メンズブランド「チェルッティ 1881(CERRUTI 1881)」と「ケント・アンド・カーウェン(KENT & CURWEN)」のグローバル商標権を2023年4月に取得した中国のアパレル企業ビーム・エル・フドルク・ガーメント(BIEM.L.FDLKK GARMENT CO.、比音勒芬服飾股分有限公司)は9月6日、両ブランドのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)として、デザイナーのダニエル・カーンズ(Daniel Kearns)を任命した。10月に就任し、ウィメンズも含めたコレクションを24年9月に発表する予定。
カーンズ新CCOは、これまでに「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ゼニア(ZEGNA)」のデザイン・ディレクターを、直近では「グッチ(GUCCI)」のメンズ・デザイン・ディレクターを務めていた。また、16年から21年までは「ケント・アンド・カーウェン」のクリエイティブ・ディレクターを務めていた。
「チェルッティ 1881」は、22年1月に91歳で亡くなった故ニノ・チェルッティ(Nino Cerruti)氏が1967年に設立した「チェルッティ」のディフュージョンラインとして誕生した。同氏は、祖父が1881年にイタリア・ビエラで設立したテキスタイルメーカー、ラニフィーチョ・フラテッリ・チェルッティ(LANIFICIO FRATELLI CERRUTI)を20歳で継いだ後、アパレル事業を開始。1957年にメンズウエアの「ヒットマン(HITMAN)」を立ち上げたほか、ラグジュアリーラインの「チェルッティ アルテ(CERRUTI ARTE)」、ジーンズラインの「チェルッティ ジーンズ(CERRUTI JEANS)」、メンズコレクションを扱う「ザ チェルッティ ブラザーズ(THE CERRUTI BROTHERS)」に加えて、フレグランスやアクセラリーラインなども展開。その後ブランドを再編し、アパレルブランドは「チェルッティ 1881」に統合した。
経営面では紆余曲折を経ており、2000年にイタリアのフィン・パート(FIN.PART)に株式を売却したことを皮切りに、米投資ファンドのマトリンパターソン(MATLINPATTERSON)や香港の高級紳士服チェーン、トリニティ(TRINITY)など何度かオーナーが変わっている。現在グローバル商標権を保有するビーム・エル・フドルク・ガーメントは、同ブランドを「そのルーツにふさわしい上質な素材の、優れたクラフツマンシップとインテリジェントなデザインで作られた、メンズおよびウィメンズ向けのコンテンポラリーなラグジュアリーブランド」としてリローンチを目指すという。
「ケント・アンド・カーウェン」は、1926年創業の英国メンズブランド。オックスフォードやケンブリッジなど、名門大学の学生が着用するネクタイやセーターのメーカーとしてスタートした。時代によって業績のアップダウンはあったものの、2000年代に入りさらに苦戦。若年層を引き付けるため、15年から19年にかけてデヴィッド・ベッカム(David Beckham)と提携してスポーティーなアイテムを強化したが、損失が膨らみ、20年に提携を解消した。なお、同ブランドも一時期トリニティが保有していた。ビーム・エル・フドルク・ガーメントは、同ブランドについても、ウィメンズも扱うコンテンポラリーなブランドとして立て直したい考えだ。
ビーム・エル・フドルク・ガーメントは、03年設立の上場企業。ゴルフウエアで知られており、中国市場で70%強のシェアを誇る。また、トラベル・バケーション向けアパレルブランドも展開。中国国内でおよそ1190店を運営し、ECでは中国の人気SNSウィーチャット(微信、WeChat)を擁するインターネットサービス企業大手のテンセント(騰訊、TENCENT)と提携している。22年の売上高は約3億9500万ドル(約576億円)。なお、「チェルッティ 1881」と「ケント・アンド・カーウェン」のグローバル商標権を獲得するにあたり、それぞれ6218万ドル(約90億円)と4145万ドル(約60億円)相当を支払っている。