PROFILE: 片岡真実/森美術館・館長
2003年の森美術館開館以来、アートを中心とした独自の連関と文化が醸成されてきた港区。アートはこの街に何をもたらし、どんな化学反応を起こしてきたのか。開館準備から森美術館に籍を置き、アートを通して20年以上六本木の街を見つめてきた片岡真実館長に話を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月2日号からの抜粋です)
WWD:森美術館設立の経緯について。
片岡真実館長(以下、片岡):1986年に開業したアークヒルズは、サントリーホールを併設し、商業、ビジネス、文化の融合という新しい都市開発のモデルケースを示した。80年代後半以降の文化施設の新設ラッシュも重なり、多様な用途を融合させた「複合開発」という言葉が浸透した。一方で森ビルの森稔(社長・当時)、佳子夫妻には、音楽ホールの次は美術館を作りたいという思いがあり、東京の「文化都心」として六本木ヒルズを作る構想をかかげ、その目玉として森美術館の創設を決めた。
WWD:なぜ現代アートなのか?
片岡:「人々が同時代の文化を体験し、検証することができる現代アートの美術館を文化都心の中心にすえる」と創設者の森稔が語ったように、現代アートを通して新しいアイデアや価値観、同時代の人々の考えを発信する場所として森美術館を構想していた。またそれを建物の最上層部に象徴的に置くことで、先進的な文化都心のシンボルになった。
WWD:開館当初からのキュレーションのこだわりは?
片岡:開館当初からの重要なキーワードは「国際性」と「現代性」。過去や現在のグローバルな表現や潮流をいかに東京に持ち込み、そこにどう「今」の視点で光をあてるのか、を考えて展覧会を企画している。
WWD:現代アートの「新しさ」と興行的成功との両立の仕方は?
片岡:現代アートの展覧会で興行的成功にこだわり過ぎると、エンターテインメント性が強くなり、批評性や社会性が失われる危険がある。森美術館は、展望台の収益と合わせれば採算がとれるというビジネスモデルで、開館1年目は52階と53階の2フロアを森美術館として活用していたが、2年目からは52階を展望台に加えて、森アーツセンターギャラリーとして外部に貸し出すなど、時代に合わせてビジネスモデルを変化させてきている。
WWD:都市の価値を考える上で、アートが担う役割とは?
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