山の楽しみ方が多様化している。高山の頂(いただき)を目指すだけが登山ではなくなり、里山ハイク、仲間とトレイルラン、山ごはん、映える写真撮影といったように、各人が思い思いに山を楽しむようになっている。シビアな山行ばかりではないのだから、ウエアやギアにそこまでの精度を求めない人も出てきており、代わって「人と違う個性やスタイルを楽しみたい」といったニーズが芽生えている。ここでは、そんな流れの先端にいる山好き4人による座談会を実施。山専門媒体ではないからこその、カルチャー色強めな内容をお届けする。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月15日号からの抜粋です)
WWD:自己紹介と、山にハマったきっかけをお願いします。
田代耕輔(以下、田代):普段はIT企業に勤めていて、趣味で登山やアウトドアギアに関するブログ「池尻ハイキングクラブ」を2017年ごろから書いています。文化服装学院のファッション情報科出身で、学生時代は裏原カルチャーを追いかけていました。クラブイベントも大好きで、卒業後はイベント制作の仕事をしていました。でも、ある時からクラブに行くのに飽きてきた。そのころから夏目(彰)さん※1とか、ウルトラライトハイキング(以下、UL)※2関連のブログを読むようになって、意を決して山に行き始めたのが14〜15年くらいのことです。
田代あかり(以下、あかり):私はウェブデザイナーをしています。山は夫(注、耕輔さん)と付き合い始めてから連れられて行くようになりました。だから登山暦は3〜4年。最初は高尾山とかの低山を「ヴァンズ(VANS)」のスニーカーで登っていましたが、徐々にアイテムを買い足して、北アルプスなど高い山にも行くようになりました。
内田良徳(以下、内田):僕は職業は医療関係。自分が着て楽しむために、シルクスクリーンプリントでTシャツを作っています。今日着ているタンクトップのプリントも自分で刷ったもの。昔は音楽を作ったり※3、ピストバイクに乗ったりするのが好きでしたが、結婚して子どももできて、(ピストのような)危ないことはもう潮時だなと。それで15年ほど前から友達と山に行くようになりました。前橋に住んでいるので、赤城山によく行きます。トレイルランをしていて、高い山より里山、泊まりよりも日帰り派です。
小島史郎(以下、小島):自分は元々はグラフィックデザイナーで、ファッション・ライフスタイル誌「ワープマガジン(WARP MAGAZINE JAPAN)」のアートディレクターを7年ほど務めていました。親父が山好きだったから子どものころは山に一緒に行っていたけど、20代は休日といえばクラブ。30代になって、ふと「尾瀬でも行ってみるか」と思って行ってみたら面白かった。最初は特にUL系のギアを追求していたわけではなかったけど、周りが使い始めて、徐々に自分も集めるようになりました。そうこうしていたら「ワープ」が休刊。栃木で家業の瓦問屋を手伝いつつ、グラフィックの仕事も続けているうちに、「ここで店をやりたいな」と思うようになったんです。それで、2年前から栃木市内で山道具屋の「瓦奇岳」※4を運営しています。
WWD:皆さんはULの実践者ですか?
田代:僕は忘れ物防止も兼ねてギアリストをエクセルで管理しているので、毎回ベースウエイト※5が何kgかは把握しています。4.5kgを超えることはほぼないです。
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