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“映え”より“生々しさ”を求めるZ世代――最高執行責任者が描く、BeRealでの“リアル”なコミュニケーション

昨今、アップカミングなSNSアプリと言えば、BeReal(ビーリアル)だ。2020年にフランスで誕生して以来、22年初頭から徐々に規模が拡大している、いわば“映えない”SNSとして知られる。BeRealでは“好きな時間に、(フィルターやレタッチなどで)作り込んだ写真”は投稿できず、不定期に送られる“Time to BeReal.(BeRealの時間)”のアラートを受け取った際に、2分間以内に写真を撮影しシェアしなければならない。写真は常に無加工でスマートフォンの内カメラと外カメラの両方で同時に撮影されるため、撮影時のユーザーの表情やシチュエーションがリアルに映る上、撮り直しの回数まで表示される。過去には、出産中や交通事故直後の“BeReal”写真がXに投稿され話題になった。この“生々しさ”こそが、作り上げられた“映え”に疲弊した若者達を中心にウケているのだ。

このリアルな世界観を保つため、BeRealは次のコンセプトを掲げている。

①NO FILTERS.―フィルターなし
②NO LIKES.―いいねなし
③NO FOLLOWERS.―フォロワーなし
④NO BULLSHIT.―ハッタリなし
⑤NO ADS.―広告なし

このように、他のSNSとは全く異質なBeRealだが、アメリカでは月間ごとの新規アプリダウンロード数がインスタグラムを上回る現象も巻き起こり、現在のアクティブユーザー数は2300万人を超えた。現在、日本でも多くのリサーチ結果によりBeRealへの注目度が示され、その勢いは増すばかりだ。

そして今年2月からは著名人やブランドの公式アカウント機能も拡充した。広告機能がなく、常に“リアルであること”を求められるBeRealを、各社がプロモーションに利用する理由や、その活用方法とはーーBeReal誕生の背景を振り返りながら、最高執行責任者であるロマン・サルツマン(Romain Salzman)が質問に応じてくれた。

PROFILE: ロマン・サルツマン/BeReal最高執行責任者

ロマン・サルツマン/BeReal最高執行責任者
PROFILE: フランスの起業家であり、ライブゲームアプリ「フラッシュブレーク」の共同創設者。2014年には仏オーディオメーカー「デヴィアレ」のプロダクトマネージャーを務め、米国市場進出をサポートした

オンライン上のコミュニケーションをより健康的なものに 
BeReal開発の背景について

WWD:他のソーシャルプラットフォームと比較し、“リアル”を追求した意義とは?

ロマン・サルツマンBeReal最高執行責任者(以下、サルツマン):ソーシャルメディアは私たちのコミュニケーションの仕方を変え、その多くはポジティブな変化だったが、その変化と同時に課題も生まれた。研究によれば、多くの若者が加工され、キュレーションされたソーシャルメディアの世界の影響で不安を感じ、時にはうつを患い、自分自身や自分の人生に対して否定的になっている。私たちはオンライン上での人々のコミュニケーションをより健康的な良いものにする手助けができると信じ、使命感を感じているため、BeRealにはそのような仕組みを取り入れた。“現実”と“真実”に焦点を当てることで、ユーザーが“本当の自分”であることを受け入れ、他のソーシャルプラットフォームが抱える課題の多くを取り除いている。その結果、世界中の人々がBeRealとその使命に共感している様子を見ることができてうれしく感じている。

現在、BeRealは世界中で場所を問わず、あらゆる年齢層で共感を呼び起こしている。学校で利用する若者や、祖父母とのつながりを保つために家族が使用するケースなど、さまざまなエピソードが日々寄せられている。そして現在、私達のユーザーはアメリカ、ヨーロッパに加え、アジアでも急速に増加中だ。

私達の目標は、BeRealで過ごす時間が1日の中で最高の瞬間になるようにすること。そしてユーザーが長時間スマホを眺めて過ごすのではなく、大切な人々と実際につながり、喜びを感じるきっかけを提供したいと考えている。

WWD:そのような人達に支持されることには、どのような理由や時代背景があると考えている?

サルツマン:Z世代だけに限らず、全ての人々が自分達を取り囲む世界に対して、よりリアルな視点を求めているのだろう。メリアム・ウェブスター社が発表した23年を表す言葉は“authentic(本物、現実)”だった。これは、人間らしい経験の中で起こる複雑な感情や、素直な気持ちを、率直に分かち合いたいという人々の欲求からきているのかもしれない。中でもZ世代は他の世代とは異なり、精神的な健康を重視している。私達はこれらの欲求を受け入れ、より健康的で満足できる、本物のソーシャルメディア体験を作り出すことに取り組んでいる。

新機能が続々追加 
企業やセレブリティーの参入も

WWD:この一年プラットフォームはいかに変化したか?

