港区マーケットの発展に重要な役割を果たしてきたのが、2003年開業の六本木ヒルズ(森ビル)と07年開業の東京ミッドタウン(三井不動産グループ)だ。大手デベロッパーはどのような施策で、商圏の顧客とのエンゲージメントを深めようとしているのか。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月2日号からの抜粋です)
森ビル
デジタルを武器に築く「ヒルズ経済圏」
麻布台ヒルズや虎ノ門ヒルズの新規開発案件に目を奪われがちだが、森ビルはデジタルプラットフォームの構築も着々と進めてきた。ヒルズに住む人、働く人、訪れる人を対象にした「ヒルズID」と「ヒルズアプリ」のサービスを2021年4月に開始。ショッピングや飲食だけでなく、オフィス、住宅、ホテル、文化施設、病院、学校まで暮らし全体を網羅するデジタルプラットフォームであり、ヒルズ内のレストランや美術館の予約も可能にした。それが他の商業系アプリとの違いだ。
ヒルズアプリ会員には、ヒルズでの年間購買額(税込)に応じたプレミアムステージというプログラムが用意されている。1スター(22万円以上、55万円未満)、2スター(55万以上、110万円未満)、3スター(110万円以上、330万円未満)、4スター(330万円以上)の4区分ある。ヒルズで利用できるさまざまなステージ特典や優待を提供し、エンゲージメントの向上に努める。これらはアプリ導入前のヒルズカード会員へも実施されてきたことだが、アプリによるデジタル化によって精緻なアプローチができるようになった。6月までマーケティング戦略グループで顧客サービスを担当していた佐々英寛氏(現在は企画グループ)は「アプリを介して取得した会員の利用履歴から購買動向を分析し、複数のクラスターに分類して、それぞれのお客さまの関心ごとに合ったコミュニケーションが取れるようになった」と説明する。
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