INFASパブリケーションズは12月11日、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」を東京ポートシティ竹芝ポートホールで開催した。4回目を迎えた今回の開幕を飾ったのは、パタゴニア(PATAGONIA)のマーク・リトル(Mark Little)=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクターだ。この日のためにアメリカから来日し、「環境危機下で製品をデザインするときに必要な視点とは何か?」をテーマに、「地球に責任を持つデザインをするときに必要な視点」「製品を作る意義」「チームメンバーとの価値観共有と評価法」について自身の経験を交えて語った。(この記事はから抜粋・加筆しています)
(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。)
向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):まず、マークさん自身にキャリアについて教えてください。
マーク・リトル=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクター(以下、マーク):パタゴニアに入社して約12年、アパレル産業には24年近くいます。カナダで生まれ、10歳のときにアメリカに移住しました。カナダは私のアウトドアへの愛と情熱が生まれ、育まれた場所です。
私とパタゴニアとの歩みのきっかけはユーザーの一人だったこと、そして次世代のためにできることをしたいという思いから始まりました。
アパレル産業でのキャリアは2000年代、「アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)」の絶頂期に始まりました。そこで製品作りについて多くを学び、また、世界中の製産工場や紡績工場などに行き、製品作りのダークサイドを見ることになりました。その後、いくつかのファストファッションブランドで働き、製品の使い捨てや質の悪い製品を目の当たりにするようになり、最終的にパタゴニアで仲間を見つけることができ、地球へ情熱を捧げています。
資本主義や製造業、特に採掘資本主義がいかに気候変動危機に影響を及ぼしていて、パタゴニアがそれに対してどのように取り組んでいるかいう話をする前に、原点が非常に大切なので、パタゴニアの歴史を話そうと思います。
パーパス「故郷である地球を救う」が生まれた背景
マーク:私たちの掲げる「故郷である地球を救う」というミッションステートメントは決してマーケティングキャンペーンではなく、パタゴニアというブランドが紡いできた歴史に深く根ざしており、その歴史は1974年にイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard )が会社を立ち上げたときまでさかのぼります。イヴォンは1970年代前半にビジネスを始めましたが、彼は、いやいやビジネスマンになったと公言しています。彼は、ビジネスマンになるためにパタゴニアを始めたのではないのです。
イヴォンもカナダのケベック州の生まれで、幼少期にアメリカ・ニューイングランド地方のメイン州へと家族で移住し、一家は羊毛紡績工場で働きだしました。メイン州での生活では、素晴らしい森林で多くの時間を過ごし、そこからアウトドアに対する情熱が生まれました。特に魚釣りにのめり込んでいきました。
WWD:パタゴニアはガレージから始まったんですか?このガレージの写真、いいですね。
マーク:これは悪名高きブリキ小屋、ティンシェッドです。この小屋こそが、のちのちイヴォンが登山用器具を作り始めるきっかけになった場所です。しかしその前に、彼の冒険好きな母親は、一家に、メインからカリフォルニアへ移ろうと説得し、イヴォンの父親が喘息を患っていたこともあり、カリフォルニアへの移住を決めます。
カリフォルニアへの旅路で、彼らは空腹の女性と子どもたちと出会いました。イヴォンの母親はこの旅に向けてたくさんの食物を準備していたので、彼女たちに食物を与えました。イヴォンにとって初めての慈善活動の経験です。この慈善経験こそが、パタゴニアの歴史の中でも重大な瞬間の一つです。
カリフォルニアでの生活でイヴォンは言葉と文化背景の違いから、多くの時間を山で小川を探したり、海に行ったりと、一人で過ごすことになりますが、高校時代に鷹狩りクラブに入部します。クラブでは鷲や鷹の訓練をする訳ですが、最終的には、カリフォルニア州で最初の鷹狩り規定の制定に一役買うこととなります。イヴォンがこの先どんな道のりをたどるのかが見えて来たでしょう?
