毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月2日号からの抜粋です)
林:2022年度に伊勢丹新宿本店が31年ぶりに売上高を更新しました。百貨店全体が売り上げを下げているのに、同店は突出した成長です。その理由を解明したくて特集を企画しました。
益成:次世代エースを取材しましたが、皆が「マスから個へ」を意識していました。特に外商担当がパワフルで、欲しいものが多様化している中、商品の勉強をするのも大好き、伊勢丹が持ってないサービスやモノでも提供したい、顧客の役に立ちたいという気持ちが売り上げにつながっていると感じました。
林:21年に就任した細谷敏幸社長の指揮下で外商とバイヤーの連携を強めたのが奏功していますよね。実在するお客さまに向けて、具体的な品ぞろえが提案できています。客数がコロナ禍前の8掛けなのに、売上高は伸びていて、つまり根強いファンがたくさん買っているということだな、と。
益成:コミュニケーションのデジタル化も進んでいますよね。
林:顧客とLINEなどで気軽にやりとりしていますし、バイヤーもMDもSNSで情報収集しています。さらに自らもSNSで発信して、フォロワーとコミュニケーションしつつ、伊勢丹のファンを作っています。休業を強いられたコロナ禍で始めたことが、まさに花開いています。
益成:私が感心したのは、いろんな部署が連携し、情報共有して、助け合いながら、サービスを提供しているところです。百貨店は縦割り型の組織になりがちですが、伊勢丹では横のつながりを感じました。風通しがいい雰囲気で、若い人が楽しそうに、生き生きと仕事しています。そうして、顧客の要望に応えているから、客単価が上がるんだなと納得しました。
林:昔から人材輩出会社で、エルメスジャポンの有賀昌男社長など、優秀なOBがいろんなところで活躍しています。もともと神田で創業の呉服屋が、新宿に移ってきて、駅から遠いという逆境をバネにして、いかに売るかを考えながら成長してきた歴史があります。「富裕層の消費の殿堂」へとシフトして、向かうところ敵ナシですね。8月31日に池袋西武のストライキを取材しましたが、かつては中間層のための百貨店として全国1位だった百貨店の苦境と、翌日に年間一番の売り上げを作る外商顧客イベント「丹青会」を店舗で開催していた伊勢丹新宿本店のコントラストがあまりに強く、時代の変化を感じました。