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特集 アダストリア 第8回 / 全10回

EC戦略担当が店頭で身に付けた、自ら考え行動する力 【アダストリア若手社員インタビュー集】

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EC戦略担当が店頭で身に付けた、自ら考え行動する力 【アダストリア若手社員インタビュー集】

現場で働く若手社員たちは、日々どのように“修正”を繰り返しているのか。取材の中でキーワードとして浮上したのは、若手に任せて挑戦を後押しする社風。「失敗しても怒られない。ただし、その後にアップデートせずそこで止まっていたら怒られる」「思考停止での前年踏襲にはシビア」という言葉が、象徴している。部門の壁や上下関係を超えた風通しのよさが、そうした社風につながっている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月3日号からの抜粋です。

マーケティング

永田雄輝 / マーケティング本部WEB事業部アシスタントマネジャー

永田雄輝/マーケティング本部WEB事業部アシスタントマネジャー

PROFILE:(ながた・ゆうき)1988年生まれ、神奈川県出身。2010年新卒入社。「グローバルワーク」で店舗スタッフや店長を8年間経験。本社に異動し、「グローバルワーク」「ベイフロー」のECを担当したのち、WEB事業部に移り現職

“アップデート”が仕事の基本
データを分析し改善重ねる

永田雄輝さんは2010年に新卒入社。「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」の店舗勤務やEC担当などを経て、現在は「ドットエスティ(.ST)」全体のサイト設計や、出店している他社モールの戦略、各ブランドと共同でのEC戦略といった幅広い業務を担当している。

「EC担当になったのも今のWEB業部に異動したのも、公募がきっかけです。ウェブを見て来店するお客さまが増えていくのを日々感じていて、『ブランドをカッコ良くしたい』という自分の思いを、ウェブでも実現してみたくなった。『やりたい』と声を挙げる社員がいれば挑戦させてくれる社風は、以前から強かったと思います」と語る。

とはいえ、着任当初はECの知識は全くなく、エクセルすら全然分からなかったという。「ゼロから勉強し、分からなければとにかく自分で調べる。店舗時代も『自分で考えて、調べてやってみな』とよく言われていたので、その教えが染みついていると思います」。店舗時代は、同じ商業施設内で売れているブランドがあればその情報を集め、自店の商品や接客をどう改善するかという小さな修正を週次で繰り返してきた。その基本は今も変わらない。

「グローバルワーク」を経て、「ベイフロー(BAYFLOW)」のEC担当だった頃、販売が伸び悩んでいたシューズの改善策に取り組むことになった。ユーザーの声を集めてみると、軽さや履き心地を支持する意見が多いと分かった。そこで、従来はブランド側が伝えたいことを発信していたコミュニケーションを、ユーザー目線のものへと変更。ユーザーから評価する声が多かった。軽さが伝わるネーミングを押し出し、商品が空中に舞う様子を撮影した画像や着用コメントなどを掲載したところ、売り上げが大きく伸びた。ここまでわずか2~3週間。「やると決めたら早い会社です」。

ドットエスティの会員数は約1750万人(2024年2月末)。ここに集まる大規模なデータをもとに、じっくり時間をかけて施策を進めることもあれば、改善した効果が1、2日で数字に表れることも。これがECビジネスの面白さでもある。反応が悪ければすぐに内容を変更し、ときには施策自体を取り止める。「何かを止めたことが直接ネガティブな評価につながることはありません。止めてそのままなら確かに“失敗”ですが、じゃあどうやって成功させるかにまでつなげられればいい」。一方で、「アップデートがないことには会社としてとてもシビア。たとえ一回うまくいっても、『次は何にチャレンジするの?』と、常に成長し続けようとすることが求められます」

店舗勤務時代に比べて、扱うブランド数も数字も格段に増えた。「だからこそ、自分一人だけでは何もできないと思っています。社内には、撮影やデータ分析、プロモーションなど各分野のプロがいるので、彼らと一緒にチームで動く。その方がより多くのやりがいや達成感を得られるし、会社の強みでもあります」。サイト内の商品レビューやQ&Aコーナーなど、ウェブならではの情報も蓄積され、「より細かく、リアルに近いお客さま像が見えてきたので、商品企画やサイト設計の改善に役立つはず。毎日訪れたくなるような、魅力あるプラットフォームを目指しています」。

海外事業

ニコアンド営業本部 マネジャー 海外MD 安平晴菜

安平晴菜/ニコアンド営業本部 マネジャー 海外MD

PROFILE:(やすひら・はるな)1990年生まれ、神奈川県出身。2012年新卒入社。「ニコアンド」で店長やマネジャー職を経験。17年の台湾出店時に営業担当として現地に赴任。21年から上海で商品の企画・開発に携わった後、23年に帰任し現職