鷹狩りクラブにいる間、イヴォンは鷹を寄せ付けずに鷹の巣に辿り着く方法を見つけました。ある日、彼がいつものように鷹を追い払っていると、シエラ・クラブ(サンフランシスコに本部を置くアメリカの環境保護団体で、アメリカの50州に支部がある)の人々に会いました。彼らはイヴォンにいくつかの登山のアドバイスを与えてくれました。そしてこの鷹狩りクラブで技を磨く中で、登山に対する愛情が育まれていきました。
イヴォンは、夏はヨセミテやワイオミングなどを歩いて回り魚釣りを、冬にはメキシコでサーフィンをしました。こうしたイヴォンの行動から、彼のアウトドアに対する深い愛情を感じていただけると思います。
その後イヴォンは鍛冶屋になる方法を独学で学びますが、これがイヴォンの方向性を大きく変えるきっかけになりました。鍛冶を学ぶことで、製品に対する熱意が芽生えました。イヴォンはパタゴニアを、登山用アパレルとしてスタートしたのではなく、登山用器具のベンチャービジネスとしてスタートしたのです。理由は、彼が納得できる上質な登山器具が見当たらなかったから。彼はピトンを自分の車のトランクで地道に販売し、そこで得た利益を登山とサーフィンを楽しむことに注ぎました。
そのうちに需要が増え、イヴォンはピトンの生産を続けて行くのですが、このタイミングで、イヴォンは品質にこだわるようになります。これがパタゴニアの歴史のキーポイント、その2です。パタゴニアが創業から“高品質が全て”とこだわり続けるきっかけです。なぜならアウトドアでは、質の悪いものは死を意味するからです。
のちにイヴォンは、彼の作る登山用器具が岸壁と環境にダメージを与えているということに気付きます。これがきっかけとなり、シュイナード・イクイップメントは、新しい形状による安全確保と、よりサステナブルな製品作りへと導かれます。私たちが“製品が環境に与える影響”を理解し取り組む最初のきっかけになりました。さらに、カタログで“クリーンクライミング”という環境エッセイを掲載することになりました。この一件こそが、環境問題への取り組みの大きな第一歩になりました。パタゴニアの歴史において、非常に辛い時代でした。
「私たちの行動自体が環境の一部であること」を学ぶ
イヴォンはまた、現在パタゴニア本社のあるべンチュラで自分自身の活動を続ける中“アクティビズム”の機会を見出しました。そんな時に周辺環境に多大な影響を及ぼすべンチュラ川の転流工事が行われると聞き、イヴォンは市役所に転流反対を訴えに行きました。これはイヴォンと会社にとっての初のアクティビズムでしたが、この行動のおかげでべンチュラ川の転流工事は取りやめとなり、「1% for the planet」(収益の1%を地球のために)というプログラムを始める着想源にもなりました。パタゴニアが「アクティビズム」「品質」「環境へのインパクトについてこだわり続けている」という3点を知っていただくためにお話しました。その後アパレル分野に進出し、「シュイナード・イクイップメント」から登山用アパレルの会社になりました。
私たちは製品を生産する中で、気候に及ぼす影響の大きさを知り始め、製品作りの方向性を大きく変えることになります。私たちの行動自体が環境の一部であるということを学び、地球温暖化と生態系の破壊の規模について知り、それに対して私たちがどう貢献できるかを確かめていきます。私たちは企業として、真剣かつ献身的にビジネスのあり方を変えるつもりで挑みました。自社製品を、より害の少ない材料を用いて生産し、収益の1%を地球を守るための活動に寄付し始めました。そして、パタゴニアはカリフォルニア州初のベネフィットコーポレーションになります。
近年では、パタゴニアはミッションステートメントを、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」、と改訂したことはみなさんもご存知のことと思います。これは、デザイナー、生産プロセス担当、経理担当……、会社のどの部署で働いているかに関わらず、パタゴニア社全体の意思決定の指針となります。私たちが毎日目を向け、どのようにビジネスに取り組むのかを定めた指標なのです。
「メーカーとして故郷の地球を救う」意味
WWD:その辺りはこの後さらに掘り下げさせていただきます。
マーク:以前のミッションステートメント「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」では十分ではありませんでした。私たちは、アクティビストをサポートするだけの企業から、アクティビスト主導の企業へと倍増し、進化したかったのです。これが、製造と資本主義におけるパタゴニアの役割、そして「地球を救うためにビジネスを営む」という私たちのビジネスの柱に繋がって行く訳ですが、では、これは何を意味するのでしょうか?「メーカーとして故郷の地球を救う」とはどういう意味でしょうか?
私たちは、気候変動が私たちの生活を脅かしていることを理解しています。私たちは、世界規模の採取主義的な経済がこの危機の根本原因であることを理解しています。私たちは、消費主義が環境破壊の原動力になっていることも理解しています。私たちはパタゴニアがこの問題に関与していることを自認しています。
したがって、パタゴニアの次の段階のアクションは、「不必要な危害を誰にも加えないこと」から、「”危害を加えないこと”以上の努力をすること」になりました。私たちは、たとえ資本主義経済の中であっても、商品消費型のビジネスが広義において非採取主義的になれる可能性があることを証明するために取り組んでいます。
WWD:ルーツが大切であると杭が打たれました。売れていたピトンが環境に影響を与えていたと理由から売るのをやめたのは、相当勇気が必要な判断でしたよね?
マーク:ええ、流れのままに進むということです。イヴォンとチームメンバーが持っていたリーダーシップと先見の明の結果であり、彼らは製品製造が引き起こす影響を理解していました。登山用品は生死が関わりますので、品質が最重要だったことは明らかです。
より大切なポイントは、シュイナード・イクイップメントの初期の頃からずっと、ビジネスの優先事項は製品の品質より何よりも生産している商品が環境に及ぼす影響について考えることで、それが私たちパタゴニア気質の基盤であり、ビジネスを始めた日からずっと変わらないということです。
イヴォンは誰が働くとかそういったことは全く気にしていないのです。彼が気にかけているのは正しい行いをすること。繰り返しになりますが、彼がビジネスをするのはお金を得るためではなく、登山とサーフィンにはまったからです。
新しい資本主義を体現するための新体制発表から変わったこと
WWD:上手く行くかどうかは分からなかったけれど、「正しいことをしたい」と思った。今日の名言を胸に刻みましょう。今日は3つのテーマについてお話いただきます。1つ目はパタゴニアが目指す新しい資本主義と新体制での製品作り、2つ目は製品を作る意義、3つ目はチームメンバーとの価値観共有と評価法です。まず1つ目の「地球が唯一の株主になる」と聞いた時、マークさんはどう受け止めましたか?
