ゲス(GUESS)の創業者の1人、モーリス・マルシアーノ(Maurice Marciano、74歳)が取締役を退任した。ゲスは、1981年にマルシアーノ4兄弟が創業。モーリスの引退で兄弟のうち現役なのはチーフ・クリエイティブ・ディレクターのポール・マルシアーノ(Paul Marciano、71歳)のみとなる。
今回退任したモーリスは、1993年から2007年まで同社の最高経営責任者(CEO)を務めてきた人物。20年に自転車事故で重傷を負い、話すこともままならなくなった。厳しいリハビリと治療のため、当時は取締役会の非常勤会長を退いたが、取締役会に残った。
創業当時から会社を率いていたジョルジュ・マルシアーノ(Georges Marciano、76歳)は、1990年代前半に退社した。その際に株式の40%を2億2000万ドル(約327億円)で売却した。ジョルジュはそれを商業用不動産の投資や美術品や車、宝石の収集に使用し、かつては5億ドル(約745億円)ともいわれる資産を築いた。さらに、2007年にうずらの卵ほどの大きさの84カラットのダイヤモンドを投資目的で1600万ドル(約23億8400万円)で購入したことでも知られている。
しかし、その直後、ジョルジュが数人の従業員を窃盗で訴えたことから事態は悪化。訴えられた従業員らは反訴し、09年には従業員らに対して数億ドルの損害賠償を支払うよう命じる判決が出て敗訴し、強制破産に追い込まれた。
アルマンド・マルシアーノ(Armand Marciano、78歳)は、02年に株式の15%を売却。ロサンゼルスの服飾界の第一人者アレン・シュワルツ(Allen Schwartz)と手を組み、ワーナコ・グループ(WARNACO GROUP)から「ABS・バイ・アレン・シュワルツ(ABS by Allen Schwartz)を買い戻した。アルマンドは約10年前にABSを去った。
現在もゲスに在籍しているポールは、4兄弟の中でも物議を醸す人物だ。かつては同社のエグゼクティブ・チェアマン兼チーフ・クリエイティブ・オフィサー(COO)を務めていたポールは、過去に何度もセクシャルハラスメントで告発されており、18年には女優のケイト・アプトン(Kate Upton)も自身のSNSで糾弾。当時、セクハラを受けたと訴えた5人の人物に対してゲスは計50万ドル(約7450万円)の和解金を支払っている。こうした騒動の責任を取る形でポールはエグゼクティブ・チェアマンとCOO職を辞任する予定だったが、19年にはCOO職に留任することが明らかとなり、話題となった。数年前に広告キャンペーンの制作時に起用したモデル数人からセクハラで告発された件について、ゲスはポールのモデルに対するハラスメントを見て見ぬふりをしたことについて提訴されていたが、これを解決するために3000万ドル(約44億7000万円)の和解に合意している。