PROFILE: 藤原ヒロシ/「フラグメント デザイン」主宰、音楽プロデューサー
ファッションやビューティ業界人にとって、スノースポーツ愛好者として真っ先に思い浮かぶ人物の1人が「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」主宰の藤原ヒロシだろう。カルチャーとして黎明期だった1990年代にスノーボードを始め、以来30年間、1シーズンも欠かすことなく滑っているという。「バートン(BURTON)」創業者のジェイク・バートン・カーペンターとの交流や同ブランドとのコラボレーションでも知られるほか、今冬は「マムート(MAMMUT)」と組んで雪山で使う雪崩ビーコンもデザインした。藤原にスノーボードの楽しみ方や、「バートン」「マムート」との取り組みなどについて聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2023年12月4日号からの抜粋です)
WWD:スノーボードの名作ビデオ「ROADKILL」をきっかに、1993年ごろスノーボードを始めたと聞きました。それから30年、一度も離れたことはない?
藤原ヒロシ(以下、藤原):確かにもう30年もたったんですね。バックカントリーやるようになってからは毎年滑っていますし、その前もだから、一度も離れたことはないです。
WWD:いつもはどこの山にどんなメンバーと行くことが多いですか?
藤原:妙高(新潟)や関温泉(新潟)、八甲田(青森)といったエリアが多いです。光ヶ原(新潟)にも年に1、2回。大体いつも同じようなメンバーで行きます。一緒に仕事をしている仲間で、スキーヤー2人とスノーボーダー2人の混合チーム。
WWD:ヒロシさんといえばバックカントリーのイメージが強いです。始めたのはいつごろですか?
藤原:スノーボードを始めて3年後くらいですかね。当時はスノーボードブームの真っ只中で、今みたいにパークやレールが整備されていたわけではありませんでした。ゲレンデを滑っていたけれど、だんだんと「これは飽きてくるかも」と思っていたんです。そんな時、「バートン」のウエくん(植村能成)とナルくん(吉村成史)と出会って一緒に滑るようになって、関温泉でバックカントリーにも連れて行ってもらいました。そこからハマりましたね。視野が広がって、急に楽しくなった。
WWD:ハマり続けているその魅力は何でしょうか?
藤原:何でしょう。静けさだったり空気だったり。雪山の中は異空間ですし、その場だから味わえるような没入感はありますね。多分、ダイビングで海の底に入るのと同じような、大きく言えば月にいく前澤(友作)くんとも同じかもしれない。前澤くんの貧困版みたいな?富裕層は月に行き、貧困層は裏山を歩いて登るという(笑)。
WWD:雪山でも十分お金はかかります(笑)。バックカントリー滑走は近年挑戦する人も増えている一方で、遭難や雪崩に巻き込まれるといったニュースも目立ち、厳しい意見が出ることもあります。
藤原:生きていればどこであれ危険ははらんでいるものなので、僕は普通に生活しているのとあまり変わらないんじゃないかなと思っています。雪山であっても、普段自分が歩けると思う道を歩くのと同じで、あえてすごく危険な場所に行っているわけではありません。バックカントリーを始めたばかりだと分からないこともあるだろうけど、ちょっとやっている人なら、「ここは雪崩れそうだからやめよう」とか、そういう感覚はあるじゃないですか。経験しながらそれを分かっていくものなんですけどね。
ビーコンは「顧問弁護士のようなもの」
WWD:11月には「マムート」と「フラグメント デザイン」でコラボレーションした雪崩ビーコンを発売しました。このコラボは、「必ずビーコンを身に付けて山に入るように」といった啓もうの意味もあるんでしょうか?
藤原:いえ、それはないです。単純にプロダクトとして好きで、ここ数年雪山で「マムート」のビーコンを使っていました。今回友人を通して作るチャンスがあったのでやらせてもらったという経緯です。でも、遭難や雪崩のニュースを聞いて、ビーコンを持とうと意識する人は増えているかもしれませんね。
WWD:「フラグメント」とのコラボがきっかけでビーコンを知り、雪山で持つようになる人もいるんじゃないですか?
藤原:それもあるかもしれない。
WWD:ヒロシさん自身は実際に雪山で危険な目に遭ったことはありますか?
藤原:僕は本当にビーコンが必要となる場面に遭遇したことは一度もないんです。講習やテストで触ってはいますが、友人が雪崩に巻き込まれたこともなければ、自分が埋まってしまったこともない。ただ、世の中にはビーコンがあって助かった人はもちろんいます。僕にとっては、ビーコンは(契約はしていても実際に世話になる機会は少ない)顧問弁護士のようなもの。山へ行く際はもちろん毎回身に付けています。
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