マーク:衝撃を受けました。昨日のことのように覚えています。私たちは全員“キャンパス”(パタゴニア本社)に集合しました。パンデミックが明けたばかりの頃で、数年ぶりに全員が直接顔を合わせたタイミングでした。そして、誰も発表の内容を知りませんでした。元 CEO の皆さんを含む初期メンバーが姿を現し始め、どうやら何か大きなことが起こっていると、とても興奮しました。新体制発表のタイミングは、私たちの創立50周年でもありました。ちょうど次の50年を視野に入れ23年秋コレクションに取りかかり始めた非常に意味のあるタイミングでした。「最初の50年間で学んだことは何か」「継続したい物は何か」そして「やめたいことは何か」について熟考しながら次のチャプターに進みたいと考えました。そしてイヴォンとシュイナード家の決断は次の 50 年に向けた大胆なアプローチ方法であると感じました。
株式譲渡について最も意義深い点は、会社を地球に委ねるという点です。地球は厳しい上司です。母なる地球、彼女と一緒に働くのは本当に難しいです。私が“キャンパス”を歩き回ると木々に怒鳴られたり、風に飛ばされた葉っぱが私に当たったり、地球はイヴォンよりもさらに働くのが難しい相手です。
イヴォンとシュイナード家はオーナーシップを 2つの組織に譲渡しました。そして重要なことを言及させていただきますと、私たちは「1% for the Planet」を通して、常に収益の 1% を寄付し続けてきました。私たちは気候危機において十分な推進力を発揮できていないと感じていました。これらを深慮した結果、2つの組織を新たに設立し地球を唯一の株主として据えたわけですが、これはビジネスに再投資されなかった全ての利益が地球に分配されるということを意味します。これは非常に壮大な規模の話です。
自然から採った価値ある原材料、それを株主の富に変えるという今までの方法ではなく、私たちはビジネスで得られる富――つまりパタゴニアの富を、原材料の源である母なる地球の創造と保護に役立てるのです。パタゴニアは、株式公開する代わりに、パーパスを遂行した訳です。これにより、気候と生態系の危機を保護し、永久に戦うことができます。いいと思いませんか?
WWD:この新体制はモノ作りの責任者であるマークさんにとっては、地球に責任を持つ製品作りというとんでもなく大変な役割が求められている訳ですよね。製品をデザインする時に必要な視点について教えてください。
マーク:私たちの製品デザインの哲学をお伝えするのにちょうど良い前フリになりましたね!“キャンパス”の正面玄関に刻まれていて、私たちがいつも目にするものであり、そしてこの発表とともに強烈に思い起こされた言葉をご紹介します。シエラ・クラブのエグゼクティブディレクター、デイビッド・ブラウワー氏の言葉で「死んだ地球からはビジネスは生まれないです。死んだ惑星ではビジネスが成り立ちません。これらは、製品開発チームの私たちにとっては常に最優先事項です。けれど、技術的には大きなプレッシャーですよね?私たちは、矛盾するものを一切作りたくないメーカーになってしまった訳ですから。私たちは、製品作りをする時点で矛盾しているのです。
マーク:この図は「故郷である地球を救う」ために私たちが取り組んでいる事業の核心、「地球が唯一の株主である」ということを要約したものです。製品開発やその他のビジネスを行うときのアプローチについての重要な柱です。パタゴニアは地球上の生命のために従事し、自分たちが作ったもの全てを保証します。私たちは人々の情熱を功績として残します。私たちは草の根活動を支援します。私たちは衣類を修理し、再販を経て、利益を地球に還元します。
「採取主義的資本主義の製品製造・販売は正当化できない」ことを強く問い、模範となるために
WWD:分かりやすい図ですね。
マーク:私はこの図が好きで、時々カンニングペーパーとして持ち歩くこともあります(笑)。
では、この図は製品および製造面において何を意味するのでしょうか?私たちは故郷の地球を救うために製品を作っていますが、これは少し矛盾しています。なぜなら、私たちが何かを作るときは常に、何かを搾取していることになるからです。私たちがパタゴニアにいる理由は、私たちが行う全てのことで模範を示し、先頭に立つことです。私たちのパーパスは、採取主義的資本主義の製品開発と販売を営むことは、もはや正当化できないと強く問うことです。
製品開発でも、単に害を減らすだけでなく、それ以上のことを行う必要があります。パタゴニアが行うことは全て問題解決の一部であり、本質的な問題を解決することに重点を置いています。したがって私たちは最良な素材に重きを置いています。最良の素材とは、例えば、環境再生型有機農業、リサイクル合繊、廃棄された古着の活用などです。当社は優れた品質だけではなく、製品の終着点まで見据えて生産を行っています。
