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2023年版「令和のカリスマ販売員」にユナイテッドアローズ新宿店の仲さん 上位入賞者の詳細リポート

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バニッシュスタンダードは9月28日、販売員のDXアプリ「スタッフスタート」で活躍する“日本一の令和のカリスマ販売員”を決めるコンテスト「スタッフ・オブ・ザ・イヤー2023」を行った。グランプリを獲り賞金300万円を見事に獲得したのは、「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」新宿店(ルミネ新宿 ルミネ1のB1・1階)に勤める仲希望(naka)さんで、「スタッフスタート」を活用するアパレルの店頭スタッフ8万人の頂点に立った。準グランプリ(賞金200万円)は「ビーミング ライフストア by ビームス(B:MING by BEAMS)」のららぽーとTOKYO-BAY店のSUDOさん、3位は「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」吉祥寺店のHanadaさん、4位はバロックジャパンリミテッド「リエンダ(RIENDA)」新宿ルミネエスト店の植竹玲菜さん、5位はワールドのオペークドットクリップ(OPAQUE.CLIP)のyuka.aさんだった。

2021年に始まった「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」は今年3回目の開催。「スタッフスタート」から投稿されたコーディネートからの売上高や、SNSのフォロワー数、一般からのオンライン投票などによる3カ月間の予備審査を勝ち上がったファイナリスト16人が、渋谷ヒカリエで競い合った。

第1次審査では「お客さまのニーズをくみ取りながら、アイテムを提案する」というテーマの下、提案力、くみ取り力、人間力を評価軸として4分間の「接客ロールプレイング」を実施。お客さま役はタレントの村重杏奈、YouTuberのなこなこカップル、ショップ店員ネタも有するお笑いコンビ「スパイク」の松浦志穂と小川暖奈、タレント・俳優のユージが務めた。

第2次審査では上位8人が、自身の販売員としての矜持や想いを語る90秒の「自己PR」を披露した。審査員には「エゴイスト(EGOIST)」「マウジー(MOUSSY)」「カリアング(KARIANG)」などを手がけてブームを巻き起こした“平成のカリスマ販売員”の森本容子ヨーコ モリモト デザインオフィス代表取締役兼クリエイティブディレクターが初めて参加。パリコレモデル経験もあり良質なコメントで引っ張りだこのタレントのアンミカ、ファッションエディターでスタイリストの大草直子、「セリーヌ」「アルマーニ」「プラダ」「ティファニー」で店長やリージョナルディレクターなどを経験した店舗運営スペシャリストの秋山恵倭子の4人が務めた。MCは20年前にアパレル販売員だったというハリー杉山と、モデル・タレントの貴島明日香を起用した。

グランプリを獲得したユナイテッドアローズの仲さん、スピーチに審査員も涙

グランプリを獲得したユナイテッドアローズの仲さんは、販売歴20年3ヵ月のベテランで、3人の子どもを育てるワーキングママ。今回の予選では「ユナイテッドアローズ」と「ビューティ&ユース」の2つのアカウントで計1075投稿を行い上位で通過。ドレス、カジュアルともにコーディネートを組めるスキルの高さや、目標達成に向けた強い意志、さらには、自身の健康・体形・美容・モチベーション・家族の環境・家族の健康などを含めた継続力が持ち味。

1次審査では、お客さま役のなこなこカップルのなごみが入店すると、挨拶の後に早速、今年のユナイテッドアローズには、「大人の女性を彩るふわふわもこもこ」アイテムがたくさんそろっていると商品ラインナップを紹介。なごみの「今度彼氏と秋冬服を着てテーマパークに行く。同棲が長くなってきて、普段来ている服は知っているので、新しいコーデで驚かせたい」というリクエストに対して、「ガラッと変わってもらいます」と自信をみせたうえで、「何か気になったものは?」と興味関心を聞き出し、選んだパープルのモヘアのニットに対して、「肌が綺麗なので、やわらかいパステルが合うと思う」として、パーソナルカラーの話にも言及。さらに、「テーマパークでもアクティブに使える」ことや、「柔らかい印象になりすぎだなと思ったら、(黒の)レザーのアイテムを合わせるといい」とコーデアイテムを紹介。さらに、普段履くスカートの丈を確認したうえで、ミニ丈のスカートを提案。「絶対ドキっとされると思います。可愛いと思います。今年でしたら、ニーハイブーツを合わせてもらうのもデートっぽい」と説明。さらに、ベロア素材のブーツも合わせて、ストレッチ素材なので履きやすいことや、アプリのコーデ投稿画像を見せてデジタル接客へのタッチポイントとしつつ、コーディネートの参考例を紹介しながら使いやすいアイテムであることを印象付けた。さらに、「このままでも素敵ですが、アクセサリー感覚で使える」というチェーン付きのモコモコ素材のミニバッグをプラスオン。「彼氏さまのスタイルはわかりませんが、となりで合うと思います」と太鼓判を押した。

