「みんな電力」を提供するアップデーターは、五十嵐さんのアイデアのもとオフィスの会議室の1室をミラーボール付きの本格的なスナック空間に改装した。顧客との会議のほか、毎月1回代表がマスターとなり社員をおもてなしする「スナック再生」が開店し、社内交流の場として活用している。このように非日常的なスナック空間で社内のフラットなコミュニケーションを創出する「オフィススナック」の導入事例が話題を集めているという。