私はこのデザイン哲学に辿り着き、これに基づいて取り組んでいます。私たちは仕組まれた緊張の世界に住んでいます。パタゴニアは基本理念に沿わない物は何も作りたくないと考え、製品の品質保持が私たちにできる最も重要なことだと信じています。私たちはファッションのトレンドなど気にしていませんし、トレンドを追うことはパタゴニアの価値観とは異なります。
大好きな文章がひとつあります。「完璧さとは、これ以上追加するものが何もない時に達成されるのではなく、これ以上取り除く物がないときに達成されるのです」(サン=テグジュペリ)。これは私たちの製品作りへのアプローチにも当てはまるもので、より少ないリソースでより多くのことを実現しようとするものです。私たちは、「禅」のスタイルと「シェーカースタイル」(シェーカー教徒たちのインテリアを模したシンプルかつ機能的なスタイル)のシンプルさに基づいて、必要かつ便利でなければ作らないという設計哲学のもと、日々活動しています。しかし、製品が必要な物かつ役に立つ便利な物なのであれば、ためらわずに美しく製作しようーーこれがパタゴニアの第一のルールです。
「品質とはすなわち環境問題である」、品質を重視する理由
次のトピックは「品質」です。今日の話の中で、皆さんに記憶して欲しいことがたった1つあるとすれば、この言葉に尽きます。「品質とはすなわち環境問題である」ということです。
たとえどんなに環境に配慮した材料を使用しても、使い捨て製品を製造すれば、その素材がもたらす利益を軽減してしまうことになります。ですから製品は、どのような品質であるかが重要なのです。安価な製品は祖末に作られ、すぐに捨てられてしまう。つまり人々とこの地球に多大なダメージを与えていることになります。したがって品質こそが現在パタゴニアが心底強化していることであり、活動の中核なのです。
WWD:「製品を作る意義」について。製品を通じてサプライチェーンを変革されていますが、その具体例を教えてください。
マーク:はい。私たちはこれから作る製品について考えるとき、「その製品を作ることでどのような問題を解決しようとしているのか」をしっかりと理解したうえで製作に入ります。それぞれの製品が貴重な資源を使用して作ることを熟知しているので、目的、機能性、そして長持ちすることを考え抜いてデザインをします。そうしたデザインの基礎となる品質こそが、製品寿命を高めるためのキーとなるので、先ほど品質の部分について何度もしつこくお話してしまいました。
解決すべき問題が見つかった製品は、さらに製品寿命や使用する素材など、どのようにアプローチすべきかを熟考します。耐久性と機能性、長持ちするかの3点がデシジョンツリー(決定木)を作成する際の中核になります。
これから解決すべきは「製品の終着点について考慮すること」
マーク:低品質製品の問題点は、使い捨ての観点で考えられていることです。私たちは一時的なトレンド、計画的陳腐化の道をたどっています。ファストファッション、大量消費主義――人々は過剰に生産し、不必要なものを過剰に消費しています。再生不可能な資源を使用し、有毒化学物質、環境汚染、(生産に際して)使われるエネルギーの量、水の使用などの問題があります。そしてさらなる問題は、ただ「要らなくなったから」と捨てられてしまう、使い捨て製品から発生する産業廃棄物です。製品の終着点について考慮されていない、リサイクルも堆肥化も不可能な廃棄物です。これらが解決すべき問題点です。パタゴニアがこうした問題に対して何を行っているのか、あるいはそうした問題への解決策の取り組みとして修正したキーポイントが2点あります。それは私たちと「製品」との関係性です。
1つ目は、可能な限りリサイクル原料を使用して、耐久性があり、長持ちする、高機能な製品を製造すること、2つ目は、耐用年数が終了した衣類を修理、再利用、またはリサイクルする取り組みです。製品をデザインするときに、これら2つについて考えます。独自のデザイン価値を備えた製品を生み出し、品質を重視しながら、一時的なトレンドを追うのではなく、タイムレスな製品をデザインしています。
私たちは大量消費主義について考えていますが、これがおそらく次の大きなテーマになるでしょう。ところで、パタゴニアが行った「このジャケットを買わないでください」というキャンペーンを覚えていますか?「ジャケットを買いに来ないでください」と言うのはビジネスとして少し変わっていますよね。しかし結局のところ、パタゴニアの製品作りと同じように、消費者の皆さんには「自分は本当にそれを必要としているのか?」と考えてもらいたいのです。私たちは接客で、「このジャケットがご希望ですね?承知しました、環境に配慮した最新バージョンを提供させていただきます。けれど、ちょっと立ち止まって新しく買う必要が本当にあるのかを考えてください」と言った会話を始めています。従来型の「物との関係のあり方」を変えることで、カスタマーを消費者からパタゴニアのコミュニティに取り込みつつ、行動変容を促すことができるのです。
