毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月17日号からの抜粋です)
大塚:大手アパレルからセレクトまで各社のメンズの打ち出しを見ながら、「WWDJAPAN」が1月の2024-25年秋冬メンズ・コレクションを取材して「売れる」と感じた一押しトレンド“グランパコア”が本当に市場に浸透するのかどうかを探りました。“グランパコア”は品のいいレトロクラシックと捉えられており、多くの業態が何かしら取り入れていた印象です。
古着に合わせる新作提案に納得
村上:特集に携わって、どうして“グランパコア”が支持されるのか?がかなり分かってきました。まずベースにあるのは、古着ブーム。例えばレザーのブルゾン、MA-1、トレンチコート、Pコート、ツイード系のジャケットなど、若い世代を中心に“主役級”のアイテムを二次流通で買うのが当たり前になっています。「アヴィレックス」のフライトジャケットや「ショット」のワンスターのように、おじいちゃんも愛したハズの“本物”は、すでにある意味“グランパコア”。「買い物で失敗したくない」と考えたり、ストーリーを重視したりする若い世代は、昔から存在するものに引かれるでしょうし、それらの“本物”に合わせるためのインナーやボトムス、アクセサリーを提案しようとするブランドが増えるのは納得です。
大塚:その若い世代の自由な感覚が影響しているのか、アメリカンやブリティッシュ、フレンチなどのスタイルをミックスした提案も目立ちました。メンズはスタイリングのルールが多く、その枠の中でどう崩していくかという楽しさがあったのが、そのルールさえ取っ払って、いろいろなスタイルを自由に楽しもうよというメッセージを感じました。ただ、以前までのルールをないがしろにするわけではなく、根底にはクラシックの素晴らしさを伝えたいという思いも強くて、その辺を今っぽいバランスで提案していたジャーナル スタンダードやシップスなどの打ち出しが個人的には好きでした。
村上:国内のアパレルメーカーでは、暖冬対策に真剣に取り組んでいるのも印象的です。ここにジェンダー・ニュートラルな価値観が加わって、「秋冬だけど肉厚な生地じゃなくても良いよね?」という思考が広がっており、結果、「好きな洋服を着ればいいよ」というムードが加速しています。特に今シーズンは、全体的にジャケットやエレガントなスタイルに移行しつつも、大胆なカジュアルミックスに目を引かれました。