「WWDJAPAN」はこのほど、ユナイテッドアローズと、学生・25歳以下の社会人を対象とした企業研究セミナーを開催した。ユナイテッドアローズという社名に込めたのは、ひとつの目標に向かって直進する矢(ARROW)を束ねた(UNITED)もののようでありたいという、団結への思い。同社は「お客さま第一主義」を貫きながら、ファッションへの情熱を燃やして直進する社員たちが束のようにまとまり、大きな組織の中でそれぞれらしく活躍している。企業研究では、創業メンバーの一人、栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問がファッション業界とユナイテッドアローズの魅力を伝授。若手社員は、束ねた矢の一本でありながら自身もチームを束ね活躍する仕事のやりがいを教えてくれた。企業研究セミナーをダイジェストで振り返る。
栗野宏文上級顧問が語るUA上場の理由と
日本のファッション業界の多様な魅力
第一部は、ユナイテッドアローズ創業メンバーの1人、栗野宏文上級顧問を招き、創業時から変わらないユナイテッドアローズやファッション業界への愛を伺った。栗野上級顧問が同社を創業したのは、1989年。当時のメンバーはわずか9人だったが、日本屈指のセレクトショップとして成長したユナイテッドアローズでは現在、約4000人が働き、1300億円以上の年商を誇っている。
栗野上級顧問はビートルズや映画「007」などの1960年代のカルチャーシーンに影響を受けて以降、ファッション業界に人生をささげ、その魅力を「ファッションを真似すれば、憧れの人物に1mmでも近づけるんじゃないか?と考えた」と自己実現や自己表現、自己高揚にあると振り返る。創業から35年が経過したユナイテッドアローズについては、「セレクトショップという業態の中では、他に先駆けて上場した企業。昔の販売員は“たかが売り子”で、例えば交際相手の親御さんに結婚を許してもらえない時代もあった。だが上場して以降、社員は自宅を購入する際にローンが借りやすくなるなど、さまざまな恩恵を受けている。キープレイヤーが上場することで、業界全体の信頼性にもつながったのではないか?」と、創業当時から今に至るまで、業界や社会においても大きな役割を担っていることを魅力の1つに挙げた。
会社のみならず業界全体に貢献しようという姿勢は、今なおユナイテッドアローズの魅力だ。例えば同社は、1991年ビームスなど専門小売業と共に、SSA(スペシャリティ・ストアーズ・アソシエーション)を結成。販売スタッフを対象とした各種研修やイベントを共同開催している。栗野上級顧問は「いいことを共有すると、業界はもっと良くなる。全体が底上げされた先には、人間性や個性が発揮できる環境があるはず」と切磋琢磨の必要性から販売員という仕事の魅力までを説いた。現在も時間があれば店頭に立つという栗野上級顧問は、「『現場がお好きですね』と言われることもあるが、これが私の仕事。お客さまを見て、接客するのは、ファッション好きの僕にとって当たり前。店頭に立つと、いろんなことが見えてくる」と、販売の経験はファッション業界のいかなるキャリアにおいても重要だと訴える。
日本のファッション業界の魅力については、「日本は生地を縫製して洋服を作り、売るまでができる国。目に見えるところで洋服ができているのは、トレーサビリティー(透明性)の観点からも良いことだが、何よりさまざまな洋服が生まれ、日本のファッション業界を世界で一番多様で面白いものにしてくれている」と分析した。そして、そんな国のファッション産業を担うユナイテッドアローズ自体も、顧客のライフスタイルの変化に合わせて進化を続けていると締めくくった。
ディレクターとPR、販売スタッフが
UAでの3者3様の活躍を語る
第二部には、新たなカルチャーを創出する原動力となっている3人の若手社員、四谷奈々可「アティセッション」ブランドディレクターと栁谷百香「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」丸の内店 スタッフ、高橋怜奈「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」PRが登壇し、ユナイテッドアローズにおける多岐にわたる活躍を紹介した。「アティセッション」ブランドディレクターの四谷は、「ユナイテッドアローズで働いていた知人が楽しそうで、働きやすいのでは?と思った。就職活動は、ユナイテッドアローズだけ。入社後は、『ビューティー&ユース』の販売をしながら、EC限定商品の企画を2年担当。店頭での行動や実績が評価につながったのかな?と感じている」と、20代のブランドディレクターに抜擢されるまでの背景を説明。「販売は、大好きなファッションを共有できる場所。洋服以外のプライベートまで共有できる仕事はとても楽しく、当時の経験は数字以外からも今の仕事を振り返る貴重なヒントとして役立っている」と話した。今後については、「まずは『アティセッション』の知名度をますます高めたい。国内のみならずグローバルな視野を持って成長し、いろんなことに挑戦したい。複数ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めるなど、先陣を切っていきたい」と目標を語る。
