PROFILE: ステファニー・リナーツ=アンダーアーマー社長兼CEO
失速しての赤字転落から再建にメドがついた「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」では、今年2月にパトリック・フリスク(Patrik Frisk)前社長兼最高経営責任者(CEO)からバトンを受け取ったステファニー・リナーツ(Stephanie Linnartz)CEOの改革が始まった。9月にはデザイナーのジョン・バルベイトス(John Varvatos)がチーフ・デザイン・オフィサー(CDO)に就任してデザインスタジオを統括するほか、アパレル、フットウエア、アクセサリーなど全カテゴリーのデザインの監修をスタート。バルベイトスCDOの起用でウィメンズ市場の拡大を狙う。米「WWD」が、前職は大手ホテルチェーン米マリオット・インターナショナルの社長というリナーツCEOを直撃。リナーツCEOが、ホテルとスポーツウエアブランドの共通点を語った。
リナーツCEOは、「参画した当時、マリオットはまだまだ小さな会社だったけれど、今は世界有数のホスピタリティー企業。もう十分に成長し、私も達成感を味わった。一方『アンダーアーマー』は企業規模に対して消費者の認知度が高く、可能性は大きい。新しい挑戦を探していたときに出合い、運命に導かれた。業種は全然違うけれど、マリオットも『アンダーアーマー』も、消費者に支持されることが大事。商品と同時に、ブランドへの愛を育みたい。例えば、『ザ・リッツ・カールトンよりも、フォーシーズンズ ホテルが好き』という人だっているはず。私たちだって『ナイキ』などのブランドに負けないはずだ」と話す。
「ナイキ(NIKE)」と張り合うため、あらゆるところにメスを入れるつもりだ。「マリオットでは、商品やマーケティング、流通、人材、そして風土がブランドを作ると学んだ。その学びを『アンダーアーマー』でも生かしたい。前職ではトラベルブロガーや旅行雑誌と仕事をして、これからは(バスケットボール選手の)ステフィン・カリー(Stephen Curry)と仕事をする。もちろん、相違点は多いけれど、共通点もあるはず」という。「アンダーアーマー」は長らく、試合に臨むアスリートの情熱や覚悟を捉えた映像や写真で人々をインスパイアしてきた。リナーツCEOは、「旅行の世界だって近年はデジタルコンテンツで人々をインスパイアして、『五つ星ホテルに泊まりたい』というモチベーションをかき立てている。これもまた細部は違うけれど、『アンダーアーマー』の歴史的な映像や写真コンテンツとかけ離れているとは思わない」と、大きく変わる仕事にもあくまで前向きだ。
リナーツCEOは現職に就任すると経営陣を刷新し、「アンダーアーマー」ブランドの認知度のさらなる拡大と、商品のデザイン性アップを通して、米国事業のブーストを図りつつ、海外市場においては現在の好調を維持したい考えだ。人事面における刷新の1つは、バルベイトスCDOの起用。バルベイトスCDOは今春からコンサルタントとして、「アンダーアーマー」に参画しているという。これはケビン・プランク創業者と意気投合したことによるものだ。リナーツCEOは、プランク創業者から、バルベイトスCDOの参画はブランドのライフスタイル化に寄与するとの説得を受け、納得しての起用となった。現在は、「デザインに注力し、より時流を鑑みたフィットでパフォーマンスウエアを提供するには、新たな才能が必要。マリオットだって最上位ホテルの『エディション』のオープンに際しては、ブティックホテルの創始者と言われるイアン・シュレーガー(Ian Schrager)と協業した。協業を始めた時、マリオットにとってイアンは雲の上のような存在だった。バルベイトスCDOは、まさに『アンダーアーマー』にとってのイアン。不思議に思う人もいるかもしれない。でも、きっとすてきな関係性が築ける」とまで語るほどだ。
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