PROFILE: マーティ・ポンフレー/パタゴニア日本支社長
社員への目的意識の共有に頭を抱える企業は多いのではないだろうか。前提として、パーパスを明確化することが大切だが、その後のフォローも極めて重要になる。パーパス経営で知られるパタゴニア(PATAGONIA)は社内の意識醸成をどのように行っているのか。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)=パタゴニア日本支社長に聞く。
WWD:スタッフ間での目的意識の共有や仲間意識の醸成をどのように行っているか。
マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、マーティ):年に5回、全スタッフが集まるタウンホールミーティング(経営陣と従業員との対話の場)を開催し、会社の方向性から環境問題、楽しい出来ごとまで、さまざまな情報を共有している。毎月1回、各部門のディレクターやマネージャーを交えたミーティングを行い、リアルタイムな情報を入手し、その声を直接聞いている。
加えて、スタッフ同士が絆を深める環境を作りたいという思いから、さまざまなオフサイト・イベントを開催している。社員が率先して企画し、社員とその家族がロッククライミングを学ぶ日を設けたり、サーフィンやトレイルランに出かける日を設けたりしている。また、さまざまな環境保護活動のボランティア・セッションに一緒に参加している。 加えて社員とゲストがそれぞれの興味や専門分野に関する情報を共有する会も開催している。
WWD:個人的に行っていることは?
マーティ:会社が提供するオーガニックランチを楽しんでいる。スタッフに混じってカジュアルな会話をする機会を得ることができるから。パタゴニアに入社した理由のひとつに、個人対個人のコミュニケーション文化があることが挙げられる。コロナ禍を経て、改めて日本でビジネスを成功させるためには、直接会って一緒に仕事をすることが大切だと感じている。信頼関係を築く唯一の方法は話を聞くこと。そして話している人が尊重されていると感じることも大切だ。信頼を築くには時間がかかる。相手に真の敬意を示し、相手の話を聞く時間を取ることから始まる。
私は上下関係にはまったく興味がない。私が受ける最良のアドバイスは、小売店、カスタマーサービス、修理など、会社の最前線にいる人々からであることが多いから。顧客と直接つながっているスタッフからのフィードバックは、どの取り組みがうまくいったかだけでなく、何がうまくいかなかったか、何を調整する必要があるかを気づかせてくれる。リーダーとして、私はフィードバックを受け入れる姿勢を持ち続けなければならないし、そのフィードバックが批判的で聞きにくいものである場合はなおさらだ。私は、直面している問題やお客さまとのエピソードを知るために、ときどきカスタマーサービス・エリアに座って仕事をすることがある。同じ理由から、できるだけ多くの時間を費やし店舗や修理センターに立ち寄るようにしている。