またパタゴニアのコミュニティでは、”Need less”(新規購入を減らす)手段として、簡単かつ楽しい方法を提案したいとも考えています。そのため、デザインと製品製作チームに多目的なワードローブやレイヤリングシステム、買い換える必要のない時代を超越した製品をデザインしてもらおうと考えています。
パタゴニアが製品作りで取り組む具体的なアクション
WWD:具体的なアクションについて教えてください。
マーク:パタゴニア製品に使われている素材に対する解決策について少しお話します。パタゴニアは過去40数年にわたって、非常に堅固なSER(社会環境責任)方針を構築しました。そしてそれは、2025年に向けた当社の戦略的取り組みの一部でもあります。そのキーとなる2点は、世界中のコミュニティに投資をすることと、パタゴニアのパートナーたちを“ファミリー”の一員として真剣に考えることです。私たちにとってパートナー企業は製品の延長線上にいる人(ビジネス上だけの関係性)ではなく、“ファミリー”なのです。
そのためにパタゴニアでは25年に向け、優先材料の使用率を100%にすることを目標にしています。また一方で、化学物質の永久排除に向けても投資しています。DWR(durable water repellent/耐久撥水)は永久化学物質の一種ですから。それとは別に染色では、製品の核となるカラーバリエーションで、”エバーグリーンカラー”と呼ばれる、合成繊維向けの染料の中では環境への悪影響が非常に低い染料を、全ての色味で100%使用できるように取り組んでいます。また、残端などの布地の廃棄物でリサイクル100%を目指しており、合成繊維の 50%で二次廃棄物を使用できるように取り組んでいます。
以上がパタゴニアの推奨する環境に配慮した素材であり、社会的および環境的責任の遂行を支える柱です。これが、私たちのモノ作りにおけるアプローチ方法です。また天然繊維の使用では、革新的農業技術を使った素材、具体的には、オーガニックコットン、コットンインコンバージョン・コットン(有機栽培に変換するための、移行期間中に生産されるコットン)、そしてリジェネラティブ・オーガニックコットン(環境再生型有機農法によるROC認定コットン)を使用しています。
合成繊維の二次廃棄物活用では、パタゴニアは長年、ほとんどの製品でリサイクルポリエステルを使用してきましたが、今は次のレベルに引き上げ、指針としてきたリサイクル素材だけでなく、埋め立て地に送られる産業廃棄物や海洋廃棄物の回収・使用に乗り出そうとしているところで、これらが私たちの言う「二次廃棄物」です。
そのために次のような企業と提携しています。ナイロン素材では、廃漁網の再利用の提携をブレオ社と、ポリエステル素材ではペットボトルの活用をバイオニックと協働しています。彼らとプラスチック廃棄物を再利用するための地域廃棄物管理システムを構築しました。道路や海岸にリサイクルステーションを設置し、海岸清掃キャンペーンや地域社会への働きかけを組織化し、分別、こん包、粉砕のための集中施設や、地元企業、学校、その他の機関への回収ルートを整備しました。一旦ペットボトルが海に流れ込んでしまったら、手の施しようがないですよね?すぐさま海に沈んでしまい、利用できなくなります。そして、社会的責任の遂行が鍵となります。
リサイクルウール素材とリサイクルコットン素材は、本格的に研究を始めているもう1つの分野です。この2つの素材の素晴らしい点は、すでに色が付いているため染色する必要がないことが多く、分別プロセスが進むにつれて、埋め立て地から転用できるだけでなく、ゴミとして終わらせず、継続的な再利用が可能になるかもしれないという点です。
そして最後に、私たちは化学物質とは永遠に別れを告げます。25年までに、パタゴニア全製品でPFC(有機フッ素化合物)フリーを達成します。今後この規制がカリフォルニア州やアメリカだけではなく欧州で、そして究極的には全世界で実施されていきます。
パタゴニアのゴール達成に向けての進捗について少しだけ話します。23年の秋冬コレクションで使用素材の 91% を環境配慮素材にすると掲げた目標は無事に達成されました。25年までに、ダウンは全て責任を持って調達された物を使用します。つまり、卵に至るまでどこから来たのかを把握し、もし新たにダウンを使用する場合はその調達ルートから来るバージンダウンを使用します。実際のところ、古い掛け布団や枕などの寝具から出たリサイクルダウンを使用している場合がほとんどです。
