岡本大陸デザイナーによる「ダイリク(DAIRIKU)」は2月14日、2024-25年秋冬コレクションをファッションショー形式で発表した。会場は前シーズンに引き続き、東京・千駄ヶ谷の新国立競技場内の駐車場。むき出しの鉄製の足場をぐるりと囲んだ空間には、廃車やタイヤなどが転がり、ドラム缶からスモークが上がる。岡本デザイナーは、ハリウッド映画のようなセットに、クラシックカー2台を配した前回のショーを引き合いに出し、「その続編のような別世界を表現したかった」と意図を説明した。
映画から着想を得た服づくりを行う「ダイリク」が、今季のテーマに掲げたのは“WHO ARE YOU?”だ。岡本デザイナーは幼少期を振り返り、「親に『入ってはいけない』と言われた部屋で、『見てはいけない』と言われた映画のビデオを見ていた。知らない世界を知ってしまった自分に出会った」と、自身の経験を語った。
今シーズンの着想源は、カルト映画として今もなお根強い人気を誇る、「ファイトクラブ(Fight Club)」をはじめ、「ロッキーホラーショー(The Rocky Horror Picture Show)」「ファントム・オブ・パラダイス(Phantom of the Paradise)」「ドニー・ダーコ(Donnie Darko)」の4作品だ。ゲストにはショー開催前に、「ファイトクラブ」の有名な一節「RULE OF FIGHT CLUB(ファイトクラブのルール)」を記した紙1枚と、同作品内に登場する石鹸のキーホルダーを送った。
「観客を裏切る」ファーストルック
「ファイトクラブ」のサウンドトラックが鳴り響く中、ファーストルックのモデルがまとうのは、「ロッキーホラーショー」のフランクン・フルター博士のガウンをオマージュした「ベロア素材のロングワンピースだった。「『ファイトクラブ』かと思わせておいて、いい意味で観客を裏切りたかった」と岡本デザイナー。バックの細いリボンを結んで身に着ける後ろ開きのスタイルで、左胸には同作のモチーフであるハート&アローをスパンコールで刺しゅうした。
以降も、コレクションには映画モチーフをたっぷりと盛り込んだ。「ドニー・ダーコ」に登場する銀色のうさぎをイメージした、白うさぎの総柄ニットや、「ファントムオブパラダイス」のファントムのオールブラックなスタイリングに仮面が飛び出たバッグ、「ファイトクラブ」で喧嘩に明け暮れる登場人物を模したメイク、ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデン風のえんじ色のレザージャケット、そして「Tyler Durden」の文字が並んだプリントTシャツなど。
王道アメカジにひとひねり
個々のアイテムのベースは、「ダイリク」らしいアメカジではあるものの、ジーンズのレイヤード風パンツや、大小さまざまなポケットが複数付くワークパンツ、オールインワン仕立てのスカジャンやMA-1など、王道のアメカジを再構築する新しい試みが目立つ。アニマルプリントのフリルシャツや、トナカイや鳥などを編んだセーター、ぼかした花柄をゴブラン織りにしたジャケットやコート、バッグなど牧歌的要素を感じさせるアイテムも登場した。
フィナーレでは、岡本デザイナーは会場を全力で駆け抜けていった。ショー後の囲み取材で、「今回はセクシーな表現などに挑戦したことで、新たな自分を知れた」と振り返る。さらに、「ランウエイでルックを披露するのは、自分にとってしっくりくることで、そのための服作りはすごく楽しい。次の目標は『ファッション プライズ オブ トウキョウ(FASHION PRIZE OF TOKYO)』を獲ってパリで勝負をすること」と爽やかに意気込んだ。