いま、空前の“カレーブーム”が到来している沖縄。「那覇カレーグランプリ」、「沖縄カレーグランプリ」といったカレーコンテストが開催されているほか、大型ショッピングモールが“カフェーフェス”を行えば、県内からカレー専門店のキャンピングカーが10以上も集うほどに注目を集めている。
その種類はインドやスリランカ、ネパールなど各国の食文化をベースにしたものから、そこからインスパイアされ、店ごとにアレンジを加えた個性派などバリエーションはさまざま。そんな数あるカレーの中から、美容・健康の観点から注目したいのが、“インナービューティ”に焦点をあてたスパイスカレー。県産ハーブを用いたり、薬膳を応用したりのレシピなど、「食べるたびにきれいになる」ビューティカレーだ。今回はそんな美容意識が高いカレーを提供している、3種類の店舗を紹介する。
豊見城市【カフカリ】
発酵・酵素・県産ハーブ&スパイスを取り入れた、色鮮やかなワンプレート
まず紹介するのは、フレンチの経験を積んだ店主が、見た目にも色鮮やかなビューティカレーを提供する「カフカリ(KAFUKARI)」の「3種盛りカレー」だ。
3種類のカレーは、いずれも発酵食品や植物由来の酵素を用いることで“腸活”を促すのがポイント。この日の3種はチキンとポークとトマト。チキンカレーはチキンを塩こうじでマリネをし、そこへザワークラウトのエキスやヨーグルトをブレンド。さらにアールグレーの葉やスパイスで風味を整えている。ポークカレーはパイナップルの酵素でマリネした県産の豚肉にパクチーやミントを加えたネパール風。トマトカレーはトマトのうま味を引き出しつつも胃腸の働きを促すように、玉ねぎやディル、オリーブ、お酢をプラス。さっぱりとした風味に仕上げた。
県産ハーブやスパイスで風味を豊かにすることから、使っている調味料は塩のみ。ディルやバジル、ローズマリーやパクチーなど生ハーブも活用できることから、スパイスカレーながらフレッシュで軽やかな風味なのも魅力。オーナーシェフの赤嶺雄基さんは「玉ねぎを10分の1になるまで煮詰めたベースを使うことで、スパイスカレーにマイルドな甘みとコクを加えています」と話す。
また、2023年に行われた「沖縄カレーWEBグランプリ2023」では、県内約50店舗のカレー専門店なかから、準グランプリを獲得したことから、「県外からカレーの食べ歩きのために沖縄に来た、という人もいらっしゃいます」と、県内外から高い支持を受けている。
■カフカリ
住所:沖縄県豊見城市高嶺72
電話:098-996-2862
Instagram:kafukari.0602
那覇市【みみたぶ】
スパイスの芳醇な香りが、嗅覚を通って脳からリラックス。マインドフルネスなカレー!