そしてみなさんご存知のようにコットン素材では1996年以来、100%オーガニックコットンを使用しています。環境再生型有機農業やコットン・イン・コンバージョンを引き続きサポートしております。
結果的に25年までに、私たちは目標をほぼ達成しつつあることになります。そして世の常ですが、最後のほんの少しが最も困難とはなりますが、目標の 97% は達成されることになるでしょう。これは困難な課題を乗り越えたという点で、「多大なる功績」と言えるでしょう。
価値観の共有と評価法
WWD:本当に困難な道だと思います。これだけの具体的なアクションを重ねてもなお100%になり得ず、まだ3%残っているという事実に驚かされます。3つ目のテーマ「価値観の共有と評価」について、マークさんがどんなリーダーシップを発揮されているのかお聞かせください。
マーク:実際のところ、パタゴニアではとても簡単だと思います。なぜなら、パタゴニアに入社する人は皆、ミッションステートメントを信じてやって来ます。私たちにとってはこの点が唯一にして最重要な評価ポイントです。もちろん、それでも私たちはビジネスを営んでいるわけですから、目標があり、生き残るために売り上げの必要指標があります。しかし、売り上げは私たちを日々動かす原動力ではありません。パタゴニアの原動力はあくまでも「地球」なのです。そして、生きている者にとっても亡くなった者にとっても、パタゴニアに属する皆にとって大切なのは私たちのミッションステートメント「地球を救うためにビジネスを営む」というただ1点なのです。私たちは常にそれを従い自己評価をしています。自分たちがここでやるべきことは何かを理解したうえで出勤する訳ですから、非常に簡単です。スッキリ明快、目的はたった1つなのです。つまり、パタゴニア社員となったその日から、私たち全員が同じ方向を向いています。
ビジネスを通して「地球全体を救う」ために最小限の害で最高の製品を作り、他のビジネスにインスピレーションを与えるなど、どんなに大きな仕事を成し遂げたことも、原点にあるのはミッションステートメントなのです。
また、お客さまに私たちのコミュニティに参加してもらうことは、私たちの核となる価値観であり重要なことでもあります。そして私たちは可能な限り製品やクリエイションに責任を持ち、系統的かつ客観的にどのような種類の製品を作るかを見極めていきます。そしてお客さまにもそのソリューションに参加していただきたいと考えています。
「コモンスレッズ・イニシアティブ」(パタゴニア社の商品回収プログラム)は、共同的プロジェクトという点で、自分自身を称えたい取り組みのひとつです。この取り組みは再考することの大切さを改めて知る良い機会となりました。繰り返しになりますが、私たちと「物」との関係をもう一度考えてみましょう。欲しいと思う気持ちを減らし、修理・再利用・リサイクルの可能性についてもっと考えましょう。
それから、ただ消費、消費、消費と新しい物を買い続けるのではなく、ぜひ中古品を購入していただきたいです。実は、2013年のファッション・ウィーク中に(製品を長く使うためのプラットフォーム)「ウォーンウエア(WORN WEAR)」をローンチしました。「製品」との関係性を考える意味で、消費者をソリューションの一部として招待した形となったわけですから、パタゴニアのコミュニティにとって大きく評価すべきことと言えます。新しい物を買うのであれば、その製品が長く使えるかどうかを考えてください。手持ちの洋服で、どこかが破れたり、ボタンをなくしてしまった場合は、捨てたり新しい物を買わず、修理することを考えてください。私たちは、顧客が訪ねて来て修理を継続できるよう、顧客とコミュニティとの関係を築き始めています。
WWD:評価についてもう少し教えてください。何をしたら褒められるのか?何をしたら褒めるのかなど具体的なことはありますか?
マーク:利益を逃したのに賞賛されるという状況を理解するのはきっとみなさんには難しいでしょうね。この事実を正しく理解するのに苦労しているようですから。確かに、私たちはビジネスを継続できるように努力し続け、利益を上げる必要があります。しかし、です。パタゴニアでは「利益目標を達成できたこと」よりも、「フェアトレード認定工場を導入したこと」が賞賛される可能性があります。パタゴニアはそんな会社なのです。
(そのような方針でも)会社はかなりうまくいっています。私たちは、このような型破りな考え方でも利益を上げられることを50年間にわたり証明してきました。ですので、私がお薦めしたいのは、伝統的な資本主義の評価を捨て、健全なコミュニティと健全な地球について考え始めること。ビジネスにとって有益なはずです。確かに現実的には物を売ってお金を稼がなければなりませんが、実際に毎年どのくらいの成長が必要ですか?どのような品質の製品を世に出していますか?顧客との関係はいかがですか?
