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“守破離”の精神で進化する桃谷順天館 140年の思いと新たな挑戦

桃谷順天館は来年の創業140周年を目前に、4月に新スキンケアブランド「レグラージュ(REGLAGE)」を立ち上げた。同ブランドは、桃谷順天館が139年の歴史で研究・開発した6万通りの処方の中から厳選した、全87アイテムの商品をラインアップ。SNS分析などを得意とする若手社員を集めたデジタルマーケティングチームが主体となり、同社にとっても新しい取り組みとなった。新たな挑戦を続ける桃谷順天館の桃谷誠一郎社長に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):新スキンケアブランド「レグラージュ」を立ち上げた理由は?

桃谷誠一郎社長(以下、桃谷):それぞれの組織に属していたデジタルを得意とする若手社員を集めたデジタルマーケティングチームを1年前に発足した。このチームの得意分野でもあるデジタルの世界で最も伝わりやすいブランドを作ろうと考え、立ち上げたのが「レグラージュ」だ。

WWD:第1弾ではクレンジングからクリームまで一気に87の商品をそろえた。

桃谷:桃谷順天館には139年の歴史の中で研究・開発した6万通り以上の処方がある。取り扱いブランド・アイテム数も多く、長期間に渡り商品を愛用していただいているお客さまもいて、中には廃盤にした商品を「もう一度使いたい」という声がお客さま相談室に今も寄せられる。もう一方で、環境問題を考慮した際にドラッグストアの棚割で置くことが難しい規格の商品もある。それらを踏まえ、「レグラージュ」ではECを販路に設定し、6万通りの処方を活用した商品群で鮮度が高いうちに使い切れる容量の設計や環境に配慮したパッケージを採用。デザインやコピー、SNSを活用した施策など、若手社員が中心となってディレクションした。私や会長(藤本謙介取締役会長は一切口を出さなかった。

WWD:若手社員の活躍の場を広げている。

桃谷:私は、社長が口出しすると失敗する確率が上がると思っている。「社長が言っているから」では、いいモノは生まれない。私がトライアンドエラーを積み重ねてきたように、若手には新鮮な気持ちでどんどん挑戦してもらいたい。若い人たちの力が発揮できる環境を整えるのが社歴の長いわれわれの仕事でもある。会社は人だ。社員が働きやすい環境を作るということに尽きる。

主軸のスキンケア好調で
売上高10%増

WWD:直近の商況は?

桃谷:2023年は、グループ会社であるセルフ販売の明色化粧品とOEM /ODMのコスメテックジャパンが順調に伸長し、グループ全体の売上高は前年比10%増で着地した。明色化粧品では、昨年9月に発売した毛穴専門スキンケアシリーズ“ケアナボーテ”のピュアビタミンCを配合した美容液“VC15特濃美容液”(30mL、2530円)が非常に売れた。スキンケアの高まりを受け、処方が難しいと言われるピュアビタミンCを15%と高濃度で配合しながらも他ブランドよりも低価格で実現した同商品は、インフルエンサーのオーガニック投稿で人気に火がつき、継続して売れている。このほかにも、高機能エイジングケアシリーズ“メディショット”のナイアシンアミドを15%高配合した“メディショット NA15リンクル濃美容液”(30mL、1650円)も好調に伸びている。一方で、明色化粧品は豊富な商品をラインアップしているが、原料高や輸送コストなどの問題をクリアできる商品群に絞ろうと考えている。利益を出しながら研究開発に投資し、次のステージに向けて推し進める。

WWD:「人々のお悩みを解決したい」という創業者の桃谷政次郎氏の思いは変わらず継承されている。

桃谷:創業のきっかけとなったニキビを防ぐ“美顔水”(1885年~)は今もロングセラー商品として親しまれているが、これを販売しているだけでいいというわけではない。時代の変化に伴い、お客さまが求めることも変わってくる。お客さまのニーズに寄り添い、積極的に応えるというのが私の思いでもある。新しいことにはどんどん挑戦していく。

WWD:来年は創業140周年を迎える。今後の展望は。

桃谷:創業者の思いでもある「目の前で悩んでいる方のお悩みを解決する」という原点は守っていくが、「守破離」という言葉があるように“破る”ことも大切だ。私が社長に就いてから30年経つが、私自身が作ってきたものが呪縛になっているのではと感じることがある。ルールや時代に合わせて改革してきたそれらが年輪のように溜まり、1人歩きしているものがある。守破離のごとく、創業者の思いを体現するために何が必要かと原点に立ち返りながら、われわれ流の美のあり方を自分たちで考えた、新しい側面を持つ桃谷順天館へと成長させていきたい。

WWD:海外事業も広げていく。

桃谷:明色化粧品といえば、質の高い商品が1000円前後で売られているお買い得商品と認識されていて、今の為替含め海外でのチャンスは大きい。しかし今あるものではなく、グローバルを見据えたバリューのある商品やブランドを開発したいと考えている。10年後を見据え、スピードを上げながらグローバルでも活躍する企業を目指す。

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