ローカルと本社を橋渡し
海外向けに商品をアレンジ

大学時代は外国語学部で学んで、もともと海外志向が強かったという安平晴菜さん。2017年、台湾での「ニコアンド(NIKO AND...)」事業立ち上げに伴い現地に赴任することになった。「新卒のときからアピールしていたのを会社側が覚えていてくれて、声がかかったときには『行きます!』と即答しました」。台湾では営業担当として、「日本の『ニコアンド』らしさを軸に、現地の要素をどう取り入れてアレンジするか」に奔走した。最初は言語の壁にぶつかったものの、「自分から動かないと伝わらない。片言でもなるべく現地スタッフと話すようにするうち、人気の食べ物情報を教えてもらったり、休日に一緒に街に出掛けたりするようになりました」。

当時、日本からの駐在員は安平さんだけ。ローカルと日本をつなぐ存在として、日々マーケットを観察し、「足で稼いだ情報」を本社に共有。旧正月商戦に合わせた企画や現地のカフェとのコラボなどを仕掛けた。

21年には上海の店舗へ異動。新たな任務は、ウィメンズ商品の販売強化だった。「日本のお店ができたという目新しさだけでは、いずれ客数は減ってしまう。再来店してくれるファンを増やさなければと感じました」。西洋や韓国のトレンドの影響もあり、上海ではタイトシルエットや丈の短い服が好まれていた。台湾ともまた違う。「ニコアンド」のゆるっとしたカジュアルそのままではなく、ローカル用のアレンジが必要だった。そこで、コンパクトなトップスなど、日本企画にない商品を独自に差し込んだところ、既存のニコアンドのパンツも一緒に売れるようになった。

日本企画だけではなぜ通用しないのか、どんなニーズがあるのかについて、「本社に情報を伝えて、理解の差を埋められたことがよかった。チャレンジすることに前向きな社員が多く、提案したら『面白そうだね』『さらにこうしたら?』という反応が返ってくる。会話の回数も随分増えました」。23年に帰任。現地のリアルを反映する毎日だ。

PR

エルーラ営業部アシスタントマネジャー  ブランドプレス 竹鼻まどか

竹鼻まどか/エルーラ営業部アシスタントマネジャー ブランドプレス

PROFILE:(たけはな・まどか)1992年生まれ、東京都出身。広告代理店で不動産広告・商業施設の販促などを経験し、2020年中途入社。プレスとしてブランドデビュー間もない「エルーラ」の認知度拡大などに取り組む

スピード感をもって動く
認知拡大にユーチューブ活用

竹鼻まどかさんは、ウィメンズブランド「エルーラ(ELURA)」のデビュー翌年にあたる2020年に中途入社。以来、プレス業務を担当している。シーズンビジュアル、POP、展示会、SNS運用など、「お客さまとのタッチポイントにつながるすべて」が担当領域だ。「インスタライブよりもブログが響く、など、大人女性ならではのコミュニケーションを模索してきました」。

「エルーラ」の売りは、シワになりづらいアイロン不要のシャツや、楽にはけるのにきちんと感がありサイズ展開豊富なパンツなど、大人女性のニーズや悩みに対応した商品。こうした商品企画のベースにしてきた「大人の悩みに効く服」というキーワードを、21年からはメインコピーにも取り入れている。「日本語で簡潔かつ分かりやすく表現したのがよかった。このコピーに引き寄せられて来店・購入してくださる女性が増え、ブランドの大きなターニングポイントになりました」。

さらなる認知向上へ、新たにYouTubeチャンネルを開設した。「社内のマーケティングチームに相談したら、『若い人はTikTokだけど、大人はYouTubeを見る人が増えているというデータがあるよ』と後押ししてもらった」。それが24年の2月。動画チームなど他部署と協力し、4月にはチャンネル立ち上げにまでこぎ着けた。「やってみよう精神が強く、社内でやりたいと提案すれば、余計な根回しやしがらみなく進められる。レスポンスも早い。私も誰かに意見をもらう場合は『A案とB案のどちらがいいですか』など、すぐに判断ができる聞き方を心掛けています」。YouTubeでの発信は、まだスタートラインに立ったばかり。今後はどうしたら視聴回数が伸ばせるかなど、データを分析し内容を改善していく必要がある。前職の広告代理店勤務時代は、クライアントの要望をいかにかなえるかが仕事だった。「アダストリアに入社して感じたのが、自社たちのブランドをもっとこうしたいという、思いの強さ。皆、自分の仕事が好きで一生懸命。私もプレスとして、そこから生まれた商品をお客さまに届けていきたい」。

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