そしてパタゴニアは、かなりフラットな組織です。上下関係はそれほど大した問題ではありません。私たちはお互いを上司と部下として考えていません。私たちは自分たちを家族であり、ひとつの目的を持ったコミュニティであると考えて入社します。施設内に託児所を完備しておりますので、自身の子どもと一緒にランチを食べることができます。私たちはお互いの子どもたちの叔父と叔母です。そして私たちは実際に、健全なコミュニティを通して健全なビジネスを営むことが可能であることを証明しています。
WWD:羨ましいですね。大きな家族の中で仕事をしているーー今までの会社組織の考え方と異なり、そもそも会社の在り方が変わってきている中で、評価法がどうかという固定概念が当てはまらないと感じました。最後にマークさん自身の仕事のやりがいについて教えてください。
マーク:私はパタゴニアのミッションステートメントを信じていますし、登壇の機会に話してしまうと陳腐に聞こえるかもしれませんが、パタゴニアにいる全員が皆、自分たちのしていることを信じていると思います。変化を起こし、革命を起こすには、既成概念にとらわれずに考える必要があり、システムの規範を打ち破る必要があります。私たちは株の利益と成長に左右されるシステムに囚われてしまっていますから。
私が“使命を持って働いている”という事実をも超えて、いそいそと毎日仕事に熱心に取り組むのかというと、同僚たちを心から近しく思い、敬愛しているからです。私はこのチームのメンバーの一員として、社会の既存の構造を覆す役割を果たし、新しい消費方法を!と人々を教育し、揺さぶる機会を得ている訳ですが、この活動こそが、私にとって本当にエキサイティングなのです。
私は若い頃から現在に至るまで、常にちょっとしたアナーキストであったと思います。私を見てください。年を重ねてもパンクロッカーであり続けるための、正しい見本みたいでしょう?パンクロッカーであり続けることが、将来の世代にとって本当に良い利益をもたらすこと、そして、それが世界をより良い場所にすると願っています。ですから、私たちの秘伝のソース(おまじない)はいつだって常識にとらわれないこと。革命を起こすには勇気が必要ですが、どうぞ恐れないでください、私たちはそれを支援するためにここにいるのです。
WWD:ありがとうございました。では会場のみなさんから質問を受けたいと思います。
アクティビズムの役割、アプローチ法について
質問者1:私は日本人ですが、カナダに住んでいて、アメリカにも住んでいたので、すでに少し繋がりを感じています。 2016~ 20 年までニューヨーク市にいたのですが、この期間は、破壊的なアメリカの歴史を経験した瞬間だったと思います。今日のアメリカ社会の形成において、そして地球規模の環境問題全般において、アクティビズムがどのように大きな役割を果たしているかを教えてください。アクティビズムを推進することは、ある種の政党間の対立を感じることにもなると思います。アクティビズムの目的とは人々を一つの場所にまとめることにあります。例えば、本質的に対立している人や、相手を負かせられるくらいの説得力を持つ人々を、どのように予測してどのように巻き込みますか?より良い未来のために全ての人を含めるという観点で、マークさんがビジネスとどのように関わっているのかを知りたいのです。
マーク:素晴らしい質問ですが、なかなか厳しい答えになりますね。私の回答は、私たちはおそらく、歩みを進める中でナビゲートすることを同時に学んでいる、とお答えします。
結局のところ、私たちの最大のメッセージは、気候危機からしてみれば、あなたが誰であるかはどうでも良いということです。地球が滅亡したら、私たち皆いなくなってしまうのですから。では私たちが直面していることに関して、十分に破壊的なメッセージを作るにはどうしたら良いのでしょうか?
それはコミュニティから始まりますが、コミュニティ内の全ての人々をどのように教育し、影響を与えることができるのでしょうか。世界のどこに行っても同じような状況とは思います。特定の名前を挙げるのは控えますが、特に米国では、非常に異なる見解を持つ非常に異なる政党間で、多くの物議を醸す議論が行われてきました。しかし、私たちパタゴニアが学んでいることは、より保守的に票を投じたり、共和党に傾く傾向があるコミュニティだったりしても自然保護活動家がたくさんいて、アウトドア活動にも参加しているということです。
私たちにとっては、最終的には環境政策に興味があり、それが私たちの目指すところです。そして、私たちはそのメッセージができる限り包摂的であるように努めるつもりです。しかし、例えばあなたが私たちと働いていて、イヴォンが「この地球を救うことに死ぬ気で取り組んでいる」と言っているのを聞いたとして、もしもあなたがイヴォンほど真剣に問題に取り組めないのであれば、あなたに構っている時間はありません。私たちは私たちでさらに努力を続けて行くだけです。
質問者1:共通認識を持つことが鍵、と言うことでしょうか。
マーク:はい、そうです。
パタゴニアの社員になる方法
質問者2:パタゴニアの社員になるためにはどうしたら良いのですか?また、必要とされる条件はありますか?