このロープレで、1次審査を2位で通過した仲さん。2次審査の「自己PR」では「私は入社して20年。40代になり 今は3児の母をしながら短時間勤務で働いています。『スタッフスタート」を始めて1年半になりますが、 スタイリングを投稿することは私にとって大きな挑戦でした。やるならとことんやる。できないならやらない性格なので、時短勤務の私にやりきれるのかすごく不安がありました。なぜなら、時短で働くようになって最後までやりきれない日が多く、それをすごく負い目に感じてきました。去年の『スタッフ・オブ・ザ・オイヤー』は勇気が出なくて辞退しています。ですが、挑戦できなかったことが悔しくて、この大会に出られる自分になりたいと思いました。そのように決心してからこの1年、毎朝早出をして、どんな時でもスタイリングの投稿を続けてこれたことが、自分の自信と責任につながりました。時短勤務の私でも、私にしかできないことを見つけました。『仕事を頑張ってるお母さんが好きだ』と応援してくれる3人の子供たち。一緒に働くメンバーや友人、そしてたくさんのお客さまに恩返しがしたい。それが私の頑張る力、続けていく力につながっています。こんな私をこのようなステージに立たせていただき、全ての皆さまに心から感謝しています。本日は本当にありがとうございました」と、ワーキングママとして働く葛藤や、努力や勇気の原動力について語り、大逆転でグランプリを獲得した。

グランプリの受賞スピーチで仲さんは涙ぐみながら、「去年この大会を辞退してから1年間、スタイリングの投稿を続けてきたとお話させていただいたのですが、やっぱりやるからにはグランプリを獲りたいと自分の中でずっと思っていました。あまり自分のことを褒めてあげられない性格なのですが、今日は本当によく頑張ったなという気持ちでいっぱいです。そして、その間応援してくれた皆様に感謝しかありません。ありがとうの言葉以上のものがあるとしたら、その言葉を作って皆様にお伝えしたいです。本日は本当にありがとうございました」というメッセージには、会場から惜しみない拍手が贈られた。アンミカは、「感動で審査員の方々も涙が止まらなかった」と舞台裏を明かした。

準グランプリのビームスのSUDOさんは昨年の悔しい思いをバネに

2位の「ビーミング ライフストア by ビームス」のSUDOは、販売歴10年4カ月。親しみやすさや雰囲気のあるファッションセンス、抜群のコーディネート提案力で、ブランド内でも高い実績を持つ人物だ。6年間毎日コーディネート投稿している努力家でもある。昨年の予選では敗者復活戦で僅差の2位となり、決勝進出を逃して悔しい思いをした経験をバネに、今年は悲願のファイナリストとして登場した。

1次審査では、シーズンのオススメアイテムであるチェックのシャツを手に、動きながら待機する姿勢に好感が集まった。登場したお客役は、なこなこカップルのコー。着用しているベロアのパンツをきっかけにスムーズに会話を開始。コーの「彼女に服を決めてもらっている」という話に、「秋らしいアイテム。彼女さん、オシャレなんですね」とニッコリ。さらに、コーのストリート風な装いを見ながら、自身のブランド説明として、「クリーンカジュアルがテーマで、アメカジでもきれいに着られる」とアピール。さらに、「お兄さん的にはどれが?」気になるかを問いかけつつ、「実は見えている」「彼女さんはどういうのが好きですか?」と、コーの好みを推測しつつ、彼女の好みをヒアリング。キレイ目で、男らしい感じで、ストリートテイストのデニムジャケットを紹介しつつ、セットアップがあることを紹介。ちなみに、デートの行き先については、なごみの出会いの場でもある「USJに行こうとしている」という小ネタがコーから披露され、会場も楽しい雰囲気に。SUDOはデニムジャケットに大きめのポケットが複数ついていて、スマホやペットボトルが入ることに加え、手が空くので、彼女の荷物も持てると推奨。「ポップコーンも入ります?」のボケに「入ります」と答えるノリの良さも見せた。さらに流れるように、「写真映えしますし、デニムのリンクコーデで行っていただいてもありだと思います。スニーカーも素敵だけれど、ちょっとやわらかいベージュの革靴を合わせてもらうと、全体的にキレイ目な、品(ヒン)が出ます」とシューズのコーデも紹介。その軽さに驚かれると、「USJをめちゃめちゃ楽しんでもらえると思います」と返し、コーから「一式買っていいですか?」との言葉を引き出した。最後に「セットアップで悩まれると思いますが、ビームスは、アプリを入れ、バーコードを読み取ると、コーディネートが出てきます。須藤と申しますので、コーディネートをぜひ参考にしてください」と綺麗にフィニッシュを決めた。

