ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション&ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすくお届けします。今回はシーインやTEMUなど世界で爆速成長を続ける「越境EC四代巨龍」。その背景を解説します。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月20日号に加筆しています)
「シーイン」「TEMU」「アリエク」「TikTok Shop」、越境EC四大巨龍の概要
中国・越境ECプラットフォームの急成長が止まらない。日本でもよく知られている「シーイン」「ティームー」に加えて、まだ日本ではローンチしていない「ティックトック」のEC機能「ティックトック ショップ」、それに老舗ながらも韓国や欧州で根強い人気を誇るアリババグループの「アリ・エクスプレス」、この4つのECプラットフォームは中国で「出海四小龍」(海外進出の4頭の龍)と呼ばれている。各社はいずれもGMV(商品取扱高)を公表していないが、中国メディアの報道などによると、2023年で合計1090億ドル(約16兆8950億円)に達したという。中国現地から海外の消費者の個人宅に郵送する、究極のB2C(消費者向け)形式の越境ECは気づけば巨大産業になったのだ。
この躍進っぷりに中国政府も大喜びだ。昨年末の中国共産党中央経済工作会議では「海外貿易の新動力」の一つとして名を挙げられ、政策的な支援も受けている。一例を挙げると保税区(税制的には中国国外扱いとされている特区)での返品処理だ。越境EC企業にとって悩みのタネとなるのが返品処理。「シーイン」などの大手は世界各地に返品処理センターを作っているが、対応していない国の商品は中国にまで送り返されてくるため、中国国内に返品を入れる通関処理が必要となる。そこで中国税務当局は保税区で返品を受付、再パッケージして輸出に回せるような制度を整えた。かゆいところに手が届く対応までするほどに、中国政府は越境EC事業者を認めているというわけだ。
成長を支えるのは「超速製造網」と
「フルホスティング」
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