マーク:あなたの履歴書をいただけますか?そこから始められますよ!(笑)。どういう訳か、私もここに辿り着けたのでそんなにハードルは高くないと思うのですが…。冗談はさておき、真剣にお答えいたしますと、気候危機に対するあなたの情熱、全てはそこから始まります。そしてパタゴニアのミッションステートメントを信じていて、それについて何かをしたいと考えている人が求められています。そこが始まりです。役割や資格、経験レベルによって異なりますが、私たちは常に外部から人材を迎え入れようとしています。私が会社に還元できたことは、よりトラディショナルな(経営方法の)ファッションアパレルとファストファッションでの経験でした。その経験からビジネスの汚い側面も知っていましたが、その点で変化を起こしたい、過去に習得したスキルをパタゴニアで活かしたいと思っていました。それらのスキルを良い方向でパタゴニアに上手く持ち込んで活用できたらと思っていました。
夜寝るときに鏡の中の自分を見て、「一晩で全ての問題を解決できるわけではないんだ」と思ったとしても、今は、少なくとも鏡の中の自分を(自信を持って)見ることができます。そしてチームメイトも私と同じ状況のはずで、彼らも自分と同じように地球にいいことをしようとチャレンジしているはずだ、と思えるのです。
製品作りで最も大変でチャレンジなこと
質問者3:プリファードマテリアルのお話を伺い、とんでもなく大変なことだと思いました。実際にそういった素材を、探して、見つけて、使えるかを確認して、デザインして、作って、届けて、LCAも計算して売るというサプライチェーンは大変だと思うのですが、一番大変でチャレンジングな点は何かを教えてください。
マーク:素晴らしい質問ですね。最も責任ある素材であるかを確認することが常に重要ではあるのですが、同時にそれは難しいことでもあります。繰り返しになりますが、品質について考えることで、バランスが取れるのです。
1つ簡単な例を挙げます。リサイクルコットンは、埋め立て地からのコットンを完全に転用できるので、本当に楽しみな素材です。一方で、私たちはリサイクルの過程で糸が短くなってしまうため、品質が低下することを学びました。そこで、リサイクルコットンとオーガニックコットンをブレンドして、その品質と寿命を長くする方法を学ぶことが課題になりました。社内にはこの課題に専念しているチームがあります。
ここにいるあなたにお伝えできることは、ぜひパタゴニアをリソースとして頼ってみるのはどうですかというご提案です。パタゴニアは資料を自分たちだけのために抱え込むことに興味はありません。問題の解決にならないからです。品質レベルを維持するために責任ある素材をどうやって得るかといった課題のいくつかは、私たちが長年にわたって学んできたことです。
サステナビリティを本当の意味で理解して進むために必要なこと
質問者4:パタゴニアの、地球で暮らして行くことをパーパスに掲げてモノ作りをしていることは、アパレルだけでなくモノ作りをする企業にとって目指すべきパーパスだと思うのですが、サステナビリティという言葉だけが一人歩きしている気がしています。日本の企業がパタゴニアのように本当の意味でなぜこれをやらなければならないかを理解し、進んで行くためには何を変えて行くべきだと思いますか?
マーク:リーダーシップから始まります。人々から始まります。それぞれのブランドのリーダーがすぐに態度を変えなければ、時代の声に耳を傾けなければ、消費者も従業員も他の場所に行ってしまいます。消費者は私たちブランドが「地球として向かうべき方向だ」と信じている場所に(一緒に)行きますが、それは(このままでは)あまり良い場所ではありません。
それを理解して、少しずつ変えていかなければなりません。私もかつて変化が遅かったり、ビジョンがなかったりするブランドにも所属してきました。最終的には、自分と一致する価値観を核に掲げるブランドに行かなければならないかもしれません。それが私も最終的に選んだ手段であり、そうして別の形で影響を与えました。または、自分のブランドから働きかけるか、ですね。リーダーシップから始まりますが、この考え方において進歩的なパタゴニアでも、大きな神的な変化が起こりました。
私は人々の多くが、良い方向に向かうことを望まないリーダーシップに不満を抱いていることを知っていますし、これまで話してきた多くの人々の現実でもあります。
満足してもらえる回答ではないかもしれませんが、声を上げ、内部で変化を起こそうと努力し続けることが始まりであり、最終的には、そのブランドが目指す方向性とあなたの目指す方向性が一致するかどうかの岐路に立つタイミングがやってくるでしょう。
(質問者を探している間に…)
マーク:今日ここに来てくださった皆さんは大きな一歩を踏み出した、とだけ言わせてください。そして、パタゴニアがその一歩をサポートするためにここにいることを知っておいてください。変化はごく少数の人々から始まります。少数でも、変化に参加させるべく他者に働きかけることができるのは驚異なのです。ですから自分の会社に不満がある場合は、デザインや製品に携わる人々、さらには会計に携わる人々であっても、少人数でも社内で変革を起こすことができます。これが私からみなさんへの本日の励ましの言葉です。
50年存続できた理由は「品質と透明性」
質問者5:資本主義を変えようとしている企業が資本主義社会で50年続けられた理由は何だと考えますか?
マーク:良い質問ですね。お客さまが当社の存続に投票してくれたのだと思います。私見ですが、50年も存続できたのは私たちが築き上げてきた信頼性によるものだと思います。それは、第一に品質、次に透明性です。私たちは完璧ではありません。ずっと完璧ではありません。私たちはパンデミックの間に起きた品質問題にいまだに悩まされているくらいです。
私はパタゴニアで働く以前から、顧客としてブランドを知っていました。パタゴニアが最高の製品を作っていると知っていたので、信頼していました。それが彼らに対する私の忠誠心を築いたのです。確かに値段は高かったですが、一度そのジャケットを手に入れたら(長持ちするので)、もう次のジャケットを買う必要はないとわかっていたので、お金を貯めて購入していました。それは環境に配慮した素材が使われる以前の製品です。
顧客たちは、私たちがおオフィスからお金を出して、それを地球に還元しているのを実際に見ています。50周年を迎えるにあたり、これ以上にお伝えできることはありません。 私たちは地球に会社を差し出したのですから!
WWD:以上、「環境危機化でのモノ作りとデザイナーの役割とは」を終了させていただきます。マークさん、ありがとうございました。