ビューティ
連載 沖縄ビューティNEWS 第12回

「沖縄のサンゴを守る!」化粧品ブランドが取り組む、環境保全プロジェクトの“現在進行形”

近年、環境に配慮した日焼け止めに表示されることが多い「リーフフレンドリー処方」。紫外線吸収剤やナノ成分を使用していない、耐水性(ウォーターレジスタンス設計)であることなど、生態系にかく乱の危機が訪れているサンゴ礁や海洋環境にやさしい処方であることを意味する。加えて、いくつかのブランドは商品で環境に配慮するだけでなく、サンゴの再生活動や、リーフチェックのモニタリングなど、積極的に海洋活動にも尽力しているのをご存じだろうか。

紫外線吸収剤不使用の敏感肌用日焼け止めを発売している「エトヴォス(ETVOS)」は、2020年からサンゴの苗を寄付する活動やビーチクリーン活動をNPO法人の美ら海振興会とともに行っている。活動のきっかけは“サンゴの白化”だったという。

「『エトヴォス』ではミネラル由来の日焼け止めがヒーロー商品であることから、以前からビーチで使用される紫外線吸収剤配合の日焼け止めが与える“サンゴの白化”について考え、海洋保全活動に興味を持っていました。そんな中、サンゴを新たに植え付けたり、ビーチクリーン活動などを行ったりすることで、間接的にサンゴや沖縄の海を守ろうとしている美ら海振興会のことを知り、活動の資金をサポートさせていただくことになりました」(エトヴォスPR・ティシュキン千晶さん)

美ら海振興会は沖縄の複数のダイビングサービスが加盟している団体。サンゴの苗を植え付けるだけでなく、その後のモニタリングとメンテナンスを継続的に行っている。

「私たちは海に直接かかわる仕事をしていることもあり、きれいで豊かな海を維持するために1998年からサンゴの移植活動とゴミを取り除く活動を行っています。地元の専門学校生などにも協力してもらっているほか、ダイバーも多い時では350人ほど集まり、1500株ほどのサンゴの苗を植樹したこともありました」(美ら海振興会代表・松井さとしさん)。

とはいえ、サンゴは単に海底に置くだけではうまく定着しないことから、定着率を高めるために試行錯誤したという。「いまではサンゴ食性の魚類による食害から守る“保護カゴ”を工夫したり、植え付ける場所やタイミングを研究したこともあり、生存率は大幅に高まっています」。

また、松井代表はサンゴの耐性が高まっているかもしれないと期待を寄せる。「以前は、水温30度が1カ月続くと白化現象が顕著にみられましたが、現在はそのような環境下でも白化する個体が少ない。もしかしたら、白化現象で生き残ったサンゴ群が耐性をつけたのではないかと考えています」。そのようなサンゴの健気な姿は、ダイバーたちに希望を与えている。

一方、今年で16年目を迎えるスキンケアブランド「雪肌精(SEKKISEI)」の地球環境支援プロジェクト、雪肌精「SAVE the BLUE~Ocean Project~」も沖縄の海に貢献している。「雪肌精」ブランド対象商品の容器底面積分に相当するサンゴ育成活動費を、サンゴ養殖の第一人者である金城浩二氏の法人「SeaSeed」に寄付しているのだ。

「金城さんは地球温暖化によって白化していくサンゴの無残な姿に衝撃を受け、1998年当時にサンゴ養殖をスタートされたかたです。『雪肌精』は和漢植物や地球の恵みから作られていることもあり、お客様の肌を美しくするだけではなく、社会貢献に結びつく活動ができないかと検討していました」。そのタイミングで、当時のマーケティング課長が沖縄の金城さんの活動を知ることに。「沖縄に出向いて金城さんとともに海に潜り、白化したサンゴ現象を目の当たりにしたことがこのプロジェクトにつながっています」(雪肌精PR・堀川沙友里さん) 

継続してきたサンゴの植樹活動は、今年で累計本数が2万本を突破したという。「活動開始から15年目を迎える今年までで本島読谷村地域に累計2万211本、面積では25m公認プールの約32.7面分の植樹を実現しました」。また、この活動を次世代へとつなげるべく、“共感の輪”も拡げている。「“サンゴ留学”と題して、実際にサンゴ植樹の様子を店頭の美容スタッフやご販売店様・流通関係者の方々、さらには海外のインフルエンサーにもご体験いただいています」。

そのかいあって、いまでは植樹してきた人工のサンゴが無事に産卵し、それが新たなサンゴへと育っているという。「この活動のキャンペーンコピーに『あなたが美しくなると、地球も美しくなる。』という一文があります。雪肌精を購入されたお客さまへ、海洋保全に貢献されているということをお伝えすることで、環境への意識を高めるお手伝いができたらと考えています」。

「サンゴの耐性が高まっている気がする」と美ら海振興会の松井さとし理事が話していたが、事実、23年1月には琉球大学などの研究グループにより「1週間程度の高水温を経験したサンゴ(ウスエダミロヂイシ)は多くの卵を作り」、さらに「高水温を経験したサンゴ由来の卵と精子から発生した幼生は高水温耐性をもつ」ということが確認された。サンゴはこの地球温暖化に対応して、生き残りを図るために日々進化していることが分かる。

とはいえ、この先も温暖化が進めば人類はもちろん、動物たちへの影響はますます深刻になる。沖縄の誇りである青く美しい海を未来につなげるためにも、私たち一人一人ができるアクションを起こしていきたい。

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