インバウンド消費が再び脚光を浴びている。コロナ禍後、世界的なマクロ経済は不透明感を増しているものの、円安や中国&東南アジアの経済成長、安全・安心な旅行先としての日本、その全てが日本のインバウンド消費にはプラスに働いている。銀座、原宿・表参道、心斎橋での訪日客57組106人への突撃インタビューから、インバウンドで好調な店舗・ブランドの現状と施策まで、新しいインバウンド消費の内実を追った。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月20日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
多様化する「爆買い」、高級ブランドから
カルトブランド、ご当地グルメも
多くの買い物客でごった返すゴールデンウィークの原宿のキャットストリートから、一本裏に入った細い路地にある民家を居抜きで使った小さなショップには、韓国や東南アジアの訪日客たちが行列を作っていた。シューズブランド「グラウンズ(GROUNDS)」のお店だ。1組の滞在時間が長く、1度に1〜2組ずつしか入れないため、韓国から来たキムさんとジヨンさん夫婦(こちらを参照)は1時間ほど並んでやっと店舗に入れた。にもかかわらず「インスタで見てずっと欲しかったお目当ての商品が買えた」と満足げだ。
国籍・地域別に見る
訪日外国人旅行消費額と構成比


円安を背景に訪日客による消費、いわゆる「インバウンド消費」は急増している。観光庁によると、2023年の訪日外国人の旅行消費額は5兆2923億円と、コロナ禍前の4兆8135億円を大幅に上回って過去最高になった。ただ、団体客が百貨店にバスを横付けして高額品を買いあさった、かつての「爆買い」消費とは様相が大きく異なっている。19年にはコロナ禍前に3割以上を占める中国が首位、ついで台湾(11.5%)、韓国(8.8%)だった地域別構成は、23年度には台湾が14.7%で首位、ついで中国(14.4%)、韓国(14.1%)、米国(11.5%)になった。
ショッピングの質も変わった。「グラウンズ」のようなマニアックで小さなブランドをめがけて来日してショッピングを楽しむ訪日客も少なくない。インバウンド消費を背景に23年度に前期比5割増と快進撃を続ける渋谷パルコの平松有吾・店長は「訪日客に売れるのは、認知度の高いブランドよりも、とんがった個性のあるブランド。実際にある海外のデザイナーブランドよりも、『トーガ(TOGA)』や『ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)』のような日本ブランドの方が売れている。こうした日本ブランドはすでにインバウンド比率が5割以上になっている」と語る。
団体から個人旅行への変化も、訪日客の動向に影響している。公共交通機関を使って移動するため、地方だと心斎橋や福岡のような空港からのアクセスが良く、宿泊施設が豊富で、買い物も食も一緒に楽しめるエリアの人気が急上昇している。
訪日客57組106人の上位購入ブランド
「シュプリーム(SUPREME)」 6組
「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」 5組