自己PRタイムでは「自分を一言で表すなら、『人好きな人間』です。人と話すことが好き。人を知ることが好き。 自分と関わった人の人生を、大好きな洋服を通して少しでも幸せにできるお手伝いができたらと思い、アパレル販売員の道を選んで今日まで突き進んできました。私は接客が何より好きで、 お客さまとお買い物を楽しむことが自分の中で一番生き生きとしてる瞬間だと感じています。去年、あと一歩で決勝進出できなかった『スタッフ・オブ・ザ・イヤー2022』から今日までの1年間、自分の接客をこんなにも見つめ直した1年はありませんでした。どうしたらお客さまのためになるか、 どうしたらお客さまが楽しんでいただけるか、改めて考えて、毎日ガムシャラに接客に取り組んできました。結果、今年、去年通過できなかった予選を1位で通過することができました。この結果は自分だけの力では決してありません。いつも信頼してご来店いただくお客さま、一緒に戦ってくれたビームスの皆さん。何があっても支え続けてくれた家族や友達。皆さまの応援があったからこそ、私は今ここで販売員としてこの場所に立てています……(泣)。明日からも、これからも、ビームススタッフの1人として、大好きなお客さまを 大好きな洋服を通して少しでも幸せにできたら、私はこれ以上なく幸せだと感じます。明日からも皆さまとお話できるのを楽しみに、店頭でご来店をお待ちしております。本日は貴重なこの場所に立たせていただき、本当にありがとうございました」と語り、結果、最終1次審査からランクを1つ上げて準グランプリに輝いた。

トゥモローランドのHanadaさんは卓越したスタイリングテクニックでセミファイナルは1位通過

3位の「トゥモローランド」のHanadaさんは2007年入社で、販売歴は14年10カ月。現在10歳の娘さんの出産・育児を経験して社会と切り離された気がしてしまったが、母となっても自分らしく存在感のある働き方を模索しながら、スタイリング研究を行い、やるならトコトンを追求して、日々成長を続ける販売員としてVTRで紹介された。

接客ロープレでは、スパイクの松浦さんを「秋らしくなってきましたね。ファーのアイテムもそろっています」と今秋冬のトレンドアイテムを紹介しながら迎え入れた。「パリコレに出たこともあるオシャレな人たちがいる地元での食事会で、着用したい。仕事なのでカジュアルすぎないようにパリっと感も出したい。」というリクエストに、「お客さまもオシャレですね」「職種をお聞きしてもよいですか?」とうまく対応。文房具で19色のボールペンのプレゼンを兼ねたお食事会ということがわかり、「お任せください。私、得意なので。Hanadaと申します。」と信頼感をアピール。「今日は緑の服を着られていますが、色物はお好きですか?」と色柄ものに対する意識を確認した後、「トゥモローランドはニットメーカーから始まった会社」であることや、おすすめするのが、そのニットを得意とした「キャバン」というブランドであることをさりげなく紹介。小さなポケットを「あめちゃんぐらいしか入らない小さなポケット」と紹介したり、あえて黒いスカートをもっていって、「実はカラーとのリバーシブルです」と驚きを演出。さらに、「お客さまだからこそ」と色×色の組み合わせに、柄物のスカーフを合わせた上級者コーディネートを紹介。松浦さんから「ちょうど19色ですね」と満足そうな笑顔を引き出した。最終の1次審査はトップ通過だった。

自己PRでは、「私はファッションを通して皆さまを幸せに導いていくのが販売員の使命だと思っています。実は私は入社当時、自分に自信がなく、ファッションの幅がとても狭かったんです。『私があなただったら、思う存分、好きな服を着るのにもったいない』という店長の言葉をきっかけに、これまで様々なファッションに挑戦してきました。ファッションは人生の中の特別な1日や何気ない毎日を彩り、未来を変えていく力があります。特別な日がよりスペシャルになったり、心が落ち込む日にも、好きな服を着ることで気分が晴れやかになっていく。そんな経験がきっと皆さまにもあるかと思います。私もそのうちの1人です。3年前始めた(『スタッフスタート』を活用したトゥモローランドのコーディネート投稿ページの)『スタッフスタイリング』は、そんな私に新しい世界を見せてくれました。私のページを毎日欠かさずチェックしてくださる顧客さま。それをきっかけにご遠方からわざわざ会いに来てくださる方との出会いもありました。さらには 海外からのお問い合わせもいただくようになりました。そして、これから出会うであろう方とのご縁を想像するだけでワクワクします。この1着をワードローブに加えることで、明日がどう変化していくのかを一緒に想像しながら、なりたい自分を叶えていく。そんなお手伝いをぜひ私にお任せください。最後になりますが、これまで応援してくださった皆さま。皆さまの力がなければ、今、私は絶対に1人ではここに立つことができませんでした。最後まで 私以上に私のことを信じてくださり、その応援こそが今の私の自信と勇気につながっています。このようなチャンスをくださった皆さまに心から感謝の気持ちをお伝えいたします」と述べた。

実は最終審査ではSUDOさんと総合ポイントが並び同率の2位だったが、審査員ポイントの差で3位となり、涙を飲んだ。ただ、審査員の森本容子さんは、「皆さん素晴らしくて感動しましたが、特にHanadaさんの接客の位置取りや言葉の使い方、進め方、そして、奇抜にならずに品のいいとてもセンスの良いご自身のスタイルに、とても魅力を感じました」と高く評価したことを明かした。

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