毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年4月29日&5月6日合併号からの抜粋です)
本橋:韓国ブランドに勢いがあるのは感じていましたが、青山の「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」の行列を目の当たりにして、やはりすごいなと。特集を作るべく韓国取材も敢行。どこも空間作りを大事にしていて、また行きたいと思えました。韓国ならではの美意識は、日本のブランドにも参考になるはずです。
村上:店舗やSNSへのこだわりは日本のブランドにもあるはず。韓国勢はどこが違うんでしょう?
本橋:「振り切り方」でしょうか。SNSなどのマーケティングがうまくて、実際に売るのはEC。だから、店舗はリアルならではの“体験”に特化できるのかなと。日本人にも人気のバッグブランド「スタンドオイル」の聖水(ソンス)の店の1階は、物販を一切せず、1カ月に3回くらいテーマとインスタレーションを変えるギャラリーです。例えば「美容室でバッグを盗まれた」というストーリーで、SNSでは犯人探しの謎かけをして、来店すると犯人が分かるという巻き込み型のイベントを実施。ファンを楽しませる仕掛けに感心しました。お金もかかっていそうです。
村上:正直、よく利益が出るなと思うんです。商品自体は必ずしもハイクオリティーとは限らない。特に素材感は日本のブランドが勝っています。マーケティング費がすごいのでしょうか。
ラグジュアリーブランドと同じ利益構造かも?
本橋:確かにセレブに着てもらうことなどにお金をかけていそうです。現地では「マーティンキム(MARTIN KIM)」や「マルディメクルディ(MARDI MERCREDI)」を着ている人をたくさん見かけました。「欲しい!」と思わせることが上手いんだと思います。
村上:原価率は日本のブランドより低く、その分マーケティング費用に充てる。ラグジュアリーブランドと同じような利益構造なのかもしれないですね。着こなしの正解やターゲット像を提示せず、解釈の余地を残すのも上手いですよね。
本橋:「マルディメクルディ」のマーケティング責任者は「ペルソナを特定しない」ことを大事にしているそうです。日本のブランドは「見えないところ」にこだわりがちですが、韓国は「見えるところ」にお金をかける。お互いに学べる部分がありそうです。
村上:一方で韓国版「WWD」のエディターは、「長く育てる姿勢や、ヒストリーがある日本のブランドはすごい」と語っていました。日本市場に参入するブランドも増えているので、どういう闘い方をするのか楽しみです。