「フィガロ(FIGARO)」をはじめとする数多くのファッション誌やセレブリティを20年以上にわたり手掛けているメイクアップアーティストの守本理恵さん。現在は、拠点を沖縄に移し、自然派ブランド「ネイチャー プランツ スキンケア」を主宰。「スキンケアは肌の食事」というコンセプトのもと、生命力の溢れる県産素材を中心に、日々、化粧品の研究開発に勤しんでいる。
そもそも守本さんが沖縄に移住したきっかけは2011年に発生した東日本大震災だった。「当時、1歳の長男を抱えていて、周囲から小さな子どもがいるなら、なるべく遠くへ避難したほうがいい、と言われていました。ただ、私も東京で仕事を抱えていたのでなかなか決断ができないなか、主人の勧めもあり、ひとまず短期間で沖縄を訪れてみました」。
すると、守本さんに心境の変化が訪れる。「沖縄滞在では自然にすごく癒やされる経験ができて。しかも、ここでは自然豊かな暮らしが根付いていると思い、子どもを育てるなら、自然の中で学ばせたいと思ったこともあり、沖縄に移住することを決めました」。
初めての移住先は本島南部の南城市。那覇から車で30分ほどの場所だが、サトウキビ畑や民家が並び、沖縄ならではの牧歌的な光景が広がるエリアだ。「近所には農家さんもいて、自然栽培のアロエやハーブを栽培していたり、薬草を使って自然療法を実践していたりと、そんな話を聞けば聞くほど、もっと自然ことを知りたいと思いました。仕事ではナチュラルコスメを活用していましたが、実は“自然”のことを全然知らなかったと思い。それをきっかけに、野草や自然農法の勉強会に参加したり、手作りコスメのプロフェッショナルコ-スを受講したりと、もともとのめり込みやすい性格も相まって、集中して勉強しましたね」。
そして、その知識が自身のブランドを立ち上げるうえでの“素地”となる。「たとえば、“月桃と長命草(ボタンボウフウ)のマッサージオイル”は、沖縄に自生していて、かつ古くからデトックスや抗酸化作用のある薬草として使われていた月桃と長命草を使用しました。ハーブのエネルギーが最も高くなる満月の日の朝に私が手摘みして、その生葉をオイルに付け込んでいます。沖縄の大地のエネルギーを感じていただけるオイルに仕上げました」。
手作りコスメが評判を呼ぶ
このような手作り感覚で作ったコスメを友人に使ってもらったところ、たちまち評判を呼び、「ぜひ商品化してほしい」という声が殺到。その多くの声に後押しされて、2016年にスキンケアブランド「ネイチャー プランツ スキンケア」を立ち上げた。
化粧品開発をはじめて以来、沖縄では不思議な縁に恵まれることが多く、それがきっかけで新作のスキンケアが誕生するのも面白い、と守本さんは話す。“リップバームスティック”も、カフェでたまたま会った生産者との出会いが開発にいたったきっかけ。
「乾燥する冬に向けて、ミツロウを使ったリップバームを作りたいと思っていて。そんな話を首里(那覇市)のカフェで友人に話していたら、そのカフェにハチミツを卸している養蜂家の方がいらっしゃったのです! そこで、こんなチャンスはないと思い、リップバームの話をしたところ、話がとんとん拍子で進みまして(笑)。その結果、ミツロウの中でも不純物が少なく、とても希少なミツロウの蓋、蜜蓋(みつぶた)を素材として提供してくださることになり。それをきっかけに開発が急ピッチで進み、保湿力に優れたサチャインオイルやモリンガオイルをたっぷりと配合したリップバームスティックが完成しました。この時も、沖縄は本当に不思議なつながりがある、と改めて感謝しました」。
販売チャネルを広げたいという思いの一方で、原料に限りがあることや手づくりであることから大量生産が難しいというハードルも。「こうして農家や生者の方とのご縁を大切にしながら、一つひとつコスメを作っているので、生産できる商品数には限界があります。ただ、いまは数を増やすよりも、必要な人のもとへ届けたいという気持ちのほうが強い。沖縄の大自然の力は本当に偉大だし、本物の地球を見せてくれていると感じています。この自然の素晴らしさをスキンケアに込めているので、“自然のまま”の気持ちよさをぜひ感じてほしいと願っています」。