香港で「深圳反向代購」(深圳での逆方向の代理購入)が人気になっているという。
もともと「代購」は中国本土の人々の十八番。今では企業による取り組みが主流となっている越境ECも、もともとは中国国外在住の華人華僑に依頼して商品を送ってもらう個人輸入代行から始まった。「買い物天国」香港は主要な購入先の一つで、税金の安さからブランド品など他国よりも安いことが多いのが魅力だった。また、中国本土に隣接している立地を生かした「香港ルート」という密輸経路も有名だ。車や船で運び込むものから、個人がトランクに詰めて運ぶという原始的な手法まで多種多様なものがあった。
こうした伝統的な「代購」とは逆に、中国本土の深圳から香港に品物が持ち込まれるのが「反向代購」だ。香港メディアの報道によると、中国のソーシャルメディア「小紅書(RED)」やフリマアプリの「Carousell(カルーセル)」が取引の場となっているという。検索してみると、確かに「代購引き受けます」というアカウントがぞろぞろでてくる。串焼きや烤魚(魚と野菜を辛いタレで煮込んだ、近年人気の料理)、ミルクティーなど飲食系のデリバリーが中心で、朝頼むと夕方には香港の地下鉄駅で引き渡しという条件が多い。だいたい2割ぐらいの手数料が相場のようだ。
飲食以外ではサムズクラブでの代理購入もあった。サムズクラブはウォルマート傘下の会員制スーパーで、今、中国本土で爆発的な人気がある。今年6月に深圳旗艦店がオープンし、大人気だという。日本でもコストコ代理購入を仕事にしている人はいるが、中国のサムズクラブ代理購入はそれ以上にホット。「月収10万元(約200万円)稼いだ人も」などとの噂話が飛び交う。中国本土に住む私の義母もすっかりはまってしまい、ちょくちょくサムズクラブの品を買っているらしい。このトレンドが香港にも広がっていたわけだ。
さて、「反向代購」ビジネスにたずさわっているのは個人が中心だ。毎日、深圳・香港を往復しているという“プロ”の運び手もいれば、深圳に遊びに行ったついでにおこづかい稼ぎとして他人の買い物を引き受けるというアルバイトも多いようだ。
このアルバイトが相当数いるようだ。というのも、最近では日帰りで深圳に遊びに行く香港人が爆発的に増加しており、「北上熱」(北上ブーム)という言葉まで生まれているほど。どれほどの規模なのか、正確な統計はないが、推計してみよう。
香港入境處の統計を見ると、毎日20~30万人の香港人が中国本土に入境している。通勤や通学で毎日ボーダーを超えている人が多いのでこのすべてが遊びに行っているわけではない。統計を見ると、深圳とのボーダーを超えている人数は今春から1日平均で5万人ほど増加している。この増加分が「代購」の運び手と遊びに行く人ということなのだろうか。
香港人は深圳のどこに行っているのか?
では、香港の人々は深圳のどこで遊んでいるのか?香港メディアの報道によると、一番人気はショッピングモールだという。買い物と食事を楽しむのが目的なのだとか。
10月初頭に深圳を訪問する機会があったので、人気ショッピングモールの「皇庭広場」を訪問してきた。深圳の中心地、福田区の一等地に立地する大型商業施設だ。国慶節休暇ということもあってすごい人出だった。
ただ、香港の人の割合がどれほどなのかはなかなか判別がつかない。一昔前ならば着ている服装の野暮ったさや話し方で見分けがついたのだが、今の深圳の若者たちはどんどん洗練されてきている。外見でわかるのは私の格好が一番ダサいということぐらいだろうか。それでもあちらこちらから広東語の会話が聞こえてくる。やはり、それなりの数の香港の人がいるようだ。
それにしても、香港から中国本土にショッピングを楽しみに来るようになるとは。もともと深圳は、工場と怪しげな卸売市場が集まるばかりのビジネス一辺倒の街だった。それが2010年代から急激に消費方向での発展が進み、高級商業施設が続々と作られるようになった。今ほどのブームではないにせよ、コロナ以前から娯楽のために深圳を訪れる香港の人は増えつつあった。
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