サルツマン:過去1年間で、BeRealチームは大きく成長し、現在2300万人まで拡大するユーザーベースに対応するために新しい機能を追加してきた。23年初頭は20人のチームだったが、その頃すでにデイリーアクティブユーザーは2000万人を超えており、BeRealを安定的に維持するために私たちの全ての時間と専門知識を費やしてきた。そしてこの1年でさらに70人までチームを拡大し、BeRealのユーザーが好むものをより多く構築できるようになった。現在のチームには、X、メタ、スナップチャットと言った大手企業での経験を持つ素晴らしいメンバーが揃っている。彼らと共に、BeRealをさらに進化させるための新しいアプローチを日々テストし、実装している。

昨年8月からは、“BonusBeReal”(最初のアラートで時間内に投稿することで、1日のうちでさらに2回投稿できるボーナス特典)、“BTS”(投稿に至るまでの数秒間をショートビデオに収めた投稿)、“RealGroups”(友達とチャットするなど、プライベートを共有するための招待制グループ)と言ったさまざまな機能を拡充し、今年2月には新たにブランドや著名人の公式アカウント機能“RealBrands”“RealPeople”を追加した。これらの機能のうち、ファンとのコミュニケーションの中から得たリクエストやアイデアに根付いたものも存在する。

WWD:BeRealに参入する企業(RealBrands)や著名人(RealPeople)も増えているが、彼らはどのような目的を持っているのか?

サルツマン:“RealBrands(ブランドの公式アカウント)”“RealPeople(著名人の公式アカウント)”では、ブランドやセレブリティーの舞台裏を見ることができる。すでにジョー・ジョナス(Joe Jonas)、ナイル・ホーラン(Niall Horan)と言った世界的に有名なアーティストや、「M・A・C」や「グロシエ(GLOSSIER)」と言ったビューティーブランドや、「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」「リーボック(REEBOK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」などのファッションブランドも、BeRealのリアルなアプローチに共感し、ファンとの情報共有に積極的に取り組んでいる。

さらに、一部のトップスポーツチームもBeRealに参加している。バスケットボール界ではシカゴ・ブルズ、ホッケー界ではボストン・ブルーインズ、野球界からはボストン・レッドソックス、サッカー界からはパリ・サンジェルマンのチームが挙げられる。将来的にはぜひ、日本のスポーツチームにもBeRealに参加してほしい。

BeRealによってユーザーが友達とつながり、彼らのリアルな生活を垣間見ることを可能にしてきたように、セレブリティーやブランドも自分達の“リアル”を見せ、コミュニティーとより親密に連携する場を求めている。企業はブランドアンバサダーにブランド公式アカウントの投稿を託したり、新商品を開発する担当者にアカウント運営を任せて新商品情報を紹介したりすることで、より親近感とリアリティーのあるプロモーションを行なっている。私達も驚くような、たくさんの斬新なアイデアが日々生まれ続けているのだ。

WWD:企業やセレブリティーのオフィシャルアカウントが成長する時、BeRealの特性である“より親密でリアルさを追求したアプリである”という世界観を保つことは可能なのか?

サルツマン:ユーザーとのコミュニケーションから、自身の友達からリアルで即興的なコンテンツを見るのと同じように、ブランドやセレブリティーからもリアルなコンテンツを見たいと望んでいることを学んだ。広告ではなく、BeReal専用に作成された “Time to BeReal”というアラートに対応した、自分では詳細にコントロールできないコンテンツのことだ。

友達同士が深いつながりを築く場所であるというコアの価値を損なうことなく、公式アカウントもコンテンツを提供できるようにするために、BeRealではセレブリティーやブランドが既存のユーザーと同じルールに従うことを徹底した。公式アカウントのユーザーだからと言って、“Time to BeReal”アラートがいつ届くかを知ることはできないし、アラートの時間通りに投稿をして、撮り直した回数ももちろんユーザーに知られることになる。そもそもこれらの公式アカウントをフォローしなければ、これまで通り友達同士のつながりの上でのみ利用できるため、BeRealの世界観はこれからも確保され続けるだろう。

BeRealを運営する中で興味深いと感じたのは、Z世代は他の世代と比べ、企業の在り方についてより強い関心を抱いている情熱的な世代であると言う部分だ。公式アカウント機能では、ブランドが彼らのファンと今までにない形で対話を行えるようになる。ブランドの舞台裏を共有し、ファンと長期的な信頼関係を築くことができることにより、ブランドは自分達の挑戦やチャレンジをファンに共有するだけでなく、ブランドが行うアクションに込められた、フィルターのかかっていない真の情熱を見せることができる。既存のSNSアプリとはひと味違うコミュニケーションと親和性が生まれるだろう。

収益化には焦点を当てず、
重視するのはユーザーエクスペリエンス

WWD:今後マネタイズ機能をつける予定はあるのか?

サルツマン:現時点では、私たちにとって収益化は優先事項ではなく、BeRealのユーザーエクスペリエンスを追求し、新しい機能のテストとリリースに焦点を当てることが重要だと考えている。もし仮に、将来的に収益化を検討する際には、ユーザーとの多くの対話を行った上で決断を下すだろう。そして何より大切なのは、私達のミッションやブランド価値観に沿っているかを考慮に入れ、独自のソーシャルメディアの視点を含んでいること。収益化だけではなく、私たちが新しい機能に取り組む際はこのアプローチ手順を基礎に置いている。

そして現在、ありがたいことに素晴らしいアプリを構築するためにリソースを提供してくれる投資家に恵まれている。そのため、どの種類の収益化にも焦点を当てておらず、広告に関する計画はない。

より親密なコミュニケーションのために
今後追加する“RealFans”機能

WWD:今後の展望について教えてほしい

サルツマン:次なるステップとして、私たちが告知できるのは“RealPeople”と“RealBrand”アカウント向けに、“RealFans”機能を設定することだ。この機能では、公開された投稿にコメントする機能、そして“RealPeople”と“RealBrands”がタグ付けされたコンテンツを見たり、共有したりすることができる。“RealPeople”と“RealBrands”がエンゲージメントの高いファンと、より親密な関係を築くのに役立つだろう。

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