「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」丸の内店 スタッフの栁谷は、「色々な会社を調べる中で、毎日働くなら好きなものに携わりたいと考えた。インターンシップを経て、社員の雰囲気が良くて、『こんな大人になりたい』と思える人が多かったのがユナイテッドアローズだった」という。販売の魅力は、「顧客ができて、特別な関係を築いていけること。洋服を選ぶ中で、自分の意見を聞いてくれるだけでもありがたいのに、『あなたから買いたい。いついますか?』と私を目掛けて来店してくれるのは、本当に嬉しいこと。自分もまた成長できる」と日々の業務にやりがいを見出している。他の2人とは異なり今なお入社当時と変わらない仕事を続けているが、「日々検証、実験して、結果を振り返りながら反省している。やっていることは変わらないが、そのレベルがどんどん上がってきている」。今はプレスになるのが夢だが、「札幌から東京に異動しても働いてこれたのは、同僚のバックアップがあってこそ。ユナイテッドアローズならではのコミュニケーション、人と人とのつながりのおかげで今がある。これからも大切にしたいし、私も後輩を後押ししたい」と夢を描く。
「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」PRの高橋は、「私はいろんなセレクトショップを受けたが、どこよりも人事が寄り添ってくれたのがユナイテッドアローズだった。店舗のスタッフにも仕事について話を聞いたが、先輩たちは皆楽しそうだった。やりがいを持って働いている人が多く、風通しも良い。長く続けられると思った」と説明。店長らの面談の機会でPRを目指したいと将来の目標を語り、以降、スタイリングなどをSNSなどで発信する中で「さらに広くPR業務に関わるプレスとして働きたい」という欲が出たと語る。実は1度は社内選考で落選したが、以降「『本当にやりたかったのか?』『適性はあるのか?』を考えるようになって、それでも『やりたい』と思えたから、積極的になれた」と振り返る。今は、「PRの仕事でも、接客からヒントを得ている。店舗にはファン、ユナイテッドアローズに関心を持ってくれる人がいる。そのようなお客様からいただけるヒントこそリアル。ファンであるお客様の意見を販売で得たからこそ、プレスとしても発信できている。絶対に大事な経験だった」という。
同業他社との違いは?専攻は役立つ?
学生から質問が相次いだ座談会
第三部は、参加者と登壇者が3つのグループに分かれて、質疑応答やさらなる交流を兼ねた座談会の時間だ。学生からは、同業他社との違いや、学校で学んでいる専攻を生かすことができるのか?などを尋ねる質問があった。これに対して登壇者やユナイテッドアローズの人事担当は、「本当にヒトに恵まれた会社で、人対人のコミュニケーションでストレスを感じることは少ない」や「さまざまなキャリアパスを用意している。学生時代の専攻や課外活動を活かすチャンスもあるし、得意分野を発揮できるような存在になって欲しい。応援する」などの回答があった。
学生からは「気になる存在を学べた」
「接客や販売の重要性を知った」のコメント
参加者からは、「就職活動をしていて、ユナイテッドアローズは気になる存在だった。私も(アルバイトで)接客業に携わっているから、店頭での心構えは参考になった。明日から、お客さまに積極的に声を掛け、将来ファッション業界で働くときの参考にしたい」や「ファッションの仕事に携わりたいと思っていたが、接客や販売は考えていなかった。でもデザインやPRにおいても、接客や販売の経験が生きると知って驚いた」などの声があった。
一方ユナイテッドアローズの人事担当は、「学生にはもしかしたら身近な存在ではなかったかもしれないので、素直に私たちの魅力を紹介したいと思った。魅力を伝えることができたら、嬉しく思う。私さえ新たな発見があって楽しかった」と話した。
「WWDJAPAN」はファッションやビューティ業界の未来を担う若い世代の活躍を願い、業界の魅力を深く掘り下げ、多角的に企業理解を深めることができるオフラインイベントを開催している。イベントでは、国内外の経営層から現場まで、さまざまな職種の業界人・企業人を取材している「WWDJAPAN」が、ファッション業界と企業、人々の魅力を伝え、まだ見ぬ「自分に合う会社」を見つけるきっかけを提供する。
「WWDJAPAN」企業研究 ユナイテッドアローズ編
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