続いて紹介するのは、薬膳スパイスアドバイザーの資格を持つオーナーが提供する「みみたぶ(MIMITAB)」のスパイスカレー「本日のカレー2種」だ。
店舗は那覇の中心地に位置することもあり、「女性一人で来店されて、ゆっくりと過ごしていただくことが多い」(店主・谷内友理子さん)という。そのため刺激的な風味というより、リラクゼーションを促すハーブやスパイスを多用しているのが特徴。また、スパイスは店内でホールスパイスを粉末にして使うことで、芳香効果も得られると話す。「ホールスパイスを火入れして粉末にするとよく香りが立つため、その香りでリラックス・リフレッシュ効果が得られます」。確かに店舗の扉を開けた途端に、温もりあるスパイスの香りが鼻をくすぐり不思議と気分落ち着く。
取材日に用意されたのは、ビネガーとスパイスに付け込んだ豚肉を使ったカレーと、エビと生の春菊をココナッツベースで仕上げたタイ風カレーの2種。さらに、こちらでは副菜にも注力している。「副菜はセロリのナムル、県産パパイヤとニンジンを用いたソムタム風サラダ、さつまいもにシナモンやクローブ、レモンをアクセントにつかったさっぱり煮、モロッコインゲンのココナッツ炒め、ニンジンドレッシングを添えたサラダを取りそろえました。中央にはターメリックライスを添えています」。
スパイスやハーブは近隣の市場で入手している。「沖縄ではシナモンの一種である“カラキ”やコショウ科の“ピパーツ”、フェンネルの“イーチョーバー”といったスパイスが食生活に取り入れられています。スパイスに親しみがあることもスパイスカレー人気の理由だと思います」。
■ミミタブ
住所:沖縄県那覇市泊1-1-1
電話:098-988-0987
Instagram:mimitab.y
本部町【丸祇羅沖縄】
6種の生薬を取り入れつつも、まろやかなコクと風味へ整えられた薬膳カレー
本島北部にもスパイスカレーの人気店が点在している。そのうちの一つ、「丸祇羅沖縄(まるまさらおきなわ)」では、まるでスープカレーのような“薬膳カレー”を提供している。
もともと神奈川県横浜市で2店舗のスパイスカレー店を展開している「丸祇羅」。3店舗目を県外に出店するべく、立地を検討したところ「暖かい場所がいい」(オーナーシェフ・六反征吾さん)という理由から沖縄に出店することになったという。広々としたキッチンとダイニングからなる店内はまるでギャラリースペースのようで、スパイスなどが入った200種のジャーが並ぶ壁面収納には圧巻だ。
こちらで楽しめる薬膳カレーは、「沖縄店ならではのメニューを開発したい」という思いから考案された。「長旅やお酒の飲みすぎなどによる胃腸疲れにきくような“薬膳”をコンセプトにするアイデアがひらめきました。ただ、私は薬膳の専門家ではないので、その調合は鎌倉市大船にある老舗の「漢方杉本薬局」に依頼しています」。採用されたのが、胃腸薬にも使われているミカン科のセイヒ、チンピ、ナツメ、免疫力をケアする田七人参、活力を高める朝鮮人参やショウガ科のガジュツ。いずれも漢方薬としてはおなじみの生薬成分だ。
これらを配合しつつ、カレーとして美味しく整えるのに試行錯誤を重ね、ようやく“丸祇羅式薬膳カレー”が完成した。「お酒を飲みすぎた日も、このカレーを食べていれば翌日はすっきりします。しかも、スパイスカレーとして、チリなどでパンチをきかせているのでスパイス好きにも満足してもらえるはず」と味わいにも自信。
鼻に抜けるときにかすかに生薬を感じるが、“薬膳カレー”と言われない限りはわからない。むしろ、生薬の苦みや酸味がカレーの風味に深みと広がりを与え、まろやかなコクへと変化しているかのよう。ちなみに、食べるタイミングは空腹時がおすすめとか。「スパイスは胃に刺激になるイメージですが、こちらは漢方ベースなので辛いのが苦手な人にもおすすめできます。食べ進めるうちに身体が温まっていくはずですよ」。
■丸祇羅沖縄
住所:沖縄県国頭郡本部町渡久地3−1 2F
電話:070-5015-5166
Instagram:marumasala_okinawa
沖縄の郷土料理ではカラキやピパーツのほかにもターメリックや島唐辛子が取り入れられているため、スパイスカレーがなじみやすい風土が醸成されている。それに加え、県内北部では県産コショウの栽培も始まるなど、スパイス栽培が広がりをみせ、南部では複数のハーブガーデンが点在し、フレッシュなハーブが入手しやすいと環境にも恵まれている。
沖縄の定番料理といえば、沖縄そばやごーやーちゃんぷるーなどがあるが、県産のフレッシュなスパイスをふんだんに使ったビューティカレーもローカルフードの仲間入りを果たすかもしれない。
*カレーの価格